花をいけるときや花瓶の水を替えるときに気づくことがある。美しく咲く姿が気に入って選んだ花たちだが、その花を支える茎は、色も形も、触ったときの感触もさまざま。茎には、華やかさで目を引く花とは違った個性があるのだ。というわけで、今回は“茎まで楽しむ”スタイリッシュなアレンジに挑戦。
ガラスのシンプルな花瓶で、茎まで楽しむ花のアレンジを提案したい。そんなリクエストに応え、恵比寿「GINKGO」のオーナー・フローリスト山岡まりさんが選んでくれたのは「アンスリウム」と「クルクマ」。どちらも花姿が個性的。そして、すらりと伸びた茎のラインがカッコいい。
トロピカルムードが漂う「アンスリウム」と「クルクマ」
アンスリウム(左)は、南北アメリカ大陸の北回帰線と南回帰線に挟まれた地域、熱帯アメリカを原産地とするサトイモ科の多年草。花びらは1枚?と多くのひとが思ってしまうが、エナメル質のハート型の部分は仏炎苞(ぶっぽうそう)と呼ばれるガクが変化したもの。実は、その中央にある柱状の細長い部分が花の集まりで、このような花のつき方は肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる。そんなウンチクもある花の部分を支えるのが、細い筆で描いた線のような茎。それでいて、指で触ると硬めでしっかりしている。花瓶にさしたときのキリッとした姿も魅力的だ。
一方のクルクマ(右)は、マレー半島を原産地とする球根植物。カレー粉の原料となるウコンの仲間で、ショウガの一種。くるりとした花びらが、下から上へに向かって重なるように咲く花形が独特なのだが、アンスリウム同様、花びらに見えるこの部分は苞(ほう)と呼ばれるもので、花びらではない。花はその苞に中に小さく咲く。色は澄んだ緑色や白、ピンクなど、バリエーションも多彩。真っすぐに伸びた茎はアンスリウムより太めで、ガラスの花瓶の中でよく映える。
「モカラ」をプラスしたボリューム感のアレンジ
“茎まで楽しむ”ためには、アンスリウムもクルクマも、それぞれ単独でシンプルにいけるのがお勧め。だが、大きめなガラスの花瓶があったら、差し色になる花を加えたワンランク上のアレンジに挑戦するのもいい。
差し色になる花として山岡さんが選んでくれた1本が、深みのある緑色の茎にオレンジ色の花をたくさん付けた「モカラ」。ラン科のモカラは花持ちがよく、暑くなるこれからの季節に重宝する花だという。何より、茎のラインが美しいアンスリウムとクルクマと合わせたアレンジは、ガラスの花瓶の中で交差する茎の佇まいが美しい。
最後に、今回の撮影で使用した、山岡さん愛用の“茎まで楽しめる”花瓶を紹介。クルクマの2輪挿しと、モカラを加えた3種の花のアレンジに用いた円柱形のガラスの花器。名前は「水栽培ガラスベース クリア ロング バルブベース」。本来は球根の水栽培ができるガラス製容器で、球根を置く上皿がセットされている。
この上皿は中央に穴が空いているため※(下の写真参照)、花瓶として使うときに、長めの切花を倒れにくくしたり、少量の切花をまとめるのに役立つ。上皿を外せば、多めの本数の切り花をいけることもできる。シンプルで安定感のあるデザインのため、どんなインテリアの部屋にも似合い、多様な使い方ができる優れモノだ。
茎まで楽しむアレンジには、シンプルなガラスの花瓶がいい。あるいは、キッチンの棚にあるロングのグラスも活用できる。日中は窓に近い明るい場所に置き、夜はルームライトの灯りの下など、花瓶の中の茎が映える場所に飾るのもいい。茎は花を支えるだけでなく水分や養分を花や葉まで行き渡らせる器官だということを理科の授業で習ったっけ、なんてことを考えるながら眺めると、一段と愛おしく思えてきそうだ。
問い合わせ先
- TEXT :
- 堀 けいこ ライター
- PHOTO :
- 島本一男(BAARL)
- 取材協力 :
- GINGO
- 参考書籍 :
- 「花屋さんに並ぶ植物がよくわかる 「花」の便利帖(KADOKAWA)」