英国は先進技術開発に長けている。とりわけ自動車の世界では、フォーミュラワンの設計者を数多く輩出。50年代からの“伝統”はいまも続く。ことはスポーツカーでもおなじ。2021年4月13日に日本で発表された「マクラーレン・アルトゥーラ」も、先進技術をふんだんに使った、まさにザ・ブリティッシュ・スポーツだ。

モーターのトルクで駆け出しエンジンが加速を引き継ぐ

Artura はプラグインハイブリッドで外部給電も可能。
Artura はプラグインハイブリッドで外部給電も可能。
“シュリンクラップド(包装)”のようなピュアで機能的なルックスが売りもの。
“シュリンクラップド(包装)”のようなピュアで機能的なルックスが売りもの。

究極のスポーツカーづくりで知られる英マクラーレンが今回発表した「アルトゥーラ」は、同社にとって初の「量産型ハイパフォーマンス・ハイブリッド」だという。3リッターV6エンジンと電気モーターの組み合わせで、トータル出力500kW、最大トルク720Nmを発生する。

あたらしいのは、それだけではない。そもそもシャシーが、「マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA) 」なる自社工場で生産される軽量かつ高合成の炭素素材を使ったもの。ハイブリッドパワートレイン用の、新世代に向けて開発されているのが特徴だ。

もうひとつは、新開発のエンジン。通常V型6気筒というと、3気筒ずつで作る、いわゆるバンク角は60度が一般的であるのに対して、今回は120度と異例の大きなバンク角。メリットとして、マクラーレンではバンク内にターボユニットを置くことで髙効率化できることをあげている。

もうひとつ、このエンジンの特徴は、操縦性の向上に寄与していること。120度バンク角により低重心化。かつ、アルミニウム製で、かつドライサンプ方式で、ハンドリングに重要な重心高を下げることを可能にしているのだ。従来のV8ユニットより50キロ軽量という。

レブリミットは8500rpmとかなり高い。そこにいたるまでは、たとえば発進時はモーターが225Nmという大きなトルクで後輪を駆動し、そののち効果的に過給されたエンジンが加速を引き継ぐ。それによって、静止から時速100キロまでの加速はわずか3秒フラット。軽量車体でかつハイブリッドというメリットをフルに活かしている。

ドライバーとの一体感を高めるための電動化

キャビン背後には、ツインターボ 2993ccV6ガソリンエンジンと、E モーター、それに高エネルギー密度バッテリーパックによるドライブトレイン。
キャビン背後には、ツインターボ 2993ccV6ガソリンエンジンと、E モーター、それに高エネルギー密度バッテリーパックによるドライブトレイン。
ディヒドラルドアをそなえて乗降性にすぐれるキャビンはおなじみのデザインコンセプトで機能的かつ官能的。
ディヒドラルドアをそなえて乗降性にすぐれるキャビンはおなじみのデザインコンセプトで機能的かつ官能的。

「マクラーレンの特徴として名高いあらゆるパフォーマンス、ドライバーとの一体感、優れたダイナミクスに、EV モード走行が可能なドライビング性能が上乗せされています」。マクラーレン・オートモーティブのマイク・フルーウィットCEOの言葉だ。

モーターのみでの走行は距離30キロまで。速度は時速135キロまでを可能とする。住宅地に住んでいるひとは、案外、恩恵を感じるかもしれない。

もちろん、電動化だけがアルトゥーラの目標ではない、という。「ブレーキング時の安定性、リアエンドの制御性、グリップの増強および空力ダウンフォースの最適化、そしてドライバーとの一体感の強化」といったものが開発目標だったとマクラーレンではする。

乗っていないのでこの段階では断定できないものの、スポーツカー好きなら楽しみになるではないか。価格は2965万円と発表されている。

720Sや765LTと共通のデザインテーマを持つフロントマスク。
720Sや765LTと共通のデザインテーマを持つフロントマスク。
東京ポートシティ竹芝での発表会におけるマクラーレン・オートモーティブアジア日本支社の正本嘉宏代表。
東京ポートシティ竹芝での発表会におけるマクラーレン・オートモーティブアジア日本支社の正本嘉宏代表。

問い合わせ先

マクラーレン・オートモーティブ

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。