気軽に、気持ちよくスポーツドライビングを楽しみたい。ただし、これみよがしなスポーツカーはちょっと、という紳士は少なくないだろう。そんな方におすすめしたいのが“ホットハッチ”と呼ばれるスポーツモデルだ。実用ハッチバック然としたアピアランスながら、流麗なクーペスタイルのスポーツカーと肩を並べるくらいのパフォーマンスを内に秘めている。その筆頭であるルノー・メガーヌR.S.が先頃マイナーチェンジを受けた。
F1に携わるルノー・スポールのテクノロジーを注入
メガーヌR.S.(¥4,640,000〜)は、世界最高峰レースのF1に携わる技術集団、ルノー・スポールがレースのトップカテゴリーで培った技術を惜しみなく注ぎ込んだモデルだ。そのホットハッチを箱根で走らせた。
試乗車のメガーヌR.S.がまとうオランジュトニックと呼ばれるビタミンカラーはそれだけで元気が沸き上がり、いったん走り出せばドライバーの気分はさらに高まってくる。1.8リットル直4ターボエンジンは、タービンに精度の高いセラミックボールベアリングを与えてフリクションを低減するとともに、吸排気系をブラッシュアップ。結果、300psの最高出力を獲得したというから、物足りなさを覚えるはずはない。
低速域からもりもりとパワーが湧き上がり、極上のスムーズさを伴いながら回転計のレッドゾーン付近まで胸のすくような加速が味わえる。その間、シフトタイミングを短縮したという6速ツインクラッチトランスミッションは電光石火のギアチェンジを続けてくれるが、ドライバー自身がステアリングパドルを操作してエンジンパワーの美味しいところを引き出すことももちろん可能だ。
「第二のダンパー」内蔵で乗り心地はしなやかかつ上質
足回りはスポーツモデルらしく適度に締め上げられているため、姿勢変化は最小限に抑えられ、ステアリング操作に対する車体の反応が早い。4コントロールと呼ばれる4輪操舵機構により、低速域では後輪が前輪とは逆に操舵されて旋回性を高めてくれるからだろう、メガーヌR.S.はコーナーの曲率に合わせた綺麗な弧を描きながら、路面に吸い付くように気持ちよく駆け抜けてくれた。
それでいてストロークの底付き感を減らすセカンダリー(第二の)ダンパーを内蔵したサスペンションが、しなやかさを伴った上質な乗り心地を確保してくれているから、普段使いもスマートにこなせるはずだ。
基本は実用ハッチバックという気軽さがありつつ、F1直系というバックグラウンドに裏打ちされた確かな技術とパフォーマンスは、様々なスポーツカーを知る紳士たちを十分に納得させるものだ。新型メガーヌR.S.はそんなさりげないスポーツモデルだからこそ、日常における格好のカンフル剤となってくれるのは間違いない。
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- TEXT :
- 桐畑恒治 自動車ライター