1986年創業の「レスレストン」を継ぐのが、2代目の久木元陸央さんだ。中学生の頃、ファッションに興味をもち、母親にミシンの使い方を習い始めた。1989年生まれの久木元さんにとってシャツ作りは、生まれた頃から身近にある天職のようなものだ。型紙作りは初代の父親から、縫製は手練の母親から習い、服飾の専門学校で服作りの理論もマスターした。卒業後「レスレストン」に入社したが、さらにファッションデザインの視野を広げるために他社へ転職。再び「レスレストン」に戻ってからは、オーダーメイドのシャツ作りに邁進した。

インスタグラムを通じて、作ったシャツをアップすると変化が表れた。ショップで注文を受けるシャツが好評を得るのに加え、海外からトランクショーの誘いがかかり始めた。日本人とは異なる体格は戸惑いもあったが、さまざまな体のバランスに合わせられる父親譲りの型紙設計の精度を上げた。

清涼感のある素材使いが絶妙な正統派

コットン×リネン特有のハリがあり、サラサラとした爽やかな質感が魅力。イタリアブランド「シクテス」の上質な生地を使ったセミワイドカラーである。完成度の高い「レスレストン」のシャツは、主張を抑えた品格ある佇まいだ。(レスレストン)
コットン×リネン特有のハリがあり、サラサラとした爽やかな質感が魅力。イタリアブランド「シクテス」の上質な生地を使ったセミワイドカラーである。完成度の高い「レスレストン」のシャツは、主張を抑えた品格ある佇まいだ。(レスレストン)

久木元さんがシャツ作りで大切にしていることが3つある。「脇役に徹し、多様なスタイルに対応する」「手縫いのアイキャッチにこだわらない」「着やすさや機能美の追求」だ。ひとつひとつ説明すると、オーダーメイドのシャツであっても、ハウススタイルを押し付けない。手縫いシャツに見られるやりすぎな職人技の誇張ではなく、同じ手仕事でも上手にミシンを操り手縫いに匹敵する技に関心がある。そして、肌に最も近いシャツは着やすく美しくなければならない、という考えだ。

羽襟の裏側は、 2枚の生地でバイアスに仕上げる。結果、襟の返りにハリが出る。
羽襟の裏側は、 2枚の生地でバイアスに仕上げる。結果、襟の返りにハリが出る。
キャプション右
着たときに見える前立て部分にはステ ッチを入れず、パンツの中に隠れる下方のみにステッチを加える。繊細な美意識だ。

日本の伝統技を駆使し、海外でも十分に通用する多様なスタイルの表現。「レスレストン」のシャツには、巧みで丁寧な作りに時代の新しさがにじみ出ている。

Shop Data

※営業時間などの詳細は、店舗HPなどでご確認ください。

<出典>
MEN'S Precious春号「この服とスタイルで生きていく!」
【内容紹介】竹野内 豊/この服とスタイルで 生きていく!/「変える」シャツ「、変えない」シャツ/「グレージュ」カジュアル/21世紀の「真名品」/ラグジュアリー・カー&ウォッチ/紳士の名品肌
2021年3月4日発売 ¥1,230(税込)

メンズプレシャス2021年春号の詳細はこちら

この記事の執筆者
TEXT :
MEN'S Precious編集部 
BY :
MEN'S Precious2021年春号より
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PHOTO :
小池紀行(パイルドライバー)
STYLIST :
四方章敬
EDIT :
矢部克已(UFFIZI MEDIA)