ランボルギーニ・ウラカンは乗るたびに驚かされる。5.2リッターV10ユニットを車両中央に搭載した4WDのミッドシップスポーツカーとして登場してから約10年、その間、オープントップのスパイダーやRWDモデル、ペルフォルマンテ、そしてEVOと進化を遂げるたびに洗練度を増し、高い興奮を覚えてきた。そして2020年に登場したウラカンSTOにも同様の印象を受けたのである。
ワンメイクレースの認証を受けた特別なウラカン
今回のウラカンに付く「STO」とは「スーパー・トロフェオ・オモロガート」の頭文字を取ったもの。つまり、ウラカンを用いたワンメイクレース、スーパー・トロフェオ・シリーズのホモロゲーションを受けた車両という意味であり、そのストリートバージョンがウラカンSTOというわけである。
鮮やかな空色のブルーとエネルギッシュなオレンジに彩られたボディはエアロパーツで完全武装され、このモデルが只者ではないことを窺わせる。フロントカウルはボンネット/フェンダーも含めて一体成形となり、ルーフ後端からエンジンコンパートメントにかけてはフレッシュエアを取り込むエアインテークと垂直尾翼を融合させたような造形の専用カウルが与えられ、リアウィングには角度調整機構もつく。そんなレーシングトリムの効果は公道走行で体感できるものではないだろうが、サーキットならばしっかりとダウンフォースを生み出して抜群の空力性能を発揮するはずだ。とにもかくにも速く走ることを追求したスーパースポーツカーがウラカンSTOなのである。
走ることを突き詰めたクルマはある意味扱いやすい
もっとも、だからといってウラカンSTOがかなりの我慢を強いられるモデルかといえばさにあらず。普通に流しているだけでも路面に吸い付くような、超絶に高い走行安定性を誇り、それでいて路面の凹凸は見事にいなしてくれるため、バケットシートに収まる乗員は車内で上下にシェイクされるようなこともない。公道走行でも決して苦にならないレベルの快適性が確保されていることに驚かされた。
そのいっぽうでスロットルを踏み込んで5.2リッターユニットを歌わせてやれば、胸のすくようなV10サウンドと、ワープできそうなほどの異次元の加速が味わえるのもウラカンSTOの魅力だ。ワインディングロードで多少無理をしたとしてもまったく無駄な動きは見せず、まさにオンザレール感覚で狙ったラインをトレースしながらスポーツドライビングが楽しめる。走ることを純粋に追い求めたモデルならではの、ある意味においての扱いやすさがウラカンSTOでは徹底的に磨かれている。
スーパーカーと言われた時代のランボルギーニの粗野さは、それはそれで魅力だったが、現代のウラカン、特にこのSTOは運動性能と快適性を高レベルで両立させた、真の“スーパースポーツ”として進化しているのが魅力。ランボルギーニはいつの時代もクルマ好きの期待を裏切らない、スポーツカー界のヒーローなのである。
【ランボルギーニ・ウラカンSTO】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,549×1,945×1,220mm
車両重量:1,339kg
駆動方式:RWD
エンジン:5,204cc V型10気筒自然吸気
最高出力:470kW(640PS)/8,000rpm
最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6,500rpm
価格:¥41,250,000
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- TEXT :
- 桐畑恒治 自動車ライター
- PHOTO :
- 尾形和美