2017年11月27日に日本で受注開始されたジャガー「XFスポーツブレイク」。その名の由来は狩りのためのシューティングブレイクである。それだけにパーソナル性の高いすぐれたワゴンなのだ。日本の道で見かけるようになるのはもう少し先になるが、ここでは、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏による海外試乗の模様をお届けしよう。余暇を楽しむことに情熱的な紳士なら、きっと購入の参考になるはずだ。

英国紳士はシューティングブレイクを作り、ジャガーが完成させた

英国のクルマはおもしろい。ランドローバーが貴族のエステートと結びついていたり、ある種のステーションワゴンが狩りと結びついていたり。
英国のクルマはおもしろい。ランドローバーが貴族のエステートと結びついていたり、ある種のステーションワゴンが狩りと結びついていたり。

 ジャガーのニューモデル、「XFスポーツブレイク」は、狩りのための馬車、シューティングブレイクを起源に持つモデルといってよい。
 英国ではとりわけ好まれるジャンルがシューティングブレイクだ。ベースになるのは、ジャガーやアストンマーティン、フェラーリもある。
 富裕層はパワフルでスタイリッシュなクーペを購入して、それに鉄砲などを入れられる荷室を改造してつけるよう架装業者に発注するのだ。それが英国男の楽しみといってもよい。
 ジャガー「XFスポーツブレイク」はそんな伝統のうえに開発されたモデルだという。ベースは同社のスポーツセダンとして知られる「XF」。
「とにかくスムーズに面がつながるように心を砕いた」
 担当したデザイナーがそう語ってくれたように、セダンのイメージとはまったく違う躍動感のあるスタイルが「XFスポーツブレイク」の大きな魅力だ。

「運転を楽しんで!」というつくり手の思いが伝わってくる

1997cc4気筒ガソリンエンジンは184kW(250馬力)の最高出力と365Nmの最大トルクを発生する。
1997cc4気筒ガソリンエンジンは184kW(250馬力)の最高出力と365Nmの最大トルクを発生する。
全長4965ミリ、全幅1880ミリ、全高1495ミリでホイールベースは2960ミリと余裕あるサイズ 。1999cc4気筒ディーゼルエンジンは132kW(180馬力)と430Nmと比較的太いトルクを発生する。
全長4965ミリ、全幅1880ミリ、全高1495ミリでホイールベースは2960ミリと余裕あるサイズ 。1999cc4気筒ディーゼルエンジンは132kW(180馬力)と430Nmと比較的太いトルクを発生する。

 日本に入ってくるのは、250馬力の2リッター4気筒ガソリンエンジン搭載の「XFスポーツブレイク・プレスティッジ」と、180馬力の2リッター4気筒ディーゼルエンジンの「XFスポーツブレイク・プレスティッジ」。
 ともに後輪駆動で、ギアボックスは8段オートマチックだ。通常時は565リッター、後席シートを折りたたむと最1700リッターの積載量を持つ。
 リアサスペンションには積載物の重さに合わせて車高を上げてシャシーを水平に保つセルフレベリング機能がつく。
 快適装備としては、運転席から天井付近に軽く手を振るだけでパノラミックサンルーフの開閉が可能なジェスチャー・ルーフブラインドも注目の新装備だ。
 ガソリンエンジン搭載の「XFスポーツブレイク」に試乗したのはポルトガル第二の都市ポルトの近郊。山の斜面にワイン用ブドウ畑が広がる一帯を縫うワインディングロードと高速道路が中心のコースを走った。
 おおづかみの印象としては、運転を楽しませることを主眼に開発されたクルマだ。中速コーナーでは車両のノーズが軽くイン側に入り、車体を後輪が力強くプッシュしていくかんじが気持ちよい。
 ワインディングロードではしっかりしたサスペンションの恩恵を強く感じる。コーナーでは後輪の外側がすっと伸び、操舵感も軽く自然な姿勢で曲がっていく。
 じつはそのとき乗ったのは日本仕様とちがい、もっともスポーティな「Rスポーツ」だった。扁平率20パーセントという薄いタイヤを履いていたせいもあり、乗り心地は硬め。しかしけっして不快ではないのだ。
 高速も得意領域だ。速度があるていど高くなるとリアスポイラーによるダウンフォース効果が発生して、車体がぐっと沈んでくる。ステアリングホイールの手ごたえがよくなり、走りが安定する。空力ボディの恩恵である。

快適装備のアップデートにも余念がない

「XF」サルーンに通じるクリーンで操作性のいいコクピット。
「XF」サルーンに通じるクリーンで操作性のいいコクピット。
TFT液晶を使った「バーチャルコクピット」。
TFT液晶を使った「バーチャルコクピット」。

 インテリアは「XF」サルーンと共通のイメージで、運転席まわりは機能主義的なデザインだ。ドライビングポジションから、変速機やインフォテイメントシステムの操作系にいたるまで、人間工学的に正しく作られているかんじだ。
 いっぽう先に触れたようにサンルーフにジェスチャーコントロールを採用するなど、快適装備のアップデート化にもジャガーは余念がない。
「SUVではサスペンションの動きに制約を受けがちで、必ずしも理想的な乗りものではありません。機能と快適性とそれにデザインを意識するひとのために、「XFスポーツブレイク」を開発したのです」
 試乗会場で会った英国人の開発担当者の言葉である。シューティングブレイクという英国男の趣味から生まれたジャンルが、今こうして、魅力的なクルマを世に送り出す一助となった。クルマ好きとしては感謝したい。
 価格は「XFスポーツブレイク・プレスティッジ」のガソリンが756万円。同ディーゼルが722万円だ。ディーゼルのセダンにはAWD(総輪駆動)があるが、スポーツブレイクは後輪駆動のみとなる。

エボニー/ピメントというシート表皮の組み合わせは「Rスポーツ」用(日本導入予定なし)
エボニー/ピメントというシート表皮の組み合わせは「Rスポーツ」用(日本導入予定なし)
後席のスペースも比較的余裕がある。
後席のスペースも比較的余裕がある。

〈ジャガー・XFスポーツブレーク XFプレステージ ディーゼル〉 
全長×全幅×全高:4,965×1,880×1,495㎜
車両重量:1,820kg
排気量:1,999cc
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
最高出力:180PS/4,000rpm
最大トルク:430Nm/1,750rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT
価格:722万円(税込み)
■問い合わせ先 ジャガーコール
TEL:0120・050・689
https://www.jaguar.co.jp

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。