茅の輪くぐりとは、茅(かや)で作った大きな輪をくぐることによって心身を清め、無病息災や厄除け、家内安全を願う行事です。

当記事では、茅の輪くぐりの意味や由来、例年通りであれば2020年の茅の輪くぐりはいつ行われるのか、茅の輪くぐりの方法・手順、茅の輪くぐりの唱え詞(となえことば)についてご紹介します。

また、「神田明神」(千代田区外神田二丁目)、「東京大神宮」(千代田区富士見)、「北野天満宮」(京都府上京区馬喰町)、「太宰府天満宮」(太宰府市宰府)、「諫早神社」(諫早市宇都町)、「虻田神社」(虻田郡洞爺湖町)など、茅の輪くぐりを行う神社をピックアップしました。

■茅の輪くぐりとは

茅の輪くぐりとは
茅の輪くぐりとは

茅の輪くぐりの読み方は「ちのわくぐり」です。茅の輪くぐりとは、神社境内に設置された茅で作れた大きな輪をくぐることにより、無病息災や厄除け、家内安全を祈願する行事のことをいいます。

茅の輪くぐりは、日本全国の多くの神社で、主に6月30日頃に行われる「大祓(おおはらえ・おおはらい)」「夏越の祓(なごしのはらえ・なごしのはらい)」という儀式の中で行われます。

茅の輪をくぐることによって、生活の中で知らず知らずのうちについてしまった災いや厄を払い、健康で幸せな生活が送れるようにとの願いが込められています。

茅の輪くぐりの由来

茅の輪くぐりで使われる茅(かや)は、しめ縄としても用いられますが、古来から「身についてしまった厄を払うもの」「神聖なもの」として重要な役割を果たしてきました。

また、茅の輪くぐりが行事として行われるようになった理由は諸説ありますが、蘇民将来(そみんしょうらい)という人物の神話が由来しているといわれています。

その神話では、備後国(現広島県東部)で暮らしていた蘇民将来が、旅の途中に宿を求めて訪れたスサノオノミコトを、貧しいながらも喜んでもてなし、その恩返しとして「疫病を逃れるために、茅の輪を腰につけなさい」との教えを授かり、難を逃れたとされています。

現在の茅の輪くぐりは、蘇民将来が腰につけていた茅の輪が長い歴史を経て大きくなり、人がくぐり抜けるものになった、といわれているようです。

■茅の輪くぐりはいつ行われるの?

茅の輪くぐりはいつ行われるのでしょうか。一般的な茅の輪くぐりの例年の期間時期についてご紹介します。

6月30日頃の夏越の祓(なごしのはらえ)から行われる

6月30日頃の「夏越の祓(なごしのはらえ)」から行われる茅の輪くぐりは、1年の前半の穢れを清めて災厄を払うための神事であり、1年の後半も無事に過ごせるようにと祈る行事です。

例年では、6月30日前からそれ以降もしばらくの間は茅の輪を設置しておいて、期間中いつでもくぐることができる神社もあるようです。

12月31日の年越の祓(としこしのはらえ)に行われることも

12月31日の年越の祓(としこしのはらえ)に茅の輪くぐりを行う神社もあるようです。この場合、茅の輪くぐりは大晦日までが基本となります。1年の間についてしまった穢れを落とし、心身共に新年を清らかな状態で迎えるという意味があるそうです。

■茅の輪くぐりの方法・手順

茅の輪くぐりの方法・手順
茅の輪くぐりの方法・手順

茅の輪くぐりの方法・手順は、唱え詞(となえことば)を唱えながら、8の字にくぐり抜けるのが一般的です。ただし、作法については神社によって違いますので、参拝した神社の作法に則って参拝してください。 ここでは一般的な茅の輪くぐりの方法・作法についてご紹介します。

身を清める

神社に入り、手水舎で手と口を清めます。 茅の輪の前に立ち、ご本殿に向かって一礼をします。

最初は左足から左回りに

茅の輪を左足でまたぎながらくぐります。茅の輪の左側を回ってから正面に戻って一礼します。

次は右足から右回りに

次は、茅の輪を右足でまたぎながらくぐります。茅の輪の右側を回ってから正面に戻って一礼します。

もう一度、左足から左回りに

もう一度、左足で茅の輪をまたいで左側へ回り、茅の輪の正面に立って一礼します。 最後は茅の輪をくぐり抜けて拝殿でお参りを行います。

■茅の輪くぐりの唱え詞(となえことば)

茅の輪くぐりには、唱え詞を唱えたり、心で念じながらくぐるという作法もあります。 これも神社によって作法は違います。ここでは、代表的な唱え詞を紹介します。

祓へ給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸へ給へ

茅の輪くぐりの唱え詞で代表的なのは、「祓へ給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸へ給へ(はらえたまい きよめたまえ まもりたまい さきわえたまえ)」というものです。神様にお祓いとお力添えをお願いする意味があります。

神社によって違う祝詞や和歌

神社によっては、違う祝詞や和歌を唱えたりもします。 たとえば、下記の3つの和歌を唱える神社もあるようです。

1周目「水無月の なごしの祓 する人は ちとせの命 のぶといふなり」
2周目「思ふ事 皆つきねとて 麻の葉を きりにきりても 祓へつるかな」
3周目「宮川の 清き流れに 禊せば 祈れることの 叶はぬはなし」

この3つの中でも1周目の和歌がもっとも有名で、この和歌のみを唱える作法の神社もあるとされています。

■茅の輪くぐりができる神社

ここでは、茅の輪くぐりが行われている神社をご紹介します。 新型コロナウイルスの感染防止のため、夏越の払の行事を神職のみで行うなど、各神社によってさまざまな対応が取られているため、詳細はオフィシャルサイトなどでご確認ください。 

東京「神田明神」(千代田区外神田二丁目)

東京「神田明神」(千代田区外神田二丁目)
東京「神田明神」(千代田区外神田二丁目)

東京都千代田区外神田にある「神田明神」は正式名称「神田神社」と言い、商売繁盛を祈願するうえで外せない神社と言われています。730年に大手町近くに建立され、江戸時代に現在の場所に移りました。徳川家康も参拝していたと伝えられる、パワースポットとして人気の神社です。

毎年6月に行われる恒例の「夏越大祓式」は、2020年6月30日(火)に行われる予定です。神田明神の茅の輪くぐりは、「水無月(みなつき)の夏越(なご)しの祓(はらえ)する人はちとせの命のぶというなり」と古歌を唱えながら、左まわり・右まわり・左まわりと、八の字を書くように三度くぐり抜けます。神職とともに参拝者が茅の輪をくぐることによって穢れや災いが祓われるといわれています。

神田明神オフィシャルサイト

東京「東京大神宮」(千代田区富士見)

神前結婚式創始の神社「東京大神宮」。飯田橋駅から徒歩5分のところにあり、「東京のお伊勢さま」と呼ばれる縁結びの神様として人気の神社です。 東京大神宮の「大祓式(おおはらえしき)」は、半年間の厄や穢れを祓い清めるための神事です。毎年6月と12月の末日に行われます。

2020年は6月30日(火)に祭典が行われます。しかし、新型コロナウイルス感染症の防止のため、祭典は神職のみで執り行われ、参列はできません。なお、茅の輪は設置されるので、6月10日(水)から30日までの間、茅の輪をくぐってお参りすることができます(ただし、30日当日の15時頃から16時半頃までは、祭典の関係でくぐれません)。

また、「形代(かたしろ)のお祓い」も行われます。形代のお祓いとは、人の形に切り抜いた「形代(かたしろ)」と呼ばれる紙に名前と年齢を記入し、形代で自分の体を撫でて息を吹きかけ、形代に自分の厄や穢れを移してから身代わりとして形代を清めてもらう神事です。

東京大神宮オフィシャルサイト

京都「北野天満宮」(京都府上京区馬喰町)

菅原道真公を祀った全国の天満宮の総本宮「北野天満宮」は、「北野の天神さん」「北野さん」と呼ばれ親しまれています。例年では、 6月25日に「御誕辰祭」(別名「夏越(なごし)天神」)が行われ、京都最大の直径約5メートルの大茅の輪をくぐり無病息災を願います。

同じく例年では、6月30日に「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」として、本殿施用面に設けた茅の輪の前で神事が執り行われます。また、神職とともに行う茅の輪くぐりで日常で身についた罪や穢れを払うことができます。「御誕辰祭」「夏越の大祓」ともに、直径7~8センチの茅の輪の授与もあります。

北野天満宮オフィシャルサイト

福岡「太宰府天満宮」(太宰府市宰府)

福岡「太宰府天満宮」(太宰府市宰府)
福岡「太宰府天満宮」(太宰府市宰府)

天神さま(菅原道真公)を祀る全国約12,000社の総本宮と称えられ、「学問・至誠しせい・厄除けの神様」として崇敬を集める「太宰府天満宮」。

同宮では、例年7月24日(夏越祭)、25日(誕生祭)の両日、道真公の生誕を祝い、夏を無事に過ごせるように願う「夏越祓え」の神事が行われ、茅の輪が設置される予定です。2020年は、7月24日(金)と25日(土)に斎行予定となりますが、詳細はオフィシャルサイトなどでご確認ください。

太宰府天満宮オフィシャルサイト

長崎「諫早神社(いさはやじんじゃ)」(諫早市宇都町)

奈良時代の神亀五年(西暦728年)に、九州総守護の神々を祀る四面宮として建立されたとされる、長崎県諫早市に鎮座する「諫早神社」。地元の人々からは、「おしめんさん(お四面さん)」の愛称で親しまれています。例年であれば、「夏越の大祓」(6月末)と「年越の大祓」(12月末)で茅の輪くぐりができます。 

諫早神社オフィシャルサイト

北海道「虻田神社(あぶたじんじゃ)」(虻田郡洞爺湖町)

文化元年(1804年)、京都伏見稲荷大社の分霊により稲荷神社として創建された「虻田神社」。風水でいう龍脈(地中を流れる気のルート)の上に位置しており、海外や全国からも参拝客が訪れるパワースポットとして注目されています。

毎年6月30日に「夏越大祓(おおはらえ)」が行われますが、2020年は新型コロナウイルス感染防止のため、神事は神職のみで執り行われます。神事には参列はできませんが茅の輪くぐりや形代のお祓いはできます。

虻田神社オフィシャルサイト

2020年の茅の輪くぐりは、参拝前に状況のチェックを

当記事では、茅の輪くぐりの意味や由来、なぜ6月30日頃と12月31日に茅の輪くぐりを行うのか、くぐり方と唱え詞(となえことば)をご紹介しました。

また、「神田明神」(千代田区外神田二丁目)、「東京大神宮」(千代田区富士見)、「北野天満宮」(京都府上京区馬喰町)、「太宰府天満宮」(太宰府市宰府)、「諫早神社」(諫早市宇都町)、「虻田神社」(虻田郡洞爺湖町)など、茅の輪くぐりを行う神社をピックアップしました。 茅の輪くぐりが行われている神社の日程をチェックして、ソーシャルディスタンスに配慮しながら、茅の輪くぐりに参加してみませんか?

この記事の執筆者
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