ファッションデザイナーのポール・スミスと、自動車のミニがコラボレーションで、「サステナブル」を主題にしたクルマを作りあげた。2021年8月12日にロンドンで公開されたそのモデル、名づけて「ミニ・ストリップ Mini  Strip」という。

ミニマルでサステナブルな仕掛けが満載

旧型のランドローバー90でもカラフルな特別仕様を仕立てたこともあるクルマ好きのポール・スミス氏。 
旧型のランドローバー90でもカラフルな特別仕様を仕立てたこともあるクルマ好きのポール・スミス氏。 
バンパーやチンスポイラーは取り外し可能なイメージでボルト留めが強調されている。
バンパーやチンスポイラーは取り外し可能なイメージでボルト留めが強調されている。

いっぷう変わった車名「ストリップ」の由来は、ストリップダウンなどの自動車用語に由来している(はず)。自分の乗ってる乗用車で出走するクラブマンレースの車両のように、バンパーとかグリルとかドアハンドルとか、走りに関係ないものは極力外してしまうスタイルだ。

今回のミニは、日本でも21年5月に発売になった最新のミニ3ドアをベースに、出来るかぎりストリップダウンしてミニマルに、しかしそれでいてオシャレに、というコンセプトで仕立てられている。

ポール・スミス氏が、オリバー・ハイムラー氏ひきいるミニのデザインチームとともに作りあげたミニ・ストリップ。まず、目をひくのが、塗装していない車体だ。ただし防錆のためにクリアコートを一層、塗っているそうだ。

リサイクルとかサステナブルという概念を工業製品に用いるとき、自分の手で分解と組み立てが出来たり、手もとにある素材を利用することなどが含まれる。そう考えたスミス氏は、ドアのプルハンドルなどにクライミング用のロープ、ステアリングホイールのリムは自転車のハンドルバー用のテープ、と従来になかったアイディアを提案。

ダッシュボードとドアのクラッシュパッド(衝突のときの衝撃緩和材)として天然コルクを使いつつ、車内がわのドアにはネットを張るだけにとどめて、内部の構造材が見えるようにしている。これもどことなく自転車っぽい考えのように思えるのだ。

ジャケットの裏地にも通じるチラリズムも

パースペクスのルーフからミディアムブルーに塗装された内部のフレームが見える。
パースペクスのルーフからミディアムブルーに塗装された内部のフレームが見える。
ロードホイールにはパースペクス製のカバーがかけられる。
ロードホイールにはパースペクス製のカバーがかけられる。

同時に、マルチカラーの色づかいが得意で、かつスーツなどで裏地にビビッドな色を使う遊び心を発揮するスミス氏の面目躍如たるデザインも。それは通常目に触れない車体内部の構造材をミディアムブルーで塗色したこと。

ルーフに大きく軽量アクリル板であるパースペクスをはめこんだことで、上からみると、ちらりとそのミディアムブルーの構造材が見える。風に吹かれたとき、あざやかなジャケットの裏地がちらと見えるのとどこか似ている。

「ミニをデザインするのに、私に声をかけてくれたことを、本当にうれしく思っています。ミニのデザイナーたちといっしょに、クルマの基本に立ちかえろうというつもりでコンセプトメーキングしました。それがなるべく多くの装備を削ぎ落とした(ストリップした)デザインとして実現しました」。スミス氏はコメントを発表している。

これまでにもローバー時代のミニで、ポール・スミス仕様を手がけ、外板色と、内装の一部を同じ色にするなど、そこでもファッションデザイナー的なセンスを発揮したスミス氏。今回のコンセプトはさらに踏み込んだものとして印象に残る。

ミニ・ストリップは、あいにく市販の予定はなし。そういえば、現行モデルにオプションで、色のグラデーション塗装がされているマルチトーンルーフが設けられるなど、遊び心を感じさせてくれるミニだけに、販売されたら人気が出そうなのだが。

ヘッド・オブ・ミニデザインを務めるオリバー・ハイムラー氏。
ヘッド・オブ・ミニデザインを務めるオリバー・ハイムラー氏。
ファブリック担当のデザイナーと素材を検討するスミス氏(中央)。
ファブリック担当のデザイナーと素材を検討するスミス氏(中央)。
この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。