バラの原産地は北半球の温帯の地域。19世紀初頭にナポレオンの最初の妻、皇妃ジョセフィーヌが溺愛したことでも知られる、まさに花の女王。母の日の代名詞カーネーションは南ヨーロッパや西アジアが原産地。日本での栽培は明治末期に小さな温室で始まったと言われています。黄色や白の可憐な花を咲かせるフリージアの生まれ故郷は南アフリカ。イギリスやオランダで品種改良が進められ、日本には江戸末期に入ってきました。
今では花屋の店先に一年中並んでいる人気の高い定番の花たちも、そのルーツを辿れば、ほとんどが遥か昔に海を渡って日本に渡来しているのです。
華やかな姿を長く楽しむことができる秋のダリア
今回、アレンジの主役として提案するダリアも、原産地はメキシコやグアテマラ一帯。日本に入ってきたのはフリージアと同様に江戸末期で、付いた和名は天竺牡丹(てんじくぼたん)。天竺とはインドのことですが、日本にはオランダから渡来しています。昭和の頃までは庭植えの花でしたが、品種改良が進んで数々の品種が生まれ、花姿も花色もバリエーションが豊富なった今は、アレンジの主役として欠かせない花になっています。
ダリアは四季を通して店先に並んでいますが、秋は色のりと花持ちがいい品種が流通。恵比寿「GINKGO」のオーナー・フローリスト山岡まりさんによると、ダリアの華麗な花姿を長く楽しむには、クーラーも暖房も入れずに過ごせる秋は絶好の季節だということです。
和の趣が漂う枝ものを脇役にした和洋折衷のアレンジにトライ
毎年、たくさんの品種がデビューするダリアは、花の大きさも、花びらの形も様々。そんな中から山岡さんが選んだのは、もっともダリアらしいスタンダードな花の咲き方であるフォーマルデコラ咲きの1本。一輪挿しでも十分に楽しめるボリューム感があるのですが、ここでは、外国から渡来したというダリアのルーツに因んで、和洋折衷のアレンジにトライ!
糸のように細い枝に赤い小花をまばらにつけた、和風の趣をもつ枝ものであるミズヒキに脇を固めてもらうことにしました。最近ではアレンジ用の花材として花屋で扱われているミズヒキですが、北海道から沖縄まで、日本のほとんどの地域の山や雑木林に生えている身近な植物。進物用の包み紙を結ぶ時に用いる細い紙縒(こより)の「水引」が名前の由来になっています。
ミズヒキの他に、和洋折衷のアレンジに使うなら、庭木としてもお馴染みのドウダンツツジや秋の七草のひとつフジバカマもおすすめ。どちらも生け花にも使われる和の趣が漂う花材です。
さて、華やかなダリアを主役にした和洋折衷のアレンジ。日中は窓から差し込む光で華やかさを楽しみ、日が暮れたらウイスキーやブランデーを飲みながら秋の長い夜を楽しみたい。そんなひとときのためにテーブルの近くに置いておくのがいいでしょう。
問い合わせ先
- TEXT :
- 堀 けいこ ライター
- PHOTO :
- 島本一男(BAARL)
- COOPERATION :
- GINGO
- 参考書籍 :
- 「花屋さんに並ぶ植物がよくわかる 「花」の便利帖(KADOKAWA)」