雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動を連載でご紹介しています。
8月号では、京都大学大学院地球環境学堂 准教授の浅利美鈴さんの活動をご紹介します。
ごみ問題のスペシャリストが京都ならではの地域再生に挑戦中
「ごみ」と「環境教育」をテーマに研究を続ける浅利さん。京都大学在学中から「京大ゴミ部」を立ち上げるなど精力的に活動を続けてきた。なかでも「家庭ごみ細組成調査」(*)は、京都市内の400〜500世帯の家庭ごみを集め、ごみの素材や用途を分類して調べるもので、ごみを減らすための有効な情報を得ることができる。
「最近では、開封されていない食品ごみが目立つようになった事実を受けて、流通業界にまとめ売り以外の選択肢を提案し、消費者には買いすぎ防止を呼びかけました。環境問題を解決したいというポジティブな思いは、ほとんどの人にあるんです。でも、なかなか行動に移せない。その壁を、破るきっかけをつくっていきたい」
*家庭ごみ細組成調査とは・・・京都市では1980年から毎年1回以上継続的に実施。家庭ごみを約400項目に細分類する。全国の自治体でも同様の調査が行われている。
【SDGsの現場から】
研究室の手前の部屋では常時フリマを開催
学内や地域の環境改善活動に取り組む「エコ〜るど京大」主催で、新入生や留学生の支援を。
コンポスターでキャンパスも持続可能に!
研究室のある棟の1階には生ごみ処理機も。大学内でも生ごみを土に返してごみを減らす。
「京都超SDGs」というSDGsを切り口にした活動も展開中だ。
「1300年の歴史をもつ京都の街では、SDGsも’30年までといわず、数十年、数百年のスパンで考えていくのがいいのかな、と。特に力を入れているのが、京北という中山間地域の再生です。桓武天皇が長岡京から遷都する際に開かれたとされ、林業で栄えてきた地域ですが、今は人口も減り、厳しい状況にある。そこで、市街地と里山が共生し持続していく方法を構築すべく、課題を洗い出しています。夏以降は、廃校を拠点にして、SDGsラボという形で、テレワークや、地元の方も活動拠点にできるような場所を展開する予定です。地域内でエネルギー循環できるよう、ごみを『出さない』アプローチで設計を進めています」
活動は、世界の途上国でも展開。留学生を受け入れ、ごみ問題解決のための人材育成にも関わる。
「ごみの研究は生涯続けたい。暮らしのすべてがSDGsだと思う」
- PHOTO :
- 香西ジュン
- EDIT&WRITING :
- 大庭典子、喜多容子(Precious)