ふと気がつくと、無駄なものや不要なものまで買っていた、なんて経験はありませんか? なぜこんなことが起きてしまうのかというと、世の中にお金を使わせる仕掛けがあふれているから。
しかし賢いお金持ちは、巷にあふれている落とし穴にハマらない判断をしているそうです。これを心がけるだけで、満足度の高いお金の使い方ができるのだとか。その方法を、経済コラムニストの大江英樹さんに教えていただきました。
■1:海外旅行では「午前に買い物」をして、午後に観光する
海外旅行の際、少しでも効率的に時間を使おうと意識するあまり、予定をぎっしり詰め込んでしまう人は少なくないでしょう。たとえば、午前中に観光をして、午後からはショッピングを楽しむ。実はこれが無駄遣いにつながっていると、大江さんは指摘します。
人間は疲れていると正常な判断ができなくなってしまう生き物。慣れない土地を歩き回り、疲れ切っている状態でショッピングをすれば、判断力がどうしても鈍ってしまうのだとか。
「脳が疲れているときに判断することは、避けたほうがいいと思います。これは買い物だけではなく、お金を使うこと全般に言えるでしょう。私はいつも、スーツを購入するときは、デパートの開店と同時に行くようにしています。脳だけではなく体もまだ元気ですから、複数のお店を回って比較しながら判断することが可能だからです」(大江さん)
大江さんが話すように、普段の生活においても疲れているときの判断は、避けておくのがベストといえそう。海外旅行に限らず、お金を使うのは体も脳も元気な時間帯にしておきましょう。
■2:単価の高いものは小さいお店で買う
私たちは、日々さまざまな選択肢をチョイスすることを迫られています。買い物もイコール。さまざまなものを見比べ、ベストはアイテムを選んでいますよね。
ところが、散々悩んだのになぜか満足できない……。その原因は、選択肢の多さ。選択肢が多ければ多いほど、「チョイスしなかった選択肢のなかに、もっといいものがあったのではないだろうか」という不安にとらわれてしまうのです。
その代表例が家電製品。大型家電量販店には無数の製品が並んでいるため、購入後に後悔してしまうことが増えてしまうそう。それを防ぐためには、あえて選択肢の少ない小さなお店で購入するのがベストなのです。
「基本的に、製品の個体差が大きいものや単価の高いものは、小さなお店で購入したほうがいいと思います。典型的なのは楽器。その他、万年筆などの高価な筆記用具も、量販店での購入を避けるべきでしょう。単価の高いものの場合は、小さなお店でじっくり相談しながら購入するのがオススメです」(大江さん)
■3:オートチャージは使わない
交通費やちょっとした買い物の際に便利な電子マネー。ICカードにお金をチャージしておけば、ワンタッチで精算できるため、忙しい現代人にはピッタリのサービスでしょう。ところが、その便利さが無駄遣いにつながってしまうこともあるのです。
大江さんは、その最たるものがオートチャージだといいます。自分が使った金額を把握しづらいため、ついつい際限なく使いすぎてしまうのです。
「電子マネー自体は利用してもいいですが、オートチャージは避けるべき。ただ、便利なのでつい使ってしまいがちだと思います。お金を使うときの便利さというものはクセモノで、無駄遣いに歯止めがかからなくなってしまう恐れがあるのです。
それでもオートチャージを利用するのであれば、紐付けているクレジットカードの明細の中から、オートチャージ分を毎月書き出し、記録しておきましょう。レコーディングダイエットと同様に、記録をつけることで意識するようになりますから」(大江さん)
■4:保険加入ではなく貯金をする
「高まるリスクに備える、○○保険!」といったキャッチコピーに対し、大江さんは「とんでもない論理矛盾です」と断言します。
そもそも保険というものは、人生において滅多に起こらないことに対し、みんなで少しずつ出し合ったお金を回してあげる、という仕組みのサービス。つまり、高まるリスクと保険サービスとは、本来相反するものだというのです。
だからこそ、高まるリスクに備える保険は、結果的にかなり保険料が高くなっているケースが多いとも。そんなキャッチコピーに踊らされていると、結局損をしてしまいがちなのです。そのため、保険加入よりも貯金のほうがいいのだとか。
「そもそも、賢く保険サービスを利用する方法は存在しません。保険というものは、すべからく人生にとって無駄なものなので、大原則は何も入らないこと。その上で、どうしても必要なものだけを積み上げていきましょう。
たとえば、自動車を運転するなら自動車保険、家を建てたならば火災保険、幼い子どもがいて自分以外に収入がない場合には生命保険、というように。したがって、独身で車も持たず、家も賃貸の人は保険に入らなくてもいいのです」(大江さん)
■5:名前の長い金融商品に手を出さない
保険や投資信託には、やたら長くてわかりづらいネーミングのものがあります。そういったものを前にすると、大抵の人は「なんだかよくわからないけれど、すごそう……」といった、一種の思考停止状態に陥ると、大江さんは注意を促します。
そうなってしまえば、売り手の思惑通り。意味もわからないまま契約を結び、損をしてしまうのです。
やたら複雑なネーミングの金融商品には、仕組み自体が複雑なものも少なくありません。けれど、大江さんいわく、「金融商品はできるだけシンプルな仕組みのもののほうがいい」とのこと。そして、最終的に「よくわからないものは購入しない」のが大原則なのです。
「最大の問題は、保険などの金融商品は契約期間が長く、手数料も開示されていないため、利用者が損をしていることに気がつきにくいということです。世の中の多くの人々は、そういった状態に陥っています。これは、いわば低温やけどのようなもので、知らず知らずに蝕まれていっているのです」(大江さん)
今回、紹介したメソッドのもとになっているのは、大江さんが研究されている行動経済学。何気ない行動や選択肢のひとつが、損得の境目になっていると指摘しています。
「買い物においての少しぐらいの無駄遣いや衝動買いに対して、あまり目くじらを立てる必要はないと思います。けれど、怖いのは長期間にわたって金融商品を保有する場合。これから投資を始める、保険に加入するという人たちは、その本質を理解し、間違った判断をしないように、と願っています」
「なんだか得みたいだから」「よくわからないけど儲かりそう」といった、安易な判断な要注意。賢くお金を使うためには、正しい基礎知識と判断力を身につけていきましょう。
『「賢くお金を使う人」がやっていること』大江英樹・著 三笠書房刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 五十嵐 大