このうえなく美しい布で涼をまとう贅沢|清野恵里子さん「夏きものの愉しみ」

清野恵里子さん
文筆家
(せいの・えりこ)雑誌を中心に、企画、構成、執筆活動を行い、幅広いジャンルで、美意識を貫く独自の視点が大人の女性に支持されている。著書に『樋口可南子のきものまわり』『きもの熱』(集英社刊)ほか、最新刊『時のあわいに』(文化出版局刊)はベストセラーに。

「素材本来のナチュラルな魅力を味わう上品で優しい色味の夏小物を」───清野恵里子さんが選ぶ「着物まわりのもの」

夏ごとに新調する贅沢。白い麻のハンカチーフ

和光のリネンハンカチーフ
イニシャルを刺繍した上質リネンのハンカチーフ¥11,000・名入れ¥990(和光)

「数年前、友人から麻のハンカチを名入りでいただきました。驚くほど細い糸で織られた極薄リネンの柔らかな肌触りに感激。以来、特別な外出にはバッグにしのばせています。歌舞伎座の客席でいただくお弁当は、このハンカチをさりげなく膝に広げる仕草がエレガント」。夏になるとまとめて新調するのも贅沢。

繊細かつ重厚な芳しき京製白檀の扇子

「京製白檀」の扇子
「京製白檀」の扇子/¥264,000(宮脇賣扇庵)

可憐な野の花「釣鐘草(つりがねそう)」をモチーフに、インド産の選りすぐりの白檀の香木を使用した扇子をバッグにしのばせたい。

「国内唯一の白檀の作家、中地甲陽の作で、小ぶりながら持ち重りのする重厚感と、彫の繊細な美しさが際立つのが魅力」と、清野さんも長年愛用している。残念ながら在庫もわずか。入手困難な状態にあるとか。

ノスタルジックな佇まいの竹ビーズのバッグ

竹のビーズバッグ
バッグ 各¥22,000(シルクラブ)

「ずいぶん前につくられたと思われる、ノスタルジックな竹ビーズのバッグに、なんともいい難い魅力を感じます」。

これを見つけた清野さんは、上布の着物にもリネンのワンピースにも合いそうな、モダンさを感じたとか。ハイブランドが手掛けるビーズのカゴバッグが注目される今、こんな本格的な竹ビーズが夏着物に遊び心を添えてくれるはず。

観劇やコンサートの冷房対策にバティックのシルクストール

シルクストール
白い布の上に白のバティックを施した『White on White』のシルクストール¥157,300(シルクラブ〈ビンハウス〉) 

手織りのシルクに手描き、手染め、刺繍を施したバティックのストール。インドネシアのジャワ更紗(臈纈染ーろうけつぞめーの布)であるバティックは通常、コットン素材なのに、“ビンハウス”では1986年の創業からシルク製。

「冷房の効いたホールで過ごす夏のマストアイテムです」と清野さん。


清野恵里子さんの着物に心惹かれる人は、着物だけでなく、現代の工芸品から芸術文化、古美術にいたるまで“目利き”ともいうべき美意識が貫かれた清野さんのスタイルに、洗練や憧憬を感じているのではないでしょうか。

「きっかけは母の遺した着物の仕立て直しだった」とご自身が語るように、着物のプロではなかったにもかかわらず、誰よりも心に響く美しい着物の”世界”を見せてくれるのです。清野さんの旺盛な好奇心と確かな審美眼は、さまざまな人との出会いを呼び、美しい着物や着物まわりのものが彼女のもとに引き寄せられるように集まります。

「着物の面白さは足し算。色を重ねることで生まれる調和です。合わせる方法はさまざまですが、なんとなくの勘で、相性の良さそうな着物に帯を載せます。力のある個性的な帯が好きで、帯を載せてパッと表情が変わる瞬間がたまりません。組み合わせた着物と帯の間にあるわずかな違和感を歩み寄らせる、接着剤のような仕事をするのが“帯揚げ”であり、仕上げが”帯締め”です。最後に帯締めを載せたときに起こる化学反応が感動的で、取り合わせを考えることがなにより愉しい。

今回は盛夏の着物のなかでも、ひときわ贅沢な越後上布、宮古上布や芭蕉布などが登場していますが、結城紬や大島と同じく、いわゆるフォーマルな着物ではないところに、贅沢さと、究極のおしゃれを求める喜びがあります。オーセンティック、モダン、エレガントという3つの要素をいつも大切にしています。夏の着物の基本は清潔感と清涼感。白い半衿と純白の足袋はもちろん、強い日差しの下で、袖口にのぞく麻の長襦袢の白が、涼感を演出します」

ベージュやグレージュ、ネイビーといった洗練色をベースに、白を差すのは洋服と同じ。私たちの求めるラグジュアリーを、清野さんは着物の世界で見せてくれるのです。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

PHOTO :
浅井佳代子
STYLIST :
清野恵里子
EDIT&WRITING :
藤田由美、古里典子(Precious)
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