年齢を重ねるほど安楽なものを求めるのは、社会人としての責務が大きくなることからくる、ゆとり願望なのか。それとも少しずつ老化していくフィジカル面が原因なのか……。日本ではクルマ選びでもそうした傾向が強く見られ、行き着く先はゆとりと快適性に長じたサルーンという考えが浸透している。だが、自動車文化発祥の地である欧州では、大人がスポーツカーを駆ってレイクビューのレストランに行ったり、リゾートホテルに滞在するライフスタイルが浸透している。年齢に縛られず、むしろ自身の成長を楽しむかのようなカーライフは、我々も大いに参考にしたいところだ。

そこで、紳士発祥の英国で誕生したブランドであり、また卓越したスポーツ性能とリゾートライフに必要な機能を兼ね備えたマクラーレンGTをパートナーに選び、東京から富士五湖を目指す現実的な週末旅を実践。そこで見えてくるスポーツカーの本質や楽しみ方を2回にわたって紹介しよう。

編集スタッフと交代でステアリングホイールを握るのは、モータージャーナリストの飯田裕子氏。スポーツカー=男の遊び道具という固定概念にとらわれない現代への即応性、そして彼女が幼少の頃から体験してきた豊かなライフスタイルの知見が参考になれば幸いだ。

ぶれない志を貫いて10年! マクラーレンのロードカー戦略

マクラーレンのロードカーを手がけるマクラーレン・オートモーティブが初の量産車「MP4-12C」をリリースして10年。今では「アルティメット」「スーパー」「GT」のカテゴリーで個性的なスポーツカーを揃える。
マクラーレンのロードカーを手がけるマクラーレン・オートモーティブが初の量産車「MP4-12C」をリリースして10年。今では「アルティメット」「スーパーカー」「GT」のカテゴリーでそれぞれ個性的なスポーツカーを揃える。
「マクラーレンGT」のステアリングを握る飯田裕子氏。「手足のほんのわずかの動きに対し正確に追従するので、誰もが気持ちよく走れます」
「マクラーレンGT」のステアリングを握る飯田裕子氏。「手足のほんのわずかの動きに対し正確に追従するので、誰もが気持ちよく走れます」

モータースポーツの最前線で培った技術を元に圧倒的パフォーマンスを誇るロードカーを生み出すマクラーレン。2021年、ロードカー部門のマクラーレン・オートモーティブは10周年を迎え、初の量産型プラグインハイブリッドカー「アルトゥーラ」を発表するなど、時代を見据えたクルマ作りに余念がない。

また、圧倒的パフォーマンスを実現しながら、乗りやすさと実用性を備えているのもマクラーレンのクルマ作りの特徴。なかでも「マクラーレンGT」は開放的なキャビンと背後に広い荷室を備え、車体前方のトランクと合わせればロングツーリングにも対応する。GT(グランドツアラー)として、スポーツカーとして、ライフスタイルを豊かにする可能性を、現実的な1泊2日のロングツーリングで体験した。

同行したのは、モータージャーナリストの飯田裕子氏。東京から片道100km圏にある富士五湖を目指しながら、マクラーレンのロードカーに共有する特徴をうかがった。

「マクラーレンGT」が乗り手をリラックスさせる理由

「マクラーレンGT」を運転していると、腰から下がしっかりして抜群の安定感であることが伝わってきます」(飯田氏)
「マクラーレンGT」を運転していると、腰から下がしっかりして抜群の安定感であることが伝わってきます」(飯田氏)
「ことさらに主張しないのは内装も同じ。機能的でシンプルなデザインにまとめているので、運転中の操作は快適です」(飯田氏)
「ことさらに主張しないのは内装も同じ。機能的でシンプルなデザインにまとめているので、運転中の操作は快適です」(飯田氏)

編集部 「マクラーレンGT」を運転していると、とてもリラックスできます。都心の一般道で運転しても肩に力が入ることなく、取り回しがしやすい印象でしたが、首都高速道路から中央自動車道を下る高速ドライブでは、ひらひらりと軽い感じでリズミカルに走れて、気持ち良さは格別です。

飯田 マクラーレンのロードカーは、いずれもボディの骨格にF1由来のカーボンファイバー素材を使っています。モデルによって構造は異なりますが、「マクラーレンGT」には「モノセルII-T」というシャシーが採用され、抜群の高剛性と軽さを誇ります。体幹がしっかりしているため、エンジンや足回りの性能が存分に発揮され、ドライバーはそれを気持ちよさとして感じられるんです。

編集部 優れた運動性能を発揮するためのセッティングのセンスというか、ノウハウにも長けていないと、これほどストレスフリーなスポーツカーは作れませんよね?

飯田 その通りです。癖がなく、疲れ知らずで乗り手を選ばず、スタイルも美しい「マクラーレンGT」は、旅に行けるGTをお探しの方にぴったりの一台だと思います。

よくできたスーツのように体にフィットして美しい

テスト車両には、オプションのエレクロミックパノラマルーフが装着されていた。外光の透過率を変えることができ、自然感のある場所では太陽の存在を感じながら走れる。
テスト車両には、オプションのエレクトロミックパノラマルーフが装着されていた。外光の透過率を変えることができ、自然感のある場所では太陽の存在を感じながら走れる。
「マクラーレンGT」では、移転した集落の跡地に茅葺き民家を復元した施設「西湖いやしの里根場」(住所:山梨県南都留郡富士河口湖町西湖根場2710 TEL:0555-20-4677)も訪れた。日本の伝統家屋、原風景とも調和するのは、自然界にインスピレーションを受けてデザインされたことも影響しているのだろう。
「マクラーレンGT」では、移転した集落の跡地に茅葺き民家を復元した施設「西湖いやしの里根場」(住所:山梨県南都留郡富士河口湖町西湖根場2710 TEL:0555-20-4677)も訪れた。日本の伝統家屋、原風景とも調和するのは、自然界にインスピレーションを受けてデザインされたことも影響しているのだろう。

編集部 よくできたスーツは着る人の姿を美しく見せ、動きを制限せず、疲れにくいのですが、飯田さんのお話は、そうした服飾の世界にも通じるものがあります。

飯田 体にフィットしたスーツを着ている男性を見ると所作も含めて格好良く見えますが、ちゃんと理由があるんですね。

編集部 はい。究極はロンドンのサヴィルロウでのビスポークですが、老舗テーラーでは時間と手間をかけて完璧にフィットするスーツを仕立てます。そのうえ、お店ごとに「ハウススタイル」という独自の個性があり、長年培った技術と流儀によって他では味わえない雰囲気を手に入れることができます。

飯田 「マクラーレンGT」を含め、マクラーレンのロードカーは鳥の羽や水滴が落ちる様子など、自然界からインスピレーションを得てデザインされているそうです。これ見よがしなところがなくエアロ効果を発揮する美しいスタイリングは、マクラーレンの「ハウススタイル」と言えますね。

自然界にヒントを得た造形だからリゾートにも馴染む

ドライブモードは「H」(ハンドリング)と「P」(パワー)をそれぞれ「ノーマル」「スポーツ」「トラック」から選べる。「走行状況に合わせて足回りを引き締めたりできるので、よりマクラーレンの優れた路面追従性を楽しめます」
ドライブモードは「H」(ハンドリング)と「P」(パワー)をそれぞれ「コンフォート」「スポーツ」「トラック」から選べる。「走行状況に合わせて足回りを引き締めたりできるので、よりマクラーレンの優れた路面追従性を楽しめます」
参考までに、今回のロングツーリングで着用した男性編集スタッフの着用アイテムを紹介する。着用したまま運転することを念頭に置いた、中綿入りのライダースジャケットを軸に、ウールパンツとブランケット代わりにもなる大きめのカシミヤストールでコーディネートした。※すべてスタッフ私物
参考までに、今回のロングツーリングで着用した男性編集スタッフの着用アイテムを紹介する。着用したまま運転することを念頭に置いた、中綿入りのライダースジャケットを軸に、ウールパンツとブランケット代わりにもなる大きめのカシミヤストールでコーディネートした。※すべてスタッフ私物

飯田さんと語り合いながらのドライブは、約1時間半で高速道路の降り口である富士河口湖インターを経て、晩秋の河口湖を目にしながらの優雅な時間へと続く。

編集部 自然が多い場所に来てみると、「マクラーレンGT」が決して違和感のない存在であることがわかります。それは、自然界からインスピレーションを受けたスタイリングであることが理由かもしれませんね。

飯田 そうですね。クルマを止められる場所で降りて眺めると、景色に馴染んでいる実感があります。マクラーレンの他のどのモデルよりも長い約4.7mのボディは広い空間を作り出すためのものでもあるのですが、流線型のシルエットが際立っていますね。

編集部 ロングツーリングの感動を深める上で、それはとても重要なポイントだと思います。エレガンスを漂わせながらの旅が大人の週末時間に花を添え、色褪せない思い出となる。「マクラーレン=サーキット走行」というイメージを抱く人は多いと思いますが、それほどのスポーツカーで旅に行く贅沢、そして得られる感動は計りしれません。

【マクラーレンGT】
ボディサイズ:全長×全幅×全高=4,685×1,925×1,215/1,234mm
車両重量:1,483kg
駆動方式:MR
トランスミッション:7速SSG
エンジン:V型8気筒ツインターボ、3,994cc
最高出力:456kw(620PS/7,500rpm)
最大トルク:630Nm/5,500~6,500rpm
¥26,950,000(税込)

問い合わせ先

マクラーレン・オートモーティブ

この記事の執筆者
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マクラーレン・オートモーティブ、編集部