食欲の秋、到来。旬の魚といえばサンマ!ですが、不漁のニュースがここ数年続いています。
実はサンマに限らず、日本の水産資源は長期にわたり減少中。水産物自給率は50%台なのです。この現状に危機感を抱く人たちが、各界で動き始めました。
『Precious』10月号では、「世界で、日本で、『サステナブル・シーフード』から考える食の未来」と題し、限りある水産資源を持続可能にするための世界中の取り組みを特集。
今回はその中から、東京・港区にある和食「てのしま」の店主、林亮平さんのサステナブル・シーフードへの取り組みについてご紹介します。
地元の人しか食べてこなかった魚にだって価値はある。都会の口の肥えた人においしく食べてもらうために知識をつけ、腕を磨くのが料理人に今、できること
東京に誕生した和食の新鋭「てのしま」。献立にはウッカリカサゴ、ガラエビ、ヒラ…となじみのない魚が、一般的な魚と並んで記載されています。
「静岡県焼津港近くの『サスエ前田魚店』、神奈川県長井港の仲買人・長谷川大樹さん、岡山県倉敷の老舗魚店『魚春』といった皆さんから届きます。初めて存在を知った魚も、この3年で、ひと通りは調理しました」と語る店主の林亮平さん。
昔から食べられているけれど、調理に手間がかかるなどの理由から流通に乗らない魚。この「未利用魚(みりようぎょ)」がサステナブルな視点から注目を集めています。未利用魚に意識を向ければ、特定の品種への人気集中を回避できる。それは乱獲が起こらないための一手になるのです。
静岡・焼津港で上がった「ウッカリカサゴ」。小ぶりで一尾丸ごと食せる「カサゴ」に比べると、頭が大きい割には身が小さく、可食部が少ない。そんな理由で市場に出ない魚も日本料理店「てのしま」では使う。皮付きのまま身をしゃぶしゃぶにするとプリッとしておいしい。
開店以来、未利用魚を意欲的に使う林さんですが、以前は京都の名店「菊乃井」に18年在籍。
「鯛は明石産で2キロ17センチといったこだわりを天然物に求める世界。今とは正反対です(笑)。それが成り立つシステムが京都の伝統にあるけれど、東京で僕が同じことをできるとも思えなくて」(林さん)
実際、当時の築地市場をのぞいたものの、買いたい人に対して魚の量が少なく、高値。
「自分の納得する魚を得るには、魚の産地に赴いて信頼できる人を見つけるしかない、と。地元の魚を分けてもらうなかで、未利用魚の味わい方を知っていったんですね」(林さん)
青魚の新しい味わいに目覚める瀬戸内産「ヒラ」の棒寿司。味はいいが小骨が多く敬遠されてきたニシン科の魚に骨切りを施すことで食べやすく。うま味が強いぶん、赤酢を効かせた寿司飯と相性がいい。
漁師と料理人をつなぐ「魚の目利き」が日本各地に増えることを期待する林さん。
「認知度の低い魚でも料理人がおいしく仕上げて、お客様から評価をいただく。この循環が広がれば、日本の海の状況も変わっていくと信じています」(林さん)
<店舗情報>
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てのしま
TEL:03-6316-2150
営業時間:17:00~20:00(18:00 L.O.)
定休日:日曜と不定休
料金:おまかせ¥15,000(要別途10%サービス料)のみ。※要予約
住所:東京都港区南青山1-3-21 1-55ビル2F
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※新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下では一部情報が変更となる可能性があります。公式HPなどでご確認ください。
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- PHOTO :
- sono(bean)
- EDIT&WRITING :
- 藤田 優、喜多容子(Precious)