オーセンティックなモッズマナーに倣い、細身の3つボタンスーツを身に纏った「ザ・ジャム」時代のクールさも捨て難いが、やはり、スタイルアイコンとしてのポール・ウェラーにフォーカスするのなら1983年に結成された「ザ・スタイル・カウシンル」時代に止めを刺す。

ポール・ウェラー(c)Getty Images
ポール・ウェラー(c)Getty Images

「アクアスキュータム」のステンカラーコートをざっくりと羽織り、金ボタンのネイビーブレザーや「リーバイス」のブルーデニムを合わせた肩肘の張らないミックススタイルは、ジャズやソウル、さらにハウスなどを独自に咀嚼した雑食的なサウンドにも相通ずるものがある。シンプルかつオーセンティックなアイテムを、組み合わせの妙や“こなし”のテクニックで新鮮に魅せる様は、さながら“フレンチシック ミーツ アイビー”といったところか。特に、大ヒットを記録した1stアルバム『カフェ・ブリュ』のジャケットに写るステンカラーコートを身にまとった姿は、ファンならずとも今なお鮮明な記憶として残っている。

【KEY ITEM】上品な光沢感が大人の洒落感を演出する「シーラップ」のステンカラーコート

コート¥253,000(エスディーアイ〈シーラップ〉)
コート¥253,000(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター〈シーラップ〉)

イタリア・ミラノ発のレインウェア/アウター専業ブランド「シーラップ」のステンカラーコート。端正な印象を醸すストレートシルエットの身頃とスリムなスリーブが特徴。シルク100%の美しい光沢感とハリ感としなやかさを兼備し、大人っぽい洗練されたムードを後押しする。明度の高いライトベージュカラーは、軽快さが肝要なスプリングコートとしてもまさにおあつらえ向き。

上質な素材使いとすっきりとしたサイジングで魅せる、今日的ポール・ウェラー スタイル

コート¥253,000(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター〈シーラップ〉)、ジャケット¥151,800(シップス 銀座店〈チンクワンタ × シップス〉)、ニット¥37,400(リーミルズ エージェンシー〈ジョン スメドレー〉)パンツ¥50,600(トゥモローランド〈ベルナール ザンス〉)、靴¥48,400(ルック ブティック事業部〈レペット〉)

かつてのスタイルをオマージュしつつも、渋く年齢を重ねたポール・ウェラーが無理なく着用することをイメージすると、上質な素材感と品の良いサイジングが肝となる。メインとなるステンカラーコートは、あえて「アクアスキュータム」ではなく、イタリアのブランド「シーラップ」のシルク製をセレクト。肩を合わせたセットインスリーブによるすっきりとしたシルエットは、オーバーサイズ偏重の現代においてより新鮮な印象に。近年のポール・ウェラーのポートレートを見ると、ヘンリーネックやカットソーなど、すべてジャストサイズが基本なので、サイジングにはかなり気を使っているはずだ。ちなみに今でもポロシャツは一番上のボタンまでしっかり留める辺りにモッズのルーツが垣間見える。

ダブルブレストのネイビーブレザーとボーダーカットソーの合わせは、往年のスタイルをトレースした。ただ、ブレザーは「チンクワンタ × シップス」のスエード素材を選び、シャイニーなコートとの素材感に差をつけて奥行きのあるレイヤードに。

インナーは同じボーダー柄でもTシャツではなく、英国繋がりで「ジョン・スメドレー」のハイゲージニットを挿して、大人の落ち着きを添えた。パンツはフランスの名門ブランド「ベルナール ザンス」のリネンパンツをセレクト。ペールピンクの美発色とリネン特有の爽やかな風合いは、デニムにはない洗練されたモダニティを付与する。仕上げの足元は、重くなりすぎないように「レペット」の『ジジ』で抜け感をプラス。かのセルジュ・ゲンスブールが愛した名品で、フランスらしい小気味良いエスプリをひと匙加えて完成。

60歳を超えたポール・ウェラーだが、こんな軽快なスタイルも何なく着こなすに違いない。もちろん、あくまで妄想上のコーディネートなので、それぞれが思い描くイメージと違う場合はご容赦を。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

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PHOTO :
島本一男(BAARL)
STYLIST :
河又雅俊
WRITING :
佐藤哲也