雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「トーへ ソーシャルエンタープライズ」CEO ファン・タン・ヴァンさんの活動をご紹介します。

ファン・タン・ヴァンさん
「トーへ ソーシャルエンタープライズ」CEO
ハノイのジャーナリズムコミュニケーションアカデミー大学在学中からNGOやボランティア活動に携わり、そのなかで「トーヘ」に出合う。卒業後、「トーヘ」に入社、マーケティングやイベント準備などを担当する。’13年より現職。

成長著しいベトナム経済のなか障がい児や孤児をアートの力で幸せに

孤児や、障がいのある子供たちを、アートを通して支援する会社「トーヘ」。’13年からCEOを務めるヴァンさんは、創業者の「モノを売るだけでなく、幸せを届けたい」という理念に共感して入社。

「ベトナムは、1970年代まで戦争していたということもあり、社会的にもアートへの興味、関心はまだあまり高くはありません。障がい者に対する理解や教育支援(※)なども、ここ10年ほどでようやく進んできたという状況です。そんななか、『トーヘ』では’06年から、アートを通した事業を展開してきました。

ひとつは、障がいがある子供や孤児に社会進出のきっかけをつくるワークショップやイベント。ワークショップはアートに触れ、楽しむことを知るクラス、専門の先生が教えるレッスンクラス、そして刺繍などの技術を身につけるクラスに分かれています。

そして、そこから生まれた作品やアイテムを商品として販売。売り上げの一部は子供たちに還元しています。さらには、健常児も含めて、アートに触れる機会を増やしていく教育活動も行っています」

「トーヘ」の店舗には子供たちの作品をアレンジした100点を超える商品が並んでいる。

オンラインでも販売されており、コロナ禍前は東京ギフトショーにも出店していた。日本のほか、韓国やマレーシアでも取り扱いがある。

「10年近く契約している知的障がいをもつ男の子の作品は、ひと目で彼だとわかる独特のセンスが魅力。平面の絵をぬいぐるみにしたんですよ。今では『トーヘ』の人気グッズです。目指すのはアートによる経済と社会の両立。GDP(国内総生産)ばかりではなく、GNH(国民総幸福量)を大切にする、ハッピービジネスです」(ヴァンさん)

【SDGsの現場から】

●10年以上制作活動を見守っている唯一無二のアーティスト

インタビュー_1
知的障がいを抱えるヴァン・ミン・ドゥック氏の作品。ひと目で彼の作品とわかる独特のセンス。

●自閉症の子供たちの無垢な世界を共有するトーヘ主催の美術展

インタビュー_2
特別アートクラスの、自閉症を抱える若い作家の作品を展示。’21年は7回目の開催。

※ベトナムの教育支援とは…養護学校やろう学校、盲学校といった障がい児のための教育機関は、’10年代から少しずつ整備。美術館やギャラリーも増えている。

PHOTO :
Mai Trung Thanh
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
Kaori Soma
通訳 :
Hoang The Huynh