日本車の伝統銘柄中、もっとも有名なひとつが、フェアレディZだ。優雅でスポーティなファストバッククーペは、現在6代目。登場から13年が経過し、インテリアや装備面での古さは否めない。だが、それをもってしても余りある魅力が、このクルマにはある。大人が乗っても楽しい(むしろ似合う)スポーツカーの価値を、改めて確かめた。
13年経ってもやっぱりZカーは楽しい!
初めて「フェアレディ」の名を冠したSR311型ダットサンの登場から約60年、クルマ好きの心を揺さぶる国産スポーツカーといえば、ニッサン・フェアレディZを思い浮かべる人も少なくないはずだ。この2シータースポーツは、国内外のコンペティションシーンで数々の勝利をもたらすとともに、“Zカー”(ズィーカー)の愛称で、特にアメリカでは高い人気を誇ってきた。
流麗なファストバックのコンパクトな車体に、フロントエンジン-リア駆動のスポーツカーの公式ともいえるレイアウトで運転する楽しさを広め、長年にわたってファンの心を捉えてきたからだ。昨年、次期プロトタイプが公開されたことからもわかるように、フルモデルチェンジも間近といえるタイミングではあるが、現行型の魅力をいま一度紹介しておきたい。
熱烈なファンの間でZ34の型式名で呼ばれる現行型は2008年に登場。それまでのZ33型からホイールベースを短縮して車体をコンパクトに仕立て直しつつ、フロントには排気量を3.7ℓに拡大したV6自然吸気ガソリンエンジンを搭載して運動性能を向上。以来、13年にわたって熟成を重ねてきた。
街を流すだけで感じられるスポーティ感
筆者自身、フェアレディZに触れるのは久しぶりのことだったが、そのスポーツカーらしい適度にタイトなコクピットに収まると、否応なく気分が盛り上がってくる。スターターを押してエンジンに火を入れると、大排気量V6らしいビートの効いた重低音が響いてきた。
シフトレバーをDレンジに送り、スロットルを踏み込めばリアタイヤがしっかりと路面を蹴り上げる様子がシートから直に伝わり、そのダイレクト感の高さに思わず笑みがこぼれてしまう。ステアリングフィールは重厚感に溢れるいっぽうで、操作に対するノーズの動きは正確かつ機敏。都内の一般道や首都高速を流しているだけでも“スポーツドライビング”と感じられるクルマはそうそうないだろう。
日産にはフェアレディZと双璧をなすスポーツカーの雄、GT-Rが年次改良を重ねて洗練度を高めてきているが、技術の粋を集めて高性能を追求するそれとはまた異なる滋味深さがフェアレディZにはある。もちろん設計年次の古さを感じる点もなくはないが、なによりそのダイレクトなフィールはドライバーの五感を刺激し、改めて運転という行為が楽しいものだと教えてくれる。
それは免許を取って初めてクルマを動かしたときの喜びに似たような感覚で、分別を持った大人を童心に帰らせる力がある。そんな色焦ることのない魅力を、フェアレディZにはこの先も守り、伝え続けてもらいたい。
問い合わせ先
- TEXT :
- 桐畑恒治 自動車ライター