架空の設定とはいえ、清廉潔白で完璧なキャラクターはどこか鼻白むばかりで憧れには程遠い。その点、現在『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が大ヒット中の主人公、ジェームズ・ボンドは魅力に溢れている。屈強な難敵に立ち向かう格闘技の達人でありながら、尿酸値過多やリウマチなどの健康面に不安を抱えるばかりか、アルコール依存症の気まである。それでも任務を遂行する八面六臂のアクションには心奪われるし、「ウィンザーノット」を好まないというファッションに対して一家言持つあたりもファッション好きとしてはたまらない。クールかつウィットに富んだキャラクターは、等身大とは言えないが、大いなる憧憬を抱かざるを得ない。
『007』の作品背景やキャラクター設定を盛り込んだこだわりのデザイン
リブ編みのセーターは肩や肘にキャンバスパッチをあしらった、所謂コマンドニットタイプ。ネックにもリブを配した一般的なデザインとは異なり、首元にはドローコードがあしらわれており、開き具合もボートネックのような仕様となっている。これは、ボンドとイギリス海軍との関係を密接に反映した海上服に倣ったもので、『007』ファンやシネフィルをも唸らせるストーリー性のあるディテールだ。
こういった作品の背景を理解した緻密なこだわりは、現役のコスチュームデザイナーが協力しているからこそと言えよう。サイズ感も程よく身体に沿ったフィッテイングで、アウターの下に着てもかさ張らないのも嬉しい。国内では英国ブランドを数多く扱うヴァルカナイズ・ロンドンのみで限定展開。希少性に価値を見出すほど若くはないが、ジェームズ・ボンドが劇中で着用したとなると何やら俄然手に入れたくなる。
問い合わせ先
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
Faceboook へのリンク
Twitter へのリンク
- PHOTO :
- 多田 悟(Rooster)
- STYLIST :
- 仲唐英俊(TABLE ROCK.STUDIO)
- WRITING :
- 佐藤哲也