毎年1月と6月に開催される世界最大の服見本市、ピッティ ウォモ、通称ピッティ。ひと昔前はアパレル業界だけで通じたその言葉が、今や男たちのファッションキーワードとしてひとり歩きしている。では、なぜそこまで注目されるのか? その実情を、本誌エグゼクティブファッションエディターの矢部克已が解説する。

洒落者たちが魅せられるピッティの「真実」とは

 年2回、イタリア・フィレンツェで開催されるメンズファッションの世界最大級の展示会が、ピッティ・イマージネ・ウォモ(以下ピッティ)。毎回、世界各国から一流店のバイヤーやメディア関係者らが訪れ、総来場者数は毎回平均3万人を超える。

なぜ、ピッティにこれほど注目が集まるのか…。

 第1のポイントは、メンズファッションの最新トレンドをいち早く伝える、大規模な発信力だ。何よりも、これを求めてファッション関係者が世界各国から集まるのである。

 ポイント2は、出展するメーカーのディレクターと訪れたバイヤーたちが、直接、会話を楽しめることにある。話題を機に、新しいアイディアが生まれてくる。

 ポイント3は、洒落者の来場者たちのリアルなファッションに触れられること。濃厚な「今のスタイル」がここにあるといえる。

 ポイント4は、新しい才能の発掘にも、こまめに目を向けていること。

 ポイント5は、来場者たちが足繁く通う店があること。フィレンツェは、職人の文化を背景にした名店サルトリアや、クラシックなアイテムを構成したショップが多くそろう。

 会場をとりまく多様なトピックが、ピッティの計り知れない魅力をつくり上げているのだ。

【POINT1】世界最大級のトレンド発信力を誇る

 1950年代、そもそもピッティの前身となる組織は、イタリアファッションを、アメリカを中心に世界へ広げる目的で発祥した。現在では、世界各国から毎回3万人を超える来場者を誇る、一大展示会に膨れ上がった。その理由は、どこよりも早くメンズファッションのトレンドを発信する最先端の場所であること。来場者は、未知なるイタリアブランドや最新のアイテムに触れるため、1,000以上の出展ブランドのブースをくまなく回遊する。

 ピッティはいつも、来シーズンのトレンドを左右する重要な情報を発信しているのだ。

会場内は、イタリアブランドを中心に、各ブランドが大小さまざまなブースを設置して、ブランドの個性を打ち出した、最新のスタイルを提案。単に服を展示しているわけではないのだ。

【POINT2】メーカーとバイヤーが直接話し合える場所

 各ブランドのブースでは、新作のコレクションを熟知した、企画ディレクターや製品担当者が来場者を待つ。訪れたバイヤーたちは新作のサンプルを手に取り、素材の加工やつくりを確認し、商品のコンセプトについても質問。サンプルを目の前にした会話から、メーカーの担当者とバイヤーが、マーケットに即した商品へと発展させるのである。ものづくりに対する熱い会話は、担当者とバイヤーが直接会える、展示会としてのピッティの最大の強み。ものづくりに精通したディレクターとショップバイヤーの意見交換は、新しいファッションの創造に繫がっていくのだ。

バイヤーたちは、各ブランドが提案する新作の傾向を俯ふ瞰かんし、気になるアイテムを見かけると、徹底的に質問を投げかける。ブランドのディレクターとショップのバイヤーの会話によって、マーケットに即した商品が生まれる。

【POINT3】来場者スナップ! リアルな最新スタイルを披露

 創刊当初から『メンズプレシャス』が注目してきた、ピッティスナップ。洒落者たちの着こなしは、現在のリアルなスタイルの実例だ。ピッティはブランドのエージェントにとって、最新アイテムのお披露目の場であり、集まってきた粋人は、スナップを撮られ、ファッショニスタとして有名になる。

 われわれの着こなしに、すぐにでも生かせそうなアイディアにあふれている洒落者のスナップは、ピッティの重要なニュース発信源になっている。

『メンズプレシャス』では、バイヤーのマーチン・ルシンク氏(左)や、エンテ・モーダ・イタリアのアルベルト・スカッチョーニ氏(右)がスタイルのお手本だ。

【POINT4】有望な新人デザイナーをいち早くキャッチする

 2010年の第77回ピッティ開催時から続く、新人デザイナーの選考会Who’son next !。第1回のプレタポルテ部門の受賞者となったウミット・ベナン氏や、アンドレア・ポンピリオ氏をはじめ、現在活躍中のデザイナーを輩出。アクセサリー部門での受賞者からは、トッズのクリエイティブディレクターを務める、アンドレア・インコントリ氏も(第79回)。ピッティは、新人発掘の重要な担い手でもある。

2015年Who’s on next!のプレタポルテ部門の受賞者は、トム・リポップ氏。「シンプル・イズ・ベスト」を掲げ、ミニマリズムな服を提案する。

【POINT5】ピッティ来場者が通うフィレンツェの名店

 ピッティを訪れる洒落者たちが、会期中に必ず立ち寄る多くの名店。ルネッサンス期以来の職人文化を継承するフィレンツェには、サルトリア(仕立て服店)の名店をはじめ、クラシックなアイテムに特化した、個性的なセレクトショップが多い。

 ランドマークとなる大聖堂の近くにも、老舗セレクトショップの「エレディ・キアリーニ」やサルトリアの「セミナーラ」など、名店ぞろいだ。

新装した「リヴェラーノ&リヴェラーノ」(右)は、フィレンツェを代表する名門サルトリア。「ミロルド」(左)は、伊達男好みの服がそろう。

 以上、ピッティ ウォモの5つの秘密を紹介しました。この記事からピッティがなぜ毎年盛り上がりを見せているのか納得いただけたはず。ファッション以外にも目を向けてみるのもピッティの楽しみかもしれません。

この記事の執筆者
TEXT :
矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
BY :
MEN'S Precious2015年春号ピッティ・ウォモ、5つの秘密より
ヴィットリオ矢部こと本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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イラスト/谷本ヨーコ 構成・文/矢部克已(UFFIZI MEDIA)