愛のシンボル、「プリティウーマン」コレクション今昔物語

映画『プリティ・ウーマン』で主人公を演じたジュリア・ロバーツが着用し、一躍話題を集めたフレッドのハートモチーフネックレス。ルビーとダイヤモンドでできたあの名品ジュエリーが今年、さらにモダンなコレクションへとアップデートを遂げました。

今回リローンチした「プリティウーマン」コレクションは、ルベライトとダイヤモンドが主役のラグジュアリーなハイジュエリーと、日常使いにぴったりのオープンハートを用いたジュエリーコレクションの2ラインの展開。

新デザインのコンセプトは、“your way your love(あなたの愛のかたち)”。ハイジュエリーラインではパーツを取り外して何通りものジュエリーに形を変えるトランスフォーマブルなネックレスや、2WAY仕様のイヤリングなどが登場。デザインに託したメッセージの通り、自分らしい遊び心で自由にミックス&マッチを楽しめる、コンテンポラリーなデザインがラインナップされています。

1990年の映画公開ののち、「プリティウーマン」と名づけられたハートモチーフネックレスは、フレッドの美学を語り継ぐアイコンとして、また揺るぎない愛の象徴として、年月を超えて繰り返し再解釈されてきたといいます。その魅力のすべてと気になる映画撮影時の秘話を、ヴァレリー・サミュエルさんに伺いました。

フレッド副社長兼アーティスティックディレクターのヴァレリー・サミュエルさん
 
ヴァレリー・サミュエルさん
フレッド副社長兼アーティスティック ディレクター
創業者サミュエル・フレッドの孫娘としてフランス・パリに生まれる。パリ第二大学卒業後、米国宝石学会認定の宝石鑑定士の資格を取得。1993年にフレッドに入社し、クリエーション・アンド・マニュファクチャリング・ディレクターとしてキャリアをスタート。その後、1997年にラリックへ入社し、ジュエリー&ウォッチ部門を創設。2004年には同社インターナショナル・マーケティング・ディレクターに。2010年にスワロフスキーへ転職し、コレクションジュエリー・ウォッチ&アクセサリー担当副社長を務める。多彩なキャリアを経て、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ傘下に入ったフレッドに約20年ぶりに復帰。2017年12月より現職。

フレッド アーティスティック ディレクター、ヴァレリー・サミュエルさんに聞く10の質問

──Q1:「プリティウーマン」コレクションをリローンチした経緯とは?

映画『プリティ・ウーマン』は、常にフレッドの歴史における重要な1ページ。紛れもなく、私たちがとても大切にしている思い出のひとつです。2017年、副社長兼アーティスティック ディレクターとして私がメゾンに復帰したとき、新コレクションのテーマに浮かんだのは「プリティウーマン」でした。メゾンの輝かしい思い出に敬意を払うのは、私にとって当然のことなのです。

ハイジュエリーとジュエリーコレクションのローンチは、非常に時間のかかるプロセスです。まず、フレッドの品質基準を満たす原石を探さなければなりません。本作の場合、さまざまな組み合わせを楽しめるジュエリーを目指し、ルベライトを選定しましたが、同じ濃さのピンクレッド色の原石を見つけるのが至難の技。ルベライトを生産している鉱山が世界に3か所しか存在しないからです。最高級で高純度の原石を調達し、手元に集めるには2年以上かかりました

──Q2:映画『プリティ・ウーマン』に伝説のネックレスを提供された当時のエピソードを詳しく聞かせてください。

あのネックレスは映画のリクエストを受けてデザインしたものではなく、貸し出したハイジュエリーピースでした。正確にお話しますと、1960年代よりフレッドは世界的展開を始めました。パリ、モナコに続き、1977年にアメリカ初のブティックをロサンゼルスのロデオドライブにオープンしたのです。ビバリーヒルズの中心地ですから、フレッドのチームとブティックディレクターが、ハリウッドや映画界との親密な関係を築くのは、ごく自然な成り行きでした。

1990年のある日、映画『プリティ・ウーマン』の製作スタッフがブティックを訪れたことからすべてが始まりました。彼らが探していたのは主演女優が身につけるジュエリー。このとき私たちは、ルビーとダイヤモンドのハートネックレスが、ジュリア・ロバーツのあの輝く笑顔とリチャード・ギアの優雅さとともに、映画の印象深いワンシーンを飾るとは夢にも思っていませんでした。

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新作「プリティウーマン」コレクションより、 “the heart within a heart(ハートの中のハート)”をテーマにしたハイジュエリーの数々。イヤリングは2WAYで装える逸品。「オーディシャス」上から/チョーカーネックレス¥1,408,000・リング¥2,585,000・イヤリング¥4,906,000【すべてホワイトゴールド・ダイヤモンド・ルベライト】

隠された秘話!あの名シーンはリチャード・ギアのアドリブ

──Q3:実際にハートネックレスを着用したジュリア・ロバーツは、どんな様子だったのでしょうか?

当時、私はパリのフレッドで研修中だったので、残念ながらロデオドライブには関わっていませんでしたが、父のアンリ・サミュエルと現地チームがネックレスの貸し出しに携わりました。

映画製作スタッフとともにプライベート上映で映画の完成版を鑑賞したとき、フレッドチームは全員驚愕しました。ハートネックレスが映画の中でどれほど特別な役割を担っているのか、どれだけ目立つ存在となっているのかを、鑑賞時に初めて気づいたからです。

ネックレスを貸し出した時点では、これがまるで映画の「3番目の主役」と言える存在になるとは、誰ひとり思ってもいませんでした。ジュリアとネックレスが互いの美しさを引き立たせ合う姿は、私たちに感動を呼びました。

リチャード・ギア演じるエドワードが、ネックレスのケースでジュリア・ロバーツ演じるヴィヴィアンの指を挟んでしまい、ヴィヴィアンが声を出して笑う、あの名シーンは実は脚本にはなかったそうです。リチャード・ギアがまったくのアドリブでジュリアを笑わせたのだとか! リチャードの思いつきと、ジュリアの驚いたリアクションと笑顔があまりにも自然だったので、監督はあのシーンを残すと決めたそうです。

──Q4: 新作「プリティウーマン」コレクションのコンセプト“your way your love” は、どんなメッセージを意味しますか?

熱狂的ファンを持つ映画『プリティ・ウーマン』のラブストーリーに着想したこのコレクションは、私が考えるモダンで自由で喜びに満ちた、今の時代にふさわしい「愛のかたち」を表現しています。親子愛、兄弟愛、さらには深い絆で結ばれた友情まで、フレッドは愛のあらゆる側面を讃えています。

そして究極的には、人としてのあり方の自由、愛し方の自由をメゾンは讃美しています。喜びに満ちた愛、無条件の愛、大胆な愛、秘められた愛、輝かしい愛、永遠の愛をもって愛する自由。コレクションを通して、自分らしい愛のかたちを問いかけているのです。

現代女性のライフスタイルに寄り添う、変容するハートジュエリー

──Q5.:新作コレクションにおいて、形状や組み合わせを自由に変えられるトランスフォーマブルなジュエリーを着想したきっかけとは?

互換性はメゾンのDNAの一部です。「フォース10」や「パン ドゥ スークル」、現在の「プリティウーマン」コレクションに至るまで、その伝統は継承されています。私たちはこれまで以上に今らしさをコレクションに取り入れ、フレッドのジュエリーをさまざまな形で楽しんでいただく努力を重ねてきました。互換性とトランスフォーマビリティがこうした思いを支えています。

また、日常のファッションや気分に合わせやすいだけでなく、手持ちの他のジュエリーとの相性もよいデイリーユースのシリーズは、新たな領域を切り拓くチャンスだと考えています。

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日常使いにふさわしい軽やかなオープンワークのジュエリーコレクション。「プリティウーマン」ネックレス左から/スモールモデル¥372,900【ホワイトゴールド×ダイヤモンド】・ミニ¥205,700【ピンクゴールド×ダイヤモンド】・ミディアムモデル¥341,000【ピンクゴールド×ダイヤモンド】

──Q6:新作コレクションにおいて、「フレッドらしさ」が一番表れているポイントはどんなところでしょうか?

象徴的な「オーディシャス」ネックレスに、メゾンのアイデンティティが凝縮されています。トランスフォーマブルなコレクションの精神を体現しながらも、それ自体が完成されたひとつのハイジュエリーピースとして成立。高度な技術を駆使したアイテムであると同時に、好みのスタイルに合わせて自由に組み合わせることができる遊び心に満ちたジュエリーなのです。

ダイヤモンドでできた8つのオープンハートの中に、8粒のルベライトをアシンメトリーにセット。そのうちの7粒を飾ったパーツはそれぞれ取り外し可能で、イヤリング、ブローチ、ピン、チェーンネックレスといったさまざまな装いの選択肢を生み出しています。こうして形を変えることで、日常を華やがせる洗練されたチョーカーにも変容します。

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世界に2点だけ存在するマスターピース、何通りものジュエリーに変容する「オーディシャス」ネックレス。フリンジのように連なる7つのパーツをすべて外すと、中央のモチーフ1点を飾ったシンプルなチョーカーネックレスに

ジュリア・ロバーツの姪、女優エマ・ロバーツが魅せる「プリティウーマン」の世界

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ジュリア・ロバーツの姪である女優エマ・ロバーツを起用した「プリティウーマン」コレクションの広告ビジュアル

──Q7:コレクションアンバサダーに、女優エマ・ロバーツを起用した理由とは?

当初から、「プリティウーマン」コレクションのアンバサダーにはエマ・ロバーツしかいないと決めていました。ジュリアの姪のエマ・ロバーツだけが、「プリティウーマン」コレクションを表現できるのだと。女優として彼女は、無償の愛、自発的な愛、大胆な愛など、フレッドが描く愛のかたちを完璧にとらえています。

──Q8:祖父であるフレッド創業者自らより、ジュエリーの手ほどきを受けたと聞きます。フレッド・サミュエル氏はどんな人物でしたか?

祖父は宝石とクリエイションへの情熱に満ちあふれた人でした。私にとってかけがえのないお手本であり、インスピレーションの源そのもの。とても幼い頃から、祖父にフレッドのイベントへ連れて行ってもらったこともよく覚えています。

祖父や父の傍らで育ち、共に働く機会を得られ、18歳にして自分のキャリアをスタートできたのは、本当に幸運なこと。祖父はジュエリー会社を立ち上げることで、自ら選んだ道を歩み、私はそこで最初の一歩を踏み出すチャンスを手に入れました。

──Q9:祖父フレッド・サミュエル氏から学び、あなたが最も大切にしていることとは?

祖父からジュエリーとクリエイション、クラフトマンシップに対する情熱を受け継いだのは言うまでもありません。また、宝石の世界だけでなく、人間としての価値と生命の意義を教えてくれた存在でもありました。純粋さ、寛大さ、尊敬する心、生きる喜び、エネルギー……。フレッドのエスプリとも共通しますが、人生における価値観の礎となるものを学びました。

祖父のビジョンや価値観は実に現代的でした。それは今なお、メゾンにとって大きな意味を持っています。

──Q10:フレッドの未来を担うアーティスティック ディレクターとして、新たに取り組んでいることはありますか?

目下の関心事は、今回の新作コレクションのローンチ。2021年は「プリティウーマン」コレクションの商品と、ジュエリーに込められた愛にあふれた1年になりそうです。

さらに、「フォース10」と「シャンス アンフィニ」コレクションからも近々ニュースがありますので、どうぞお楽しみに。また、フレッドのアーカイブと遺産をインスピレーションの源として再構築し、ジュエリーを愛する多くの人々との共有を目指すプロジェクトも進行中です。


以上、フレッド副社長兼アーティスティック ディレクターのヴァレリー・サミュエルさんへのインタビューをお届けしました。

フレッドは、2021年4月23日(金)〜5月5日(水)の期間、東京・表参道の「BA-TSU ART GALLERY」にてポップアップストアも開催予定。本記事にてその魅力をヴァレリーさんにたっぷり語っていただいた、新作「プリティウーマン」コレクションのハイジュエリーと、ジュエリーコレクションが販売される予定です。

ポップアップストアを訪れ、あなたも新生「プリティウーマン」の世界に触れてみてはいかがでしょうか?

※掲載した商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

フレッド

TEL:03-3263-9413

この記事の執筆者
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EDIT&WRITING :
愛甲悦子