「プロトコル」あるいは「プロトコール」という単語になじみはありますか? 当たり前に使っている業界や職種がある一方で、「見たことも聞いたこともない」という人もいるでしょう。けれどそんな人も、知らないだけで「プロトコル」に支えられている可能性大! 本日は、そんな「プロトコル」について解説します。

【目次】

知らないうちに「プロトコル」のお世話になっている?
知らないうちに「プロトコル」のお世話になっている?

【まずは「2つのプロトコル」の基礎知識】

実はさまざまな専門的な意味をもつ「プロトコル」という単語ですが、「国際社会」の場と「IT関連」での使用によく見られます。まずはこの2つを解説します。

■国際社会でのプロトコルは「国際マナー」を意味します

英語の「プロトコル[protocol]」の意味は、外交などにおける「議定書(国家間の正式の合意文書)」や「国際マナー」のこと。

国家間の儀礼上のマナーや、国際的な場で主催者側が提示するルールを指し、「国旗の取り扱い方法」や「来賓の席の配置方法」、「出席者の服装の規定」などが示されます。法的な拘束力はありませんが、国際社会では重要視されます。一般的には、「国際儀礼」や「外交儀礼」といった意味でよく使われます

■IT用語のプロトコルを簡単にいうと「共通言語」です

国際社会で「プロトコル」の意味が転じて、IT業界ではコンピュータネットワークなどにおける通信規約、簡単にいうと「コンピュータ間の共通言語」という意味で用いられるように。

以前はコンピュータメーカーがそれぞれ独自の「言語」を使用していたため、異なるメーカー製のパソコンでは、メールのやり取りさえできませんでした。現在はほとんどの機器に「標準プロトコル(=共通言語)」が装備されているので、相手がどのメーカーのコンピュータなのかを意識することなく快適に使えているというわけです。


【ビジネスシーンでの使用例】

■1:「国際的なルールであるプロトコルに従い、お客様に不快な思いをさせない配慮を徹底してください」

■2:「パソコンの不具合は、プロトコルの設定ミスによるところが大きい」

■3:「許容されるプロトコル違反もあるが、内容が悪質だったり、違反を隠ぺいするなどした場合には、販売停止などの処分を受けることもある」


【「プロトコル」を日本語で言い換えるなら…】

わかったようなわかっていないような…そんなカタカナ語は、日本語に変換してみるとその意味がよくわかります。「プロトコル」を正しく使うために、言い換え表現も覚えておくのが得策です。

■取り決め ■規格 ■規定 ■規則 ■約束事 ■条件 ■手順 ■作法


【業界によって異なる「プロトコル」の「意味」と「関連用語」】

ビジネスシーンでは、「プロトコル」を「規則」や「手順」といった意味で使用することもありますが、業界によっては専門的な意味合いをもちます。いくつかご紹介します。

■IT用語

「通信プロトコル」:コンピュータ間で、データをやりとりするために定められた手順・規約。信号の電気的規則、送受信の手順、通信規約などを指します。さまざまな種類がある「通信プロトコル」から、一部を紹介します。

 ・IPアドレス(アイピーアドレス):「IP」はインターネットプロトコルのことを指し、ネットワーク上の各機器には、アドレスという個別の識別番号が割り当てられ、そこでデータの送受信が行われます。

 ・HTTP/HTTPS:WEBブラウザがサーバーと通信するためのプロトコル。

 ・STMP/POP(ポップ):電子メールを受信して管理するためのプロトコル。

 ・IMAP(アイマップ):サーバーから電子メールを読み込むためのプロトコル。

■医療業界

医療業界での「プロトコル」は、目的や根拠、方法などが子細にに記された「治験実施計画書」や「治療計画書」を指します。「プロトコル」に違反した場合は治験や治療の停止に加え、それを実施した医療機関や企業は、薬事法により営業停止などの厳しい処罰を受けることになります。

■心理学

認知心理学の分野での「プロトコル分析」は、「被験者が何かをする際に頭に浮かんだことをすべて口に出していき、それを記録してデータとして解析をする方法」のこと。被験者が口に出した思考の記録を「プロトコル」と呼び、企業の商品開発などでもこの方法が用いられることがあります。

■スポーツ界

新型コロナウイルスの感染拡大はスポーツ界にも大きく影響を及ぼしましたが、アメリカのプロバスケットボールNBAでは独自の「安全衛生プロトコル」、すなわち「安全にスポーツ事業を運営するための衛生・健康面での規定」を厳しく設定。残念ながらシーズンの中断や、陽性判定が出た選手などの欠場・隔離(「〇〇選手が安全衛生プロトコル入りした」などと使う)が相次ぎました。 

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カタカナ語やビジネス用語は、聞き慣れていなくても意味を知ると「なんだ!そうだったのか!」というものが多いですね。今回は、さまざまな「プロトコル」によって社会は成り立ち、秩序が保たれていることが理解できたのではないでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『世界大百科事典』(平凡社)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『そうだったのか! スゴ訳 あたらしいカタカナ語辞典』(高橋書店)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫) :