今やすっかり耳慣れた言葉「サステイナブル(=Sustainable)」。「持続可能な」という意味のこの言葉は、地球を取り巻く環境が大きく変化している今、これまで以上に大きな役割をもつ言葉といっていいでしょう。

とりわけ「食」の世界では、限りある資源をどう使うのか、どう残していくのかは切実な問題。それゆえ、地産地消やフードロス問題など、トップシェフたちは早くから「持続可能な」仕組みづくりを意識してきたのです。

「ラグジュアリー」と「サステイナブル」の共存。一見すると両立しないように思えるこのふたつの言葉と共に進化する、ラグジュアリーレストランの「今」に迫りました。

今回ご紹介するのは、水産資源の課題について食の観点から取り組む「シンシアブルー」です。

「100年経っても豊かな海を」おいしく楽しく食べながら、海の未来を守りたい——Sincère BLUE(シンシアブルー)

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前菜ビュッフェは10種以上。メインは「シンシア」のスペシャリテ「たい焼き」(魚のパイ包み。この日はASC真鯛)。

ミシュラン一つ星のフレンチレストラン「シンシア」のオーナーシェフ、石井真介氏が手掛ける姉妹店として、昨年9月にオープン。

国際認証「MSC・ASC」を取得した漁業や、持続可能性を向上させる漁業改善プロジェクト「FIP・AIP」に取り組む生産者から調達したシーフードをメイン食材とした、ビュッフェ形式のレストラン。

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ASCブラックタイガーのカダイフ。ぷりっぷりのエビをサクサクの衣で。
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FIPビンチョウマグロと根セロリのソース。
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北海道のMSCホタテと、岩海苔のクロケット。海苔の香りがたまりません。

水産資源の課題に取り組む料理人の団体「シェフス フォー ザ ブルー」の理事でもある石井さんは「おいしく楽しく食べながら、日本の食の現状を知るきっかけになれば」と、ビュッフェ形式を採用したとか。

国際認証の魚を利用するほか、傷みやすいなどの理由で既存の流通に乗らない「未利用魚」も使用。

ビュッフェゆえ、品数が多く調理法が多岐にわたるため手間はかかりますが、端材までムダなく使いきることができるうえ、若い世代にフランス料理の技法を伝え続けることができる、と石井シェフ。

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未利用魚のカルパッチョ。この日はブダイ。ほかには、スープやローストビーフ、バーニャカウダなど。
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炙りと春菊のソース。この日は脂が乗ったカマスサワラ。
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ASC薫製銀鮭とカリフラワームース。

また、大皿に並ぶ料理を自らとる従来のスタイルではなく、各席に盛り付けられた前菜の小皿が運ばれ、メインディッシュまで食べ終えたらおかわりしたい前菜を追加できる仕組み。

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小さなお皿に美しく盛られて運ばれてくるテーブルブッフェ方式。テーブルの人数分盛られてくるが手元の”マイトング”で自分の皿へ。感染症対策も万全。また、カトラリーは「シンシア」と同じクチポール製。

メニューには国際認証マークも記載されていて、「サステナブルシーフード」について熱心に質問するお客様も多いそう。食の未来について考える、食育の場にもなっています。

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石井シェフといえばうさぎの最中。愛らしさに歓声があがるひと品。中にはフォアグラとイチジクが。
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明るく開放的な店内。魚の形の植物オブジェが印象的。

【Sustainable Point】水産資源の課題に取り組む食材を使用

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国際認証つきの水産物などをメイン食材に。

海のエコラベルともいうべき、持続可能な漁業や養殖業に与えられる国際認証「MSC(対天然水産物)」「ASC(対養殖水産物)」つきの水産物や「FIP(漁業改善プロジェクト)・AIP(養殖漁業改善プロジェクト)」に取り組む漁業者から調達した食材。

問い合わせ先

  • Sincère BLUE(シンシアブルー) 
  • 営業時間/11:30〜13:30(L.O.)、17:00〜23:00
  • 定休日/月曜
    メニュー/フレンチビュッフェ¥5,900、アラカルトもあり
  • ※予約がベター
  • TEL/03-6434-0703
  • 住所/東京都渋谷区神宮前1-23-26 JINGUMAE COMICHI 2F

PHOTO :
長谷川 潤
EDIT&WRITING :
田中美保、佐藤友貴絵(Precious)