色とりどりのパステルカラーにさっくり軽い食感でおなじみのお菓子、マカロン。パスタの1種「マカロニ」と一文字違いであることに、お気づきでしょうか?
見た目も味もまったく違う食べ物なので、言葉が似ているのは偶然に思えますが…「マカロン」と「マカロニ」の間には、何か関連性があるのでしょうか? 今回は、マカロンの成り立ちをご紹介しながら、この2つの食べ物の関係を紐解いていきます。
■マカロンは、実はフランスではなくイタリア生まれだった?
アーモンドパウダー、卵白、砂糖で作るマカロンは、口の中でふんわりと溶ける生地の間に、フルーツやチョコレートのクリームがサンドされたスウィーツです。日本で購入できるマカロンのブランドとして、フランスの有名パティスリーを思い浮かべる人も多いはず。
マカロンの発祥については諸説ありますが、8世紀にイタリア・ヴェネチアでつくられた「マカローネ」というお菓子が原型だという説が有力です。また、製造方法が非常に似ている、イタリアのピエモンテ州の郷土菓子「アマレッティ」が基になったという説も。
ほかにも、フランスの修道院で考案された、アラブのお菓子がヒントになった、という説もあるほど、その歴史は非常に深く、長い間愛されてきた菓子であることが伺えます。
■フランスには地域によって、独自のマカロンがある!
マカロンが正式にイタリアからフランスへ伝えられたのは、16世紀。イタリアの名家であるメディチ家のカトリーヌ・ド・メディチが、フランスのアンリ2世のところに嫁いだときだといわれています。
戒律の厳しい修道院では、肉食は禁じられていたため、たんぱく質が豊富で栄養価の高いアーモンドと卵白を使ってつくられるマカロンがフランスの地で発展し、さまざまなマカロンがつくられるようになりました。
その結果、フランスには地方ごとにさまざまな種類のマカロンがあります。
ピカルディ地方の古都アミアンには、ハチミツの入った「マカロン・ダミアン」。アキテーヌ地方では、甘口のワインを加える「マカロン・サンテミリオン」。プロヴァンス地方では果物や花、松の実が使われる「マカロン・ド・プロヴァンス」…など、多彩なバリエーションがあるのです。
私たちが思い浮かべるマカロンは、マカロン生地の間にクリームやジャム、チョコレートを挟んだもの。これは「マカロン・パリジャン」を指しており、1930年代にパリのパティスリー「ラデュレ」が、マカロンの間にクリームを挟んだのがはじまりとされています。
■マカロンとマカロニに、つながりはある?
マカロンはイタリアから伝わり、フランスでバリエーションが広がったお菓子だとご紹介してきましたが、マカロンとマカロニの響きが似ている理由も、実はそこにありました。
マカロンの原型と言われている「マカローネ(Maccherone)」は、もともと「練った生地を切った」という意味で、フランスに伝わった当時は、パスタの一部もお菓子と同じように「マカローネ」と呼ばれていました。
しかし、17世紀に入り、パスタは「マカロニ」、そしてお菓子は「マカロン」と呼ばれるようになったのです。
「マカロニ」と「マカロン」が一文字違う理由には、イタリアからフランスへ伝えられたという、国境をまたいだ壮大な歴史があったとは、驚きですね。
この魅惑のスイーツを食べる際には、ぜひ背後にひそんだ物語を思い出してみてくださいね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 長祖久美子
- EDIT :
- 青山梓(東京通信社)