今年でブランドスタート20周年を迎える、日本のシューズブランド『三陽山長』。創業以来一貫して、日本の高い製靴技術を反映した靴づくりを追求しているが、その集大成として2021年3月にプレステージライン「謹製」シリーズを発表し、好評を博した。そして先日9月23日にその第二弾が登場。高品質な素材を使い、細部にまで配慮されたつくりは、欧米の高級既製靴とは一線を画す存在感を備えている。
フレンチカーフのドレッシーな質感
今回展開されるのは、『三陽山長』の中でも高い人気を誇る、キャップトウオックスフォード(ストレートチップ)の「匠一郎」とエプロンフロントダービー(Uチップ)の「勘三郎」、2モデルのプレステージライン仕様と、新作のジョッパーブーツ「定九郎」の3種。それぞれのハーフソック(靴内側踵部の半貼り)には、ビスポークシューズに近いクオリティを追求していることを示す「特別誂靴」と刻印されている。
日本の製靴産業の集積地、浅草の老舗シューズファクトリーが手がけているこのプレステージライン。製法こそグッドイヤーウェルト製法(専用のミシンを使ったつくり方)だが、随所に熟練した職人の手仕事や技術が盛り込まれている。靴のコバ部分(ソールとアッパーとの間の張り出し部)は「矢筈仕上げ」と呼ばれる仕様になっていて、コバのボリューム感を抑えながら、エッジを際立たせている。また踵部分は縫い目のない「シームレスヒール」で、より均質な革を選ぶ必要がある一方で、つり込みなど靴づくりにおいても高い技術が求められる。さらにアッパーは通常の『三陽山長』の靴以上に細かなピッチのステッチで縫われていて、靴全体に端正な雰囲気をもたらしている。
靴を構成する革素材は、海外の高い品質のものが選ばれている。アッパーの革にはヨーロッパのトップメゾンにも革を提供しているフランスの老舗タンナー『HAAS(ハース)』のボックスカーフを採用。アウトソールにはこちらも老舗であるドイツ『MARTIN(マルティン)』の、樫のタンニンで鞣されたオークバークベンズを使っている。
リモートワークの普及などでスーツや革靴の出番が少なくなったと言われて久しい。その一方で「新しい日常」に向けて、自身にとって真に価値あるものを求める機運も高まっている。長らく欧米ブランドの独壇場だった高級紳士靴シーンの一角に食い込み、メイド・イン・ジャパンの魅力を打ち出し支持されている『三陽山長』。同ブランドの粋を極めたともいえるこの「謹製」シリーズは、そのオーセンティックなスタイルと高い品質ゆえ、長く愛用できる一足となりうるだろう。またそのことは、昨今取りざたされているサステナブルという観点においても、有効かもしれない。
※価格はすべて税込みです。
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- MEN'S Precious編集部
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- EDIT&WRITING :
- 菅原幸裕