フェラーリのラインナップに新たに加わった「ポルトフィーノM」に試乗させてもらう幸運を得た。横浜みなとみらいから東京湾アクアラインに入り、海ほたるパーキングエリアを抜けて木更津方面へ。オープントップで初夏の海風を浴びながらのクルージングは、これぞドライビング・プレジャーというべき満足度の体験だった。パンデミック下の閉塞的な日常にうってつけの極上のストレス解消法である。
アクセルペダルを踏みこんだときのジワッとくる悦び
フェラーリには2017年に登場した「ポルトフィーノ」というスパイダーが存在するが、2020年(日本では2021年)に発表されたばかりのこちらは末尾に「M」がついた進化版。Modificata(改良されたという意味のイタリア語。英語ならModified)のMだ。
「ポルトフィーノ」はハイダウェイな高級リゾート地として知られるイタリアの港町の地名である。
「ポルトフィーノM」のステアリングを握ってまず感じたのは、見た目以上の運転しやすさ。
一般ドライバーで女性の私でも無理なく運転でき、同乗者に恐怖感を与えることは(さほど)なかったと思う。アクセルペダルは程よく重たい。スタート時、それを踏み込んだときのジワッとくる感触が、非常に心地よかった。「あー、これこれ、これが欲しかったの」と声を漏らしてしまうほど。
さらに深く踏み込んだときの力強くて魅惑的な加速はフェラーリの真髄であり、大きなプレジャーであるが、運転しやすさに寄与しているのは、ブレーキのコントロールしやすさ、つまり、ペダルの踏み込みの強弱をダイレクトに反応してくれるブレーキングじゃないかと思う。巨体ながらも加減速や取り回しのしやすさから安心感が生まれ、スムーズに流れるように、そしてスマートに運転できる。
このドライビング・プレジャーは、必ずしも速度が極端に高くなくても味わうことができる。もしあなたが、運転の不安からフェラーリを敬遠しているなら、このモデルから試してみるといいかもしれない。
全幅1938mm。縁石や道路鋲(通称キャッツアイ)など気を使う部分はあるが、道さえ間違えなければ都心の日常シーンでも充分に楽しめそうだ。段差やスロープのきつい駐車場は敬遠したいが、商業施設やデパートなどへは余裕でいける。買い物にも使えるフェラーリだ。
家族で楽しめる汎用性の高さ
コンパクトながら後ろに+2シートあるところが大きい。
あるときは大人だけでパフォーマンス性能を思う存分堪能し、あるときは子供や愛犬を乗せて家族揃ってお出かけへ。こんな使い方ができるのが「ポルトフィーノM」のメリットだ。
大人の楽しみを子供に伝え、それを共有できたらなお嬉しいし、ちょっとした子供の送迎さえも楽しくなる。日常使いで気になる燃費は、8速ギアの導入とトランスミッションの効率アップで大幅に減少したそうだ。
クルマの電動化など、さまざまなパラダイムシフトを経験しながら大人になる現代の子供たちにとって、オープンルーフで“生”の、かつ極上のエグゾーストサウンドを聴きながら家族で駆けった経験は、貴重な思い出になることだろう。
風の巻き込みが少ないのも、オープンドライブを快適にする重要なポイント。高速走行でも会話は可能だし、ウィンドディフレクターを立てれは、ロングヘアの暴れ具合も控えめだ。オープン走行中、紫外線対策にブリムの広いハットをかぶっていたときも、1度も飛ばされることはなかった。メンズキャップならなおさら飛ばされる心配はない。
独りでストイックに駆けるに十分なスペックを備えているが、きっと、このドライビング・プレジャーを誰かと共有したくなる。そんな“幸せな一台”だと思う。
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- TEXT :
- 林 公美子 ライター