第一次世界大戦後の1920年代〜’30年代、建築や美術においてアール・ヌーヴォーやアール・デコとして残っていた前世紀からの装飾性は、機能性や人間工学に根ざしたモダニズムへと大きく転換した。

ル・コルビュジエとフレンチ・ミッドセンチュリーの名作

ドイツ・バウハウスを拠点にヴァルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエらが活躍する一方、フランスのル・コルビュジエは、「建築は住むための機械である」といった言葉とともに、モダニズムを明確に世界に印象づけた。そしてそのモダニズムは、ル・コルビュジエや、彼と同時代にフランスにて活躍した建築家やデザイナーたちが手がけた家具として、現代の私たちが味わうことができる。

つくられて一世紀近くを経てもなお、私たちに新鮮な印象を与えるこれらフレンチ・ミッドセンチュリーのデザインは、モダニズムと人間生活の幸福なマリアージュを具現化しているのかもしれない。

ル・コルビュジエ ピエール・ジャンヌレ シャルロット・ペリアン『LC4』

90年以上前に誕生した寝椅子のマスターピース

 ル・コルビュジエ ピエール・ジャンヌレ シャルロット・ペリアン『LC4』
 ル・コルビュジエ ピエール・ジャンヌレ シャルロット・ペリアン『LC4』

1929年に発表された、「休養のための機械」とル・コルビュジエが呼んだ寝椅子。体の線に合わせて綿密にデザインされた背のカーブは、弓形のパイプをずらすことによって座面の角度を自由に変えられる。通称「シェーズ・ロング」。

左/ル・コルビュジエ ピエール・ジャンヌレ シャルロット・ペリアン『LC2』・右/ル・コルビュジエ『LC 14 CABANON/ MAISON DU BRESIL』

左/ル・コルビュジエ ピエール・ジャンヌレ シャルロット・ペリアン『LC2』・右/ル・コルビュジエ『LC 14 CABANON/ MAISON DU BRESIL』
左/ル・コルビュジエ ピエール・ジャンヌレ シャルロット・ペリアン『LC2』・右/ル・コルビュジエ『LC 14 CABANON/ MAISON DU BRESIL』

右/スティールのパイプ枠に、背もたれ、座面、アーム部のクッションをはめ込むという単純な構造。最小の構成で最大の快適性を実現することを目的としている。通称「グランコンフォール」。クッションにやわらかな革を使い、より快適に。

左/ル・コルビュジエが人体の寸法と黄金比から導き出した基準「モデュロール」を使ってデザインされた、箱型の木製スツール『LC14』。

シャルロット・ペリアン『INDOCHINE』

自身が手がけた名作椅子を個人的に木製で製作

シャルロット・ペリアン『INDOCHINE』
シャルロット・ペリアン『INDOCHINE』

ル・コルビュジエのアトリエにて多くの家具を手がけた女性デザイナー。これはその際にデザインしたメタルフレームの『LC7』をベースとした木製のスウィベルチェア。ペリアンがベトナムに滞在していた1943年に原型が製作された。

ジャン・プルーヴェ『STANDARD』

職人性も備えていたモダニストの代表作

ジャン・プルーヴェ『STANDARD』
ジャン・プルーヴェ『STANDARD』

アール・ヌーヴォーの拠点だったフランス・ナンシーで育った建築家、デザイナー。ル・コルビュジエらと現代芸術家連盟を創立し、アルミ素材やプレハブ工法などを導入して建築の工業化に寄与した。負荷を考慮して前後異なる形状の脚部を持つ椅子は1934年の作品。

アイリーン・グレイ『E-1027』

品番にこめられた恋人との平穏な生活

アイリーン・グレイ『E-1027』
アイリーン・グレイ『E-1027』

数年前に伝記映画でも話題となったアイルランド出身のデザイナー。恋人の建築家ジャン・バドヴィッチと過ごすために設計した別荘「E-1027」とともに、ベッドで食事ができるようつくられたサイドテーブル。

ピエール・ジャンヌレ『CAPITOL COMPLEX』

ル・コルビュジエを支え建築の実務を担当

ピエール・ジャンヌレ『CAPITOL COMPLEX』

近年注目されている、ル・コルビュジエの従兄弟にして共働者の建築家。インド・チャンディガールの都市計画を現地で監督した。この椅子の原型はチャンディガールで使われたオフィスチェア。カッシーナではチーク材とオーク材を用いて、ジャンヌレへのオマージュとして製作。

問い合わせ先

カッシーナ・イクスシー青山本店

TEL:03-5474-9001

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