コリン・ファースとヒュー・グラント、奇しくも同年齢の今年61歳を迎えるふたりの俳優は、ライバル役を演じた『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001年)が公開されて以来、何かと比較対象となってきた。この作品では、コリン・ファース演じるのは真面目なエリートで、実直を絵に描いたような堅物弁護士、ヒュー・グラントは人の心をつかむのがうまいプレイボーイの出版社編集長役。レニー・ゼルウィガー演じる主人公ブリジットはどちらを選ぶのかというのがこの映画のテーマだ。
徹頭徹尾イングリッシュ・ジェントルマンの体現者/コリン・ファース
コリン・ファースはさすがアカデミー賞主演男優賞を受賞しているだけあり、演技の幅も広く、さまざまな役柄をこなす。トム・フォード初監督作品『シングルマン』のホモセクシャルの大学教授、吃音に苦しむ英国王ジョージ6世を演じた『英国王のスピーチ』、ジョン・ル・カレ原作のスパイ映画『裏切りのサーカス』では主人公の妻と不倫関係にあるバイセクシャルの二重スパイ、ビル・ヘイドンなど複雑な役柄も巧みに演じきっている。
近年の大ヒット作『キングスマン』といったコメディ活劇も含め、彼が演じるのは主に英国の苦悩する古典的ジェントルマンの生き様だ。コリン・ファース演じる主人公たちは自らの弱さをさらけ出せないため、苦難の人生を歩んでいる。一緒にいる女性たちも気を遣い、プライドを壊さないよう彼を励ますのにひと苦労だ。
「ロマンティック・コメディの帝王」の名は健在/ヒュー・グラント
対するヒュー・グラントは前述の『ブリジット・ジョーンズ』や『アバウト・ア・ボーイ』ではプレイボーイ、『ラブ・アクチュアリー』『ノッティングヒルの恋人』『フォー・ウェディング』といった代表作では気の弱いモダンジェントルマンを演じてきた。
彼が演じる主人公たちは映画によっても違うが、概して気が弱く、泣き言を言っていたかと思えば、知らない場所で女性を口説いていたりと、まさに変幻自在。最後はあの垂れ目で困ったような顔で女性をじっと凝視すると、相手はすべてを許してしまうという筋書きとなっている。
現実は映画のラストとは異なり、泣き言を言わず、自分の殻に閉じこもり、使命を全うする古典的紳士より、愚痴をひたすら聞いてくれて、機嫌を取ってくるモダンジェントルマンに大半の女性は弱い。ヒュー・グラントに軍配があがる確率が高いのは否めない。逆説的にいえるのは、自分の狡さや弱さをさらけ出せる男のほうが実は強いのではないかということだ。まさにモダンジェントルマン、侮るなかれというわけである。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2021年春号
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- PHOTO :
- Getty Images
- WRITING :
- 長谷川喜美(ジャーナリスト)