【目次】

【「お目通し」の意味は?「お目通り」との違い】

■「お目通し」の 「意味」を正しく把握

「目通し」という名詞+接頭語の「お」=丁寧語の「お目通し」。

「目通し」の意味は、目を通すこと、初めから終わりまでひと通り見ることです。「目を通す」や「ひと通り見る」とは、内容を精査するのでもぼんやり見るのでもなく、全体を把握する程度にざっと見るということ。「資料にお目通しください」と言われたら、「全体像を理解して欲しい」という意味なのです。

■読み方は「おめとおし」「おめどおし」どっちが正解?

『デジタル大辞泉』も『日本国語大辞典』も、「目通し」を【め-どおし】と記述しているので、「おめどおし」と読むのが一般的でしょう。ただし、文脈によっては「おめとおし」のほうがスムーズに読めることもあり、こちらも間違いとは言い切れません。

ちなみにこの濁点(゛)は、濁音で読まれるべきことを示すための補助符号。「てんてん」ではなく「濁音符」といいます。古くは濁音を表記しませんでした。崩してさらさらっと書く際に濁点を付けたのでは、確かに運筆(筆のリズム)が乱れてしまいますね。

「濁音符」は漢文の読解のための声点(しょうてん)から発展したものと考えられていますが、付ける位置が定まっていない時代も。豊臣秀吉が天下を統一した1590年ごろに、平仮名の右肩に付けることで統一されたようです。

■「お目通し」は誰にでも使える?

ビジネスシーンなら取引先や上司、お客様などに使える敬語表現です。部下や同僚など、自分と同等以下の人には「目を通して~」となります。

■「お目通り」との「違い」

「お目通し」と「お目通り」、似ていますがまったく意味の異なる言葉です。

「お目通り」とは、身分の高い人、貴人にお目にかかることを表します。難しい言葉で言い換えると「謁見(えっけん)」や「拝謁(はいえつ)」。「殿下にお目通りが叶った」などと使います。通常のビジネスシーンで「お目通り」を使うことはあまりなさそうですね。


【ビジネスシーンでそのまま使える「例文」】

ビジネスでの会話やメールで使える「お目通し」の例文をご紹介します。自分の業務に置き換えて、脳内シミュレーションしながら読んでみてください。

■1:「週明けのミーティングで検討したい資料です。お目通しいただきますようお願いいたします」

資料の目的を示したうえでの「お目通し」は、「ちゃんと読んでおいてくださいね」という念押しをソフトに伝えます。前後の文章によっては、「添付の資料を事前にお目通しくださいませ」でも十分伝わります。

■2:「お時間のあるときにお目通しいただければ幸いです」

こちらは「お時間のあるときに」と「幸いです」で、「目を通してもらえたらラッキー」くらいのゆるい言い回し。会議の資料など、事前に見ておいて欲しい場合には、1のようにしっかり目的も伝えましょう。

■3:「ぜひ一度、お目通しのほどよろしくお願いいたします」

「ぜひ一度」とは、心を込めて相手に強く依頼する際の表現。「ほど」には断定を避けて表現を和らげる効果があります。「見ていただきたい気持ちは強いが、ソフトなニュアンスで伝えたい」場合に。

■4:「皆さま資料にお目通しいただきましたようですので、担当社より補足説明申し上げます」

■5:「企画書にお目通くださいましたのち、ご質問などへは個別に対応させていただきます」


【「ご一読」など、似た意味をもつ言葉と「言い換え表現」】

「一読(いちどく)」を「一度読むこと」だと思っている人はいませんか? 不正解ではありませんが、「一度読む」という意味もありますが、「ひと通り読む」という意味もあって「お目通し」と同じようにようにも使えるのです。ビジネスシーンで「ご一読ください」といわれたら、「お目通しください」と同意だと思ったほうがいいので注意が必要です。「目通し」の類語を整理しましょう。

・一覧(いちらん):ひととおり目を通すこと。一見。

・通覧(つうらん):全体にわたってひとおおり見ること。ひとわたり目をとおすこと。

・概括(がいかつ):内容などのあらましを、大ざっぱにまとめること。また、要点をとらえてまとめること。

・大要の把握(たいようのはあく):「大要」は、大体のところ、あらまし、概要、大きな部分を占めるもののことと。

***

今回は「資料にお目通しください」「お目通しいただけますと幸いです」など、ビジネスメールに欠かせない「お目通し」というフレーズについて確認しました。ビジネスシーンでは、発信する側は目的をしっかり伝え、受け取る側もそれを理解することが大切です。特にニュアンスが伝わりにくいメールでは、相手を迷わせないような表現を心がけて。目的や期日なども添えるとこのフレーズがグッと生きてくるので、状況に応じて加えましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :