【目次】

【「痛み入りますとは?「意味」】

■読み方

「痛み入ります」の「痛み」は「いた(み)」、「入ります」は「い(ります)」と読みます。「はい(ります)」ではないですよ!

■意味

「痛み入ります」は「痛み入る」という状態を丁寧に表した言葉です。「痛み入る」は、相手の手厚い配慮や好意などに対して深く感じ入り、「自分にはもったいないほどありがたい」という謙遜な気持ちを含んだ言葉です。謙遜からくる「申し訳ない」という“心の痛み”を表す「痛み」と、それをつくづく感じ入っている、という気持ちをを表す「入る」で成り立った、一語の動詞なのです。

注意すべきは、状況次第では、やや皮肉をこめて用いられる場合もあります。この使い方は例文でチェックしましょう。


【「恐れ入ります」との「違い」は?】

「恐れ入ります」は「痛み入ります」の類似表現と言えます。ただ、「痛み入ります」は「心が痛むほどの感謝」を意味し、「恐れ入ります」は「恐縮するほどの感謝」を意味するフレーズです。どちらも最大級の謝意を表しますが、「痛み入ります」のほうが「より恐縮度が高い=感謝の念が強い」と理解するとよいでしょう。

また、「恐れ入ります」は、相手に失礼なことをしたり迷惑をかけたりすることに対し、申し訳なく思う気持ちも表現する言葉です「恐れ入りますが、ご対応いただけますでしょうか」とは言いますが、「痛み入りますが、ご対応いただけますでしょうか」とはいいません。


【そのまま使える「文例」】

■1:「このたびのご配慮、痛み入ります」

■2:「急なお願いにもかかわらず便宜を図っていただき、痛み入ります」

■3:「送迎までご用意いただき、お心遣い痛み入ります」

■4:「長い間、当社へご高配賜り、誠に痛み入ります」

■5:「未熟者の私を辛抱強く見守ってくださいました皆さまのご厚情に痛み入ります」

■6:(葬儀などで参列者から)「お悔やみ申し上げます」
              「ご丁寧に痛み入ります」

■7:部下「〇〇課長、退院したばかりで、まだ体調は万全でないのでは? 
     ご無理なさらないよう気をつけてくださいね」
   〇〇課長「ご忠告、痛み入ります」
   部下「……。差し出がましいことを申しました……」

「心が痛むほどの感謝」を表す「痛み入ります」は、目上の人限定で用いられる言葉と覚えておきましょう。この言葉は状況次第では、「そんなこと、言われなくてもわかってるよ」と皮肉を込めた表現として使われることもあるからです。

また、目上の人に対して使う際も、特別な便宜や多大な恩恵を受けて感謝しているという場面以外は、誤解を招く可能性があるため、軽々しく使わないほうが無難です。

■NG:部下「〇〇部長、この度は結構なお品をいただき、痛み入ります」
   部長「いやいや……(大福の差し入れくらいで大げさな)」

「痛み入ります」は、日常的に軽々しく用いられるフレーズではありません。


【「類語」と「言い換え」表現】

「痛み入ります」ではちょっと大げさかなというケースでは、次のようなフレーズで言い換えてみましょう。

■感謝しております  ■感謝の言葉もありません 
■恐れ入ります    ■恐縮です 
■感激しております  ■こんなにうれしいことはありません
■ありがとうございます

この類語を使用して、前章の例文を言い換えてみましょう。

■1:「このたびのご配慮に深く感謝しております」

■2:「急なお願いにもかかわらず便宜を図ってくださり、ありがとうございました」

■3:「送迎までご用意いただき、お心遣い恐縮です」

■4:「長い間、当社へご高配賜り、感謝の言葉もございません」

■5:「未熟者の私を辛抱強く見守ってくださいました皆さまのご厚情、こんなにうれしいことはありません」

■6:(葬儀などで参列者から)「お悔やみ申し上げます」
              「恐れ入ります」

■6:部下「〇〇課長、退院したばかりで、まだ体調は万全でないのでは? 
     ご無理なさらないよう気をつけてくださいね」
   〇〇課長「君の言う通りだよ。ありがとう」


【「痛み入ります」と言われたときの「返し方」】

「痛み入ります」と言われたら、どう返すのが大人のマナーとして正解なのでしょう。前提として、立場が同等か、年下の人から「痛み入ります」と言われたと仮定します。

■1:「お礼には及びません」

■2:「お気になさらずに」

「お礼には及びません」や「お気になさらずに」は、近い間柄の相手に使用します。

■3:「とんでもないことでございます/とんでもございません」

「いえいえ、とんでもない」ではカジュアル過ぎると感じた場合であっても、年下に対して「とんでもないことでございます」は、少々仰々しい印象ですね。

本来、「とんでもないです」や「とんでもありません」、「とんでもございません」は日本語として正しい表現ではありませんが、特に「とんでもございません」という表現については、文化庁の「国語に関する世論調査」(平成25年度実施)で【「相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現」として使うことは問題がないとされている言い方である。】と報告されています。むしろ正しい表現である「とんでもないことでございます」のほうが、オーバーで違和感があると受け取られている現在、ビジネスシーンで「とんでもございません」を使用するのは、許容範囲とされているようです。


【使うときの「注意点」まとめ】

■基本的に「目上の人限定」で使用する

同僚や部下にも恐縮するほど感謝することはありますが、その場合は「本当に助かりました。ありがとう」というフレーズでいかがでしょう。

■取引先や上司など目上の人であっても、皮肉や嫌味にとられそうなケースでは使わない

特にニュアンスが伝わりにくい、メールでは気をつけたいもの。お客さまにも使用は控えたほうが無難です。

■日常的によくある程度の感謝には使わない

大げさだと思われてしまっては逆効果ですね。

■過去のことに対しては使わない

「あの際は本当に痛み入りました」と過去形では使いません。

***

お礼や感謝の気持ちを表現する「痛み入ります」というフレーズ。意味を正しく理解し、適切なシーンで使わないと、逆効果になってしまう場合もありますから、注意が必要です。とはいえ、取引先などから通常を上回る気遣いを受けた際など、とっさに出てくると大変効果的な謝意フレーズです。上手に使いこなしてくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :