ピュアEVに力を入れるアウディ本社が、新世代のコンパクトSUV「Q4 e-tron」を発表。おどろくべきは、力の入れ方だ。なにしろボディタイプは2つ。パワープラントは3つ。あたらしい時代の足音が大きく聞こえるようになってきた感がある。
「40」モデルの後続距離は520キロメートル
2021年4月14日に発表されたアウディQ4 e-tron(イートロン)は、全長4.95メートルのSUV。1台は「Q4 e-tron」で、もう1台は「Q4 e-tronスポーツバック」というクーペライクなスタイルのSUVだ。
フォルクスワーゲングループで開発したMEBというピュアEV専用のプラットフォームを使用。「Q4 35 e-tron」は52kWhのバッテリー搭載で125kWのパワーと310Nmの最大トルクを発生する。
「Q4 40 e-tron」は72kWhのバッテリーで、150kWの出力を出す。最大トルクは310Nmで「35」と数値的には同一。トップモデルは「Q4 50 e-tron quattro」で、77kWと460Nm。「35」と「40」は後輪駆動であるのに対して、「55」のみ全輪駆動だ。
航続距離は「40」がもっとも長く、アウディによると520キロメートルに達するという。「35」は349キロ、「50」は497キロ(スポーツバック)とされる。
バッテリーは床下に搭載して、モーターもDCからACに変更するインバーターもコンパクトサイズにしたことで、「室内空間はフルサイズのSUVなみを実現」(アウディ)という。オンラインの発表会では「Q7と同等」とされていた。
荷室容量もスポーツバックで535リッターとかなり大きい。実用性を大きく追求しているのは、日常的にがんがん使うことを前提にした設計で、つまり、ピュアEVがとくべつな存在でなくなったことを意味しているように思える。
生産工場では、再生エネルギーによる電力のみを使う。加えてバッテリーも太陽光など”グリーンエネルギー”しか使わない工場で製造される。完成車の陸送もできるだけCO2排出を抑えたやりかたで。
目的地へ的確に案内するARナビを搭載
アウディでは、Q4 e-tronでは車両を作るのがゴールでない、とする。各部品製造といった源流から製造、そして納品にいたるまで、ライフサイクルを通して環境負荷を低減することを目指しているという。そこも注目点だ。
ドライバ−を楽しませてくれるためのデジタル技術の使い方もあたらしい。ひとつは、LEDを使ったマトリックスヘッドランプ。デジタルデイタイムラニングライトの点灯パターンはドライバ−が任意で、4つのなかから選べる。点灯のさせかたで、乗るひとがカスタマイズできるのだ。
もうひとつ、Q4 e-tronでアウディが強調している技術が、AR(アーギュメンテッドリアリティ=仮想現実)技術を使ったナビゲーションシステムである。ヘッドアップディスプレイと組み合わせてあり、目的地への誘導時は、ブルーの矢印がヘッドアップディスプレイモニターに登場。アニメーションのように動いて、進むべき方向を指示してくれるのだ。
ドイツでは夏から生産が始まるという。日本では「価格も発売も未定」(アウディジャパン)だそうで、もうすこし待たなくてはならない。現在日本には「e-tronスポーツバック55 quattro」(1327万円)を皮切りに、「e-tronスポーツバック50 quattro」(1143万円)、「e-tron 50 quattro」(933万円)、それに「RS e-tron GT」(1799万円)と「e-tron GT quattro」(1399万円)とラインナップが充実してきている。
今回のQ4 e-tronは、上記のe-tronシリーズとはことなり、汎用性の高いプラットフォームを使って、より日常使用を考えたモデル。それだけに、価格もだいぶ抑えられることが予想される。
- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト