雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、一般社団法人「水辺ラボ」代表理事 杉本容子さんの活動をご紹介します。

杉本 容子さん
一般社団法人「水辺ラボ」代表理事
(すぎもと ようこ)神奈川県生まれ。大阪大学大学院工学部で環境工学を学ぶ。コンサルティング会社に勤務後、’11年に独立。「ワイキューブ・ラボ」を設立。水辺のまちづくりを得意とし、「水都大阪」の都市開発プロジェクトに携わる。

水都大阪で進む水辺のまちづくり人が生き生きと暮らせる社会に

大阪の都心部には、4つの川が「口」の形になった「水の回廊」と呼ばれる運河が流れている。南側が道頓堀川。東側が、杉本さんが公私にわたり深く関わる東横堀川だ。今夏、その一角の本町橋エリアに、「β本町橋」というパブリックスペースを立ち上げた。

「ひと言で説明すると『船着きハイブリット公民館』。川沿いの公園や川の上での遊びも案内しますし、売店、レンタルルームもある。キッチンや屋台の貸し出しも行っていて、小さなお店を出すこともできます。ここが、地域の人たちの出会いの窓口になって、そこから新しいことが始まれば、と」

杉本さんの本業は、まちづくりや都市計画のコンサルティング。

「SDGsってまちづくりと同じだと思うんです。建物や組織をつくることではなく、人が生き生きとしていられる、まちが『持続的に』『生き生きする』ことが、まちづくりの目的だからです。私自身、仕事を通じてまちに関わり、受け容れられ、育ててもらいました。

でも今、若い人たちを見ていると、経済的にも社会的にもとても苦しい状況で、まちとの接点がもてる場所もほとんどないんですよね。家庭でも学校でもない、まちの中の余白、空き地のような居場所。その役割を、公共の空間で担うことができたらと」

「β本町橋」の運営は、杉本さんが代表を務める地域コミュニティをベースにした一般社団法人。行政がつくる『箱』ではなく、地元の人たちによる公共施設なのだ。15年前は「暗くて怖い」と言われたエリアが、今や、「水都大阪」(※)の未来を生み出す場所に。

「オランダのように、川沿いに自家用船が並ぶ東横堀川を実現するのが夢です」(杉本さん)

【SDGsの現場から】

●コンサルティング会社のオフィスも自宅兼で働きやすく

インタビュー_1
自宅兼仕事場は木津川沿いに。1階がオフィス。地域のお母さんと働き方の勉強会なども行う。

●「β本町橋」は気軽に立ち寄れる新しい形の公民館

インタビュー_2
東横堀川沿いの船着き場のある公園施設。地域活動の延長として’21年8月に立ち上げ。

※水都大阪とは…世界でも稀な、都心を囲む水の回廊を中心に、水辺のライフスタイルを提案する、公民連携のオール大阪の取り組み。’01年から本格スタート。

PHOTO :
香西ジュン
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
木佐貫久代