イタリア料理の食前酒に欠かせないフランチャコルタの歴史は、イタリアワインの中でも比較的新しい。

現在われわれが知るフランチャコルタが誕生したのは1961年のことで、地元の11の生産者が集まって総面積29ha、20 万リットルのピノ・ディ・フランチャコルタを作り始めたのがそのはじまり。

以来「フランチャコルタの奇跡」と呼ばれるほど飛躍的な成功をおさめ、1995年にはイタリア・ワインの格付けの中では最高峰に位置するD.O.C.G(統制保証原産地呼称)の認定を受け、現在はブドウ畑の総面積3150haで1740万本を販売するほどにまで拡大した。

イタリアでも単に「スプマンテ」といってスパークリングワイン全体を混同してしまうことがあるがフランチャコルタを注文する際はフランチャコルタ、と正確に頼まないといけないのだ。

イタリア最高峰のスパークリングワイン

「アルベレータ」を所有するのはワイナリー「ベッラヴィスタ」オーナーのヴィットリオ・モレッティ氏。「ベッラヴィスタ」を訪れると自ら秘蔵の長期熟成フランチャコルタ「ヴィットリオ・モレッティ2008」を注いでくれた。その味わいたるや、いままで飲んだフランチャコルタの記憶を全て覆すほどの衝撃だった。

フランチャコルタの特徴はシャンパーニュ同様瓶内二次発酵を施し、複雑な香りを生み出す独特の官能特製にある。

ピノ・ビアンコ、ピノ・ノワール、シャルドネ、そして一部のみ使用が許されるエルバマットで作られるその黄金色の液体は、非常に細かくて長い持続性を持つ泡立ちが特徴。完熟した果実や時にはドライナッツの芳香が感じられ、舌触り非常に滑らかでシルキー。

食前酒としてだけでなく、これ一本で食中酒としても楽しめるのが他のイタリアのスパークリングワインとは異なるフランチャコルタたるゆえんだ。実際にミラノなど北イタリアのリストランテではパスタから魚まで、フランチャコルタ一本で通すのがスマートなスタイルともされている。

「ベッラヴィスタ」では瓶内熟成が終了したボトルは動瓶板に移され、職人が毎日1/8回転ずつさせて徐々にネック部分に酵母をためるデゴルジュマン(イタリア語でズボッカトゥーラ)が行なわれる。

穏やかな丘陵地帯にあるフランチャコルタは、かつて近郊のブレシアやベルガモに住む貴族や富裕層の避暑地として愛されて来た。

19世紀後半、弁護士ジョヴァンニ・カヴァッレーリがネオ・ルネッサンス様式で建てた邸宅は、音楽や芸術を愛した妻アンナの手によってその内部を美しく飾り立てられ、北イタリアでは有名な芸術家たちが集まる社交の場となったのだ。

隣接するワイナリー「ベッラヴィスタ」オーナー、ヴィットリオ・モレッティがこの邸宅を購入した後、1993年にはホテル「アルベレータ」として開業するが、当時のメイン・ダイニングはイタリア史上初めてミシュラン3つ星を獲得したヌオーヴァ・クチーナ・イタリアーナの旗手、グアルティエロ・マルケージによる「マルケージ」で、フランチャコルタから発信する新イタリア料理は当時一世を風靡したのだった。

周囲をブドウ畑に囲まれた「アルベレータ」では、風景を堪能しながらの食事がなにより贅沢。晴れた朝にはイセオ湖が見えるテラスでコラツィオーネ(朝食)を。

現在の「アルベレータ」には4つのレストランがある。まずはメインである「レオーネ・フェリーチェ」はファイン・ダイニング系でファビオ・アッバティスタがシェフをつとめる。「ヴィスタ・ラーゴ・ビストロ」はイセオ湖が見えるテラスにあるカジュアル・ダイニング。

こちらはスパゲッティやタリアータなど、シンプルなイタリア料理を楽しみたい。「ラ・フィリアーレ」は南イタリアのカリスマ・ピッツァ職人フランコ・ペペがプロデュースしたグルメ・ピッツァが食べられる。いずれもフランチャコルタにあう料理がセレクトされているので、ここでは思う存分フランチャコルタとイタリア料理のマリアージュを堪能したい。そしてもうひとつはダイエット・メニューを完備した「ベネッセレ」。

ここはダイエットとデトックス専用レストランなので、フランチャコルタをあじわうために昼は軽く、という使い方も可能だ。

メニュー・デグスタツィオーネから「コウイカの地中海風」。薄切りにしたコウイカと薄いフィルム状にしたトマト・ペースト、味わいはしっかりと南イタリア。

「アルベレータ」は客室が全38室、全ての客室はインテリアが異なるため、滞在する度、毎回趣が異なるステイを体感できる。

中でも半分の19室がスイートで、開閉式の屋根を持つ「カブリオレ・スイート」や眺めのよい「スイート・ベッラヴィスタ」、塔の中にある「トーレ・デル・ラーゴ・スイート」などがある。美しいブドウ畑を眺めながらフランチャコルタを開け、その芳潤な味わいと洗練された料理を堪能。

そして、夜はイタリアン・クラシックのインテリアに囲まれたスイート・ルームで眠る。都会の暮らしとは180度異なる極上ステイを満喫できるだけにリピーターが多いのもうなづける。

今回滞在したジュニア・スイート。ヨーロピアン・タイプのファブリックで統一された女性的なインテリア。午後に寛ぎながらフランチャコルタを開けるも旅先ならではの時間。
この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には最新刊「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」刊行予定。