創刊18周年を迎え幸せに思うことは、これまでPreciousで紹介してきた数あま多たの逸品が、今も女性たちの愛用品として現役で活躍していることです。名作バッグに刻まれた傷も、飴色に変化した革靴も、古びて見えるどころかむしろそれぞれの個性が際立ち、輝きが増してラグジュアリー!
使って、使って、使い倒してはじめてわかるものの価値…。愛用品が紡ぐ物語はこれからも、私たち女性ひとりひとりの心を豊かにする、揺るぎない存在であり続けてくれると信じています。
スタイルある女性たちが行き着いた自分らしさ、「愛用品」との付き合い方。生き方が凛と美しい人々は、どんなものを、どのように慈しんできたのでしょうか。手に入れた経緯から、愛用品への育み方まで、4人の女性が、自らの人生論と共に語り下ろします。
今回は女優・木村多江さんにインタビュー。愛用品は、「エルメス」のスカーフ『カレ』です。
「エルメス」のスカーフ|木村多江さん(女優)
「職人の技が宿る鮮やかなスカーフをまとって、未来へ羽ばたきたい」
スタジオに響くシャッター音と共に、その表情は鮮やかに変化する。ときに優しく、ときにクールに、ときにエレガントに…。今回は、愛用するエルメスの『カレ』と共に、たおやかで、かつ強い芯を感じさせる、美しい表情をとらえた。
「このスカーフの素晴らしさを実感したのはもう12年も前、エルメスが特別協力した映画『東京島』で主演を果たしたことがきっかけでした。
無人島でひとりの女性がいかにたくましく生き抜くかを描いた物語で、殺伐とした環境のなか、このスカーフがどれだけ私を癒やしてくれたことか。色鮮やかなシルクを身にまとうことが、ここまで心を豊かに満たしてくれるのかと、心底驚いたことを覚えています。
さらに演出に合わせて褪せた印象に仕立てようとしても、その鮮やかさが失われにくかったのだとか。これはつくり手の信念が技術として込められているから。その真摯な姿勢を感じ取り、『ああ、私も正直に生きよう。人生に正面から向き合おう』、そう心に決めたのです。
だからこのスカーフを見るたび、『どう? 大丈夫?』と優しく語りかけられている気分に。ものがものを遥かに超え、大きな存在として立ち現れる瞬間がある。そのことをエルメスから学んだ時間でした」
今回襟元を飾っているのは、映画に登場したオリジナルスカーフを赤く染め直したもの。黒に赤が映え、その躍動感にハッとする。
「クールな黒にビビッドな赤がなびく。そのコントラストに胸が躍り、ドラマティックだと感じました。私の中に眠る強さ、そして新しい風を表現できた気がします」
ここ数年、木村さんが改めて考えていることがある。それが“強さ”の新定義だ。
「年齢を重ねて、考え方が頑なになっていないかを自問するようになりました。年々可愛げがなくなり、ひと言多くなるお年頃(笑)。仕事と家庭を両立させ、それらを守る気持ちは大切だけれど、“成長欲”が止まっているのでは、と恐ろしくなったのです。
生き続けることの素晴らしさは、知識が増え、精神に深みが出ることだとすれば、それらを止めてしまうのはもったいない。この先もっと豊かな世界が広がっているとすれば、“強さ”を“軽やかさ”に変えて飛び出していきたい。風に舞う真っ赤な『カレ』がそのメタファーとなって、後押ししてくれるように感じています」
さらなる成長のため、手話を学び始めた。「みんなで助け合って、優しい社会をつくるのが使命だから」と女神のような笑顔を見せた。
「今シーズンは明るい色同士をまといたい気分。例えばペールピンクにこのスカーフを合わせてみたら、春気分を満喫できそう。着物をたしなむ機会も多いのですが、あの遊び心溢れる色合わせを取り入れてもいいのかも。規範やルール、年齢にとらわれず、これからも軽やかに羽ばたきたい。エルメスの『カレ』は、今の私に欠かせない、翼のような存在なのかも」
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
問い合わせ先
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- PHOTO :
- 久富裕史(N°2)
- STYLIST :
- 戸野塚かおる
- HAIR MAKE :
- hiro TSUKUI(Perle/ヘア)、三澤公幸(Perle/メイク)
- WRITING :
- 本庄真穂
- EDIT&WRITING :
- 兼信実加子、喜多容子(Precious)