花を飾ってみようと思ったことがあるが、花瓶が倒れはしないかと不安で……。という声を聞いたことがある。ならば、背の低い花器を選ぶ。アレンジの決め技は、シンプルにすることで花の格好よさを引き出すこと。写真立てを机の上に置くような感覚で、花を飾ってみよう。

低重心の花器に茎まで美しいガーベラを一輪

鮮やかなオレンジ色の「ガーベラ」に、観葉植物のドラセナの葉を添えて。
鮮やかなオレンジ色の「ガーベラ」に、観葉植物のドラセナの葉を添えて。4月上旬のガーベラ1本の価格の目安/¥300〜500(GINKGO調べ)

季節を問わず手に入りやすい定番の切り花、ガーベラを選んで、きりっとした印象の低重心アレンジを提案してくれたのは、恵比寿「GINKGO」のオーナーフローリスト、山岡まりさん。カラフルな花色と、パッと開いた花びらが特徴のガーベラは、すらりと伸びた茎も美しい。だから、あまり短く切りすぎず、茎がちゃんと見える一輪挿しにするのがお勧め。アレンジを楽しみたかったら、ドラセナなど自宅にある観葉植物の一葉を切って添えると、アクセントになる。

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花だけでなく茎の姿まで美しいガーベラだが、生けるときに注意したいことがある。茎の水に浸かった部分が痛みやすいので、生けるときは水の量を少なめに。とくに夏は水替えを小まめに。水替えのたびに茎を少しカットするといい。

今回、ガーベラを一輪挿にした花器についても説明しておこう。凛とした佇まいのこの花器は、天保九年(1838年)に創業した京都・清課堂の錫澪(すずみお)という名の錫製品。シンプルで安定感のある個性的なフォルムで、多くの人たちに愛されている定番の品でもある。

錫を始めとする金属器には雑菌が繁殖しにくいという特性があるため、花器の中に入れた水も痛みにくく、切り花が長持ちするといわれている。やがて、本気で花を飾ることを楽しむようになったら、ガラスや陶器に加え、錫の花器も手にいれてみたい。

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※台所用漂白剤などに含まれる次亜塩素酸は、金属器の花器の腐食を促すおそれがあるので使用を避けたい。

いつも使っているグラスにヒヤシンスをさり気なく

香水のような香りをもたらす「ヒヤシンス」を一輪。
香水のような香りをもたらす「ヒヤシンス」を一輪。

実は、食器棚の中には、花器として使えるものがたくさんある。例えば、低重心のアレンジができそうな背の低いグラスを選んでみると、これが、なかなかいい。型にはまらない、自由で格好いいアレンジができるものなのだ。

高さ7cmほどの小ぶりなグラスに生ける花として、山岡まりさんが選んだのはヒヤシンス。庭植えや水栽培で楽しむイメージが強い、球根花のヒヤシンスだが、最近は切り花としても出回っている。

切り花として、この状態で店頭に並ぶヒヤシンスの出回り時期は11月〜5月。4月上旬のヒヤシンス1本の価格の目安/¥450〜550(GINKGO調べ)

ヒヤシンスの丈をグラスの高さに合わせて切ったら、花がたっぷりと付いた部分だけでなく、切り離された葉も一緒にグラスに挿すことがポイント。多肉質の葉には、名脇役的な存在感があるからだ。

ヒヤシンスは香水のような香りがやや強いので、室内で飾る時には1~2本にするのがいいかもしれない。ガーベラ同様、水に使った茎は痛みやすいため、少なめの水を毎日取り替えたい。

ヒヤシンスの名前の由来は、ギリシア神話の美少年ヒヤキントスにある。彼が亡くなる時に流した血から咲いた花だという。このように、花には、ひとつひとつに思いのほか興味深い物語が秘められていたりする。調べてみるのも楽しいかもしれない。

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この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
PHOTO :
島本一男(BAARL)
取材協力 :
GINGO
参考書籍 :
「花屋さんに並ぶ植物がよくわかる 「花」の便利帖(KADOKAWA)」
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