「シャレーオート」展 〜シャルロット・ペリアンとジョゼ・ザニーネ・カルダス 偉大な建築家、デザイナーが手掛けた家具〜は、8月25日(水)〜9月5日(日)の開催。“ラグジュアリーな山小屋”をテーマにした本展では、シャルロット・ペリアンが1960年代〜80年代にかけて携わったモンブランに面するゲレンデを中心としたリゾート開発事業「レ・ザルク」プロジェクトにおいて彼女がデザイン及びセレクトした家具作品と、ブラジルを代表するデザイナー、ジョゼ・ザニーネ・カルダスの家具を中心に、独自の空間コーディネートと作品の展示販売が行われる。
シャルロット・ペリアンは、前述のプロジェクトにおいて山でのバカンスの在り方や人間主義的なアプローチをコンセプトに掲げ、景観に溶け込む“家具と建築と環境の調和”など、当時、急速に発展が進む都市での生活環境と対局を成す新たなリゾートの開発を推し進めた。
一方のジョゼ・ザニーネ・カルダスは、ネームバリューこそペリアンに劣るものの、ルシオ・コスタやオスカー・ニーマイヤーといった現代建築の巨匠たちとの仕事で研鑽を積み、1991年にはブラジル建築士協会より名誉建築士の称号を授与するなど、晩年、その評価を確立。ブラジル国内での森林破壊への抗議を込めた倒木を使った作品群「訴える家具」は、サステナビリティへの意識が高まる現代からみても先駆的なものであった。
この国籍も世代も異なる2人の建築家を繋ぐのは、ありふれた木材を美しく繊細な作品へと生まれ変わらせる独自の審美眼と選択眼。その先鋭的な感性は勿論だが、そこに共通点を見出し、新たな価値や創造性を提案する「アトリエ ギャラリー」と「オブジェ デ アート」による組み合わせの妙や、編集センスもまた秀逸と言えよう。
会場では、シャルロット・ペリアンとジョゼ・ザニーネ・カルダスの作品に加え、ピエール・シャポー、セルジオ・ロドリゲス、オスカー・ニーマイヤーの家具作品など、これまで国内ではあまり紹介されることのなかった希少なプロダクトも販売される。そこで、エキシビジョンを企画した2つのギャラリーに今回、展示・販売されるラインナップから、いくつかおすすめをピックアップして頂いたのでご紹介したい。
オーガニックかつ彫刻的な造形がダイナミズムを生み出す名作
「丸太をくり抜いた大胆な脚に、ガラスのトップを合わせたダイニングテーブルです。1970年頃の作品で、ガラス部分も当時のオリジナルのままとなっています。」(アトリエ ギャラリー 笹ヶ瀬さん)
プリミティブな意匠に宿る環境保護へのメッセージ
「丸太を組んで作られたフレームに、鋲で留められたファブリックシートを組み合わせた1970年頃の作品。大きな無垢材から家具を掘り出すというベーシックなアプローチで制作された“訴える家具”シリーズのひとつです。」(アトリエ ギャラリー 笹ヶ瀬さん)
山小屋の伝統的なスタイルと洗練されたモダニティの邂逅
「パイン材の天板にスチールの脚を備えたカフェテーブルです。伝統的なシャレー(山小屋)スタイルとモダンが融合したようなデザインで、脚の部分はスキー靴を履いたままでも邪魔にならないように設計されたとも言われています。」(オブジェ デ アート 笹ヶ瀬さん)
ペリアンがキャリアの絶頂期に遺した極めて希少な建材品
「レ・ザルク用に作られたスライド式のドアです。建材は家具調度品に比べ、極めて入手が難しく、このドアも大変希少なものになります。」(オブジェ デ アート 笹ヶ瀬さん)
機能美に魅せられるピエール・シャポーの木製シェルフ
「1967年に発表された作品。本来、ブラケットの上に置くべき棚板を下部で接続しているのが特徴で、それによりブラケット部分がブックエンドの役割を果たしており、機能性と意匠の美しさを兼ね備えたものです。」(オブジェ デ アート 笹ヶ瀬さん)
これまで当たり前のように考えていた生活様式がコロナ禍で一変し、改めて自然への回帰が見直される中、2人のデザイナーが提唱してきた空間や素材の新しい捉え方は、今なお普遍性を帯びており、これからの私たちの暮らしにおいても何かしらの示唆を与えてくれることだろう。
また、これまで以上に自宅で過ごす時間が増えてきたことで、住環境や家具の重要性に気付かされた人も多いはず。偉大な先達が残した功績や時代を見越したビジョンに触れることで、鑑賞者の住まいに対する視点をより豊かなものにしてくれる今回のエキシビジョンに是非足を運んでみてはいかがだろうか。
「シャレーオート」展〜シャルロット・ペリアンとジョゼ・ザニーネ・カルダス 偉大な建築家、デザイナーが手掛けた家具〜
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会期/2021年8月25日(水)〜9月5日(日)
会館時間/10:00〜20:00(入場は19:30まで)
会場/伊勢丹新宿店本館2階
住所/東京都新宿区新宿3-14-1 -
※新型コロナウイルスの影響により一部情報が変更となる可能性があります。最新情報は公式HPなどでご確認ください。
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- WRITING :
- 佐藤哲也