大人のための「新・ランジェリー学」

最近、どんなランジェリーを身につけていますか? 今の気分をとらえつつ、機能や繊細なディテールを兼ね備えた「自分のための」ランジェリーが、プレシャス世代には必要です。

エフォートレスやジェンダーレス、ファッションの世界とのボーダレス化、セルフラブ……など、時代を取り巻くさまざまな潮流から、幅も奥行きもオープンに広がり続けるランジェリーの世界。最旬のランジェリーから新しい女性らしさやセクシーさについて考察しつつ、高揚感を誘うような、気分の上がる注目アイテムをラインナップしました。

インティメイトでいて、ソーシャルなもの 

文/鈴木保奈美さん
女優
(すずき・ほなみ)東京生まれ。7月スタートのドラマ『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)に出演。初の著書『獅子座、A型、丙午。』(中央公論新社)、声で出演するDVD『365日の献立日記』(NHK制作)が好評発売中。趣味の日本舞踊や茶道、乗馬を通じて、心と体に向き合う。
ランジェリー_1
アントワープ王立アカデミー卒業、プレタポルテ出身のデザイナー、カリーヌ・ジルソンのシルクスリップは、体を立体的に包み込む精緻なシルエットと華奢なレースによる控えめな華やかさが魅力。スリップ¥132,000(リュー・ドゥ・リュー〈CARINE GILSON〉)

「日本の女のひとは、ボディの前面は素晴らしくきれいにしているのに、どうして後ろ側を気にしないのかしら?ヒップにショーツのラインが出ているのって、すっぴんより何倍も恥ずかしいことよ。わたしだったら外を歩けない」 

チュニジア系パリジェンヌの知人にそう言われるまで、わたしは自分の「後ろ側」なんてまったく気にしたことはなかった。鏡を覗き込んでチェックするのは、前髪、眉や睫毛、シャツのボタンの開け具合、「正面から見た」ボトムスのライン…。言われてみれば確かに、こんな角度でしげしげと自分を見つめるのは、自分しかいない。同じ視点を、自分以外の誰にも強いることはできない。わたしが見ている「わたし」は限定されたほんの一面で、残りのぐるりと330度くらいは無防備に他者の眼に晒されている。ということに、衝撃を受けた。ええ、さまざまな角度から撮られることを生業としている、わたしでさえ。 

その会話以来、ランジェリーの選び方が変わった。より意識的になったと言おうか。ランジェリーは、もちろんとてもとても個人的なもの。肌触りが良くて、好きな色やデザインで、鏡の前で「うん、よし」と思えるもの(あるいは、「まあ、良しとしようか」と)。と同時に、とても社会的なものであると考えるようになった。あなたの身体を過不足なく支え、着ている服が美しく見えるように整え、一歩玄関を出た時にあなたの後ろ姿に自信を持たせてくれるべきもの。 

わたしにとっては、ランジェリーはユニフォーム的な意味合いも持っている。時間に追われた撮影や舞台の“早替え”の時、女性同士とは言え、衣装担当の方の目の前でバッサバッサと着替える。ランジェリーまでは、他人に見られても気にしない、半ば外着のような位置づけなのだ。だからあまりに繊細に扱うとなんだか恥ずかしい。ちょっぴり無頓着に、けれど肌が喜ぶように良いものを。だけど「良いものを長く」と思い過ぎてもいけない。ランジェリーは消耗品だ。少しでもくたびれてきたり、レースに綻びを見つけたら、潔く処分できる覚悟も必要で、その覚悟が心地よい緊張感を生む。 

先日、同世代の友人が自宅で体調が悪くなり、救急車で病院に運ばれた。幸い大事には至らずあっという間に帰ってきた彼女は、「担当のお医者様がほんとうに格好良くて、わたし、今日どの下着だったかしらって考えちゃったわよ」と元気に笑った。毎日が勝負下着。わたしたちは、この言葉が大好き。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

リュー・ドゥ・リュー

TEL:0422-27-2568

PHOTO :
本多康司
STYLIST :
小倉真希
EDIT :
下村葉月、喜多容子(Precious)
文 :
鈴木保奈美