1973年に初登場した「アディダス」の『スタンスミス』は、全米オープンやウィンブルドンで優勝を飾った往年の名テニスプレイヤー、スタンレー・ロジャー・スミスこと、スタン・スミス氏の名を冠したシグネチャーモデル。しかし、その源流を辿れば71年に登場した『ハイレット』というテニスシューズが先にあり、スタン・スミスも同モデルを好んで履いていたことや、先述の功績を讃えてモデル名も『スタンスミス』に変更されたという。その後、一時期インラインのコレクションから外れていたが、2014年に復刻を果たすとさらに人気が再燃、今ではスニーカー史に名を残す傑作と言っても過言ではないだろう。
通気口で“スリーストライプス”を表現したアイコニックなディテール
今回ピックアップしたオリジナルデザインとベルクロ仕様のシューレースレスモデルは、共に「アディダス オリジナルス」独自の高性能リサイクル素材「プライムグリーン」を採用したもの。これは、同ブランドが掲げる「2024年までにバージンポリエステルの使用を取り止める」というマニフェストに準じたもので、アッパーの50%をリサイクル素材で構成し、バージンポリエステルに関しては一切使われていない。なお、アウトソールも廃棄ゴムから作られており、環境に配慮したサステナビリティは細部にまで息衝いている。素材はエシカルにアップデートされたが、『スタンスミス』を象徴するパーフォレーション(通気口)で表現したスリーストライプスや、シュータンにプリントされたスタン・スミス氏の肖像画はもちろん健在だ。シンプルなトゥデザインに象徴されるシャープなシルエットは、汎用性が高く、個人的にはジャケットスタイルに最も似合うスニーカーではないかと考える。春夏のリネンジャケットや秋冬の起毛感のあるウールジャケットなど、季節を問わないだけでなく、ひとつ取り入れるだけでたちまちこなれ感を演出できるスニーカーは、『スタンスミス』をおいて他にはない。
一方のベルクロタイプは、長年オリジナルの陰に隠れていたが、かつて藤原ヒロシ氏が紹介したことで一気に火がついた1足。脱ぎ履きしやすい利点以上に、愛嬌のある独特のフォルムは、装いに洒脱なニュアンスを添えてくれる。
最新の『スタンスミス』は、変わらない良さに加えて時代に即した変化を果敢に取り入れたまさしく進化する名作と言えるだろう。
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- MEN'S Precious編集部
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- 仲唐英俊(TABLE ROCK.STUDIO)
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- 佐藤哲也