究極のSUVともいえる、どんな道でも走破してしまうクロスカントリー型オフローダー。英国にはランドローバー、米国はジープ、ドイツならメルセデス・ベンツGクラスと、各国に代表選手が存在する。日本では、トヨタ・ランドクルーザーを措いて他にはないだろう。
ドバイでは砂漠の女子会にも重宝される
ランドクルーザーは、世界で170の国と地域で使われている実績を持つ。なにしろ「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」を標榜しているのだ。中東などに行くと、砂漠のなかで使われている姿をよく見かける。砂や泥が似合うボディといい、男心をくすぐるクルマだ。
ユニークなのは、私がドバイで見かけた使われかただ。あちらでは夕方になって気温がすこし下がると、富裕層の夫人がたがみずからステアリングホイールを握って、三々五々、砂漠のなかにある公園のようなスペースに集まる。そこでお茶を飲みながら“女子会”を開くようで、ランドクルーザーが多い。
ドバイのランドクルーザーを見ていると、レンジローバーやポルシェ・カイエンと並ぶ、クラッシーなクルマと認められているようだ。2021年8月にフルモデルチェンジを受けた新型ランドクルーザーは、快適装備と、エレガントな雰囲気をしっかり身につけ、海外のライバルと比肩しうる存在感なのだ。
あたらしいランクルは全長4.9メートルのボディに、2.85メートルのホイールベースの組合せ。これはほぼ従来型とおなじ。競合のなかだと、新型ディフェンダー110(全長4.9メートル、WB3.02メートル)や、メルセデス・ベンツGクラス(4.66メートル、2.89メートル)などと真正面からぶつかるサイズだ。
どこまで走っても疲れない確かな乗り心地
ランクルは、さきに触れたとおり、本格的なクロスカントリー型4WDであることを是としているので、一般的なモノコックより堅牢性が高いラダーフレーム型シャシーを採用。Gクラスと同様だ。
エンジンは2種類。3.5リッターV型6気筒ツインターボガソリンエンジンと、3.3リッターV型6気筒ツインターボのディーゼルだ。前者は最高出力305kW(415ps)、最大トルク650Nm、後者は227kW(309ps)と700Nmと、いずれも数値ではかなりのもの。
強烈なオフロードコースで試験されているというものの、あいにく私はまだオフロードで試していない。ただ、今回は一般道での快適性も重視、どこまで走っても疲れないクルマに仕立てたかった、と開発陣が述べるように、一般道での印象は、驚くほど安逸だった。
ガソリンエンジンは、トルクがたっぷり出るので、アクセルペダルをあまり踏み込まなくても、じゅうぶん速い。乗り心地はいわゆるクロカン型4WDによくある、フワフワッとしたかんじはなく、乗用車的にびしっとしている。
加えてステアリングホイールへの反応も意外なほどよいうえに、静粛性も全体的に高く、なるほど、たとえば東京から名古屋までいっきに走っても、おそらく疲労感はなさそうだ。専用チューニングされたJBLのいい音を聴いて走っていると、これがランクルかあと、いい意味で違和感すらおぼえるほど。
手に入るだけでも幸運?な存在
試乗したのはガソリンエンジン版が、ぜいたく仕様の「ZX」。いっぽうディーゼルは、開発者が「これがいちばんのお勧め」と言う「GRスポーツ」を試した。GRはクルマ好きのひとならご存知のように、GRヤリスやGRスープラなど、メルセデス・ベンツでいえばAMGに相当するといえばいいのか、トヨタ傘下のスポーツ車部門。
外観も専用グリルなど持っていて、メルセデス・ベンツGクラスでいえば、走りに特化したAMG仕様にあたるもの?と思うひともいるだろう。じっさいはスポーツ仕様といっても、このクルマのばあい、苛酷なラリー(ダカールラリ−)からのフィードバックを最大限活かした仕様だ。
とりわけ、車輪の接地性と、それにともなう駆動力の伝達を重視した専用サスペンションの採用など、悪路でも安心してがんがん走っていける性能がセリングポイントという。試していないので、伝聞形式で申し訳ないのですけれど。
ディーゼルエンジンはものすごく太いトルクで、アクセルの微妙な踏み込みに対してボディの反応がいい。オフロードでは大事な要素である。街中で乗るには、ややディーゼル音が耳につくけれど、GRスポーツは機能製品なので、このぐらい我慢すればいいだろう。
問題は納期。トヨタ自動車のホームページをみると、「今からご注文いただく場合の納期は2年以上となる見込みです」とある。いっぽう、Gクラスなどは「在庫僅少につきご購入いただけない場合がございます」なんて掲載されている。乗れることじたいが幸運な、本格的クロカン4WD。そこも魅力、なのだろうか。
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- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト