「ロイヤリティフリー」や「顧客ロイヤリティ」など、さまざまなシーンで目にすることがある「ロイヤリティー」という単語。あなたはきちんと理解していますか? 実は上記のふたつの「ロイヤリティー」は、まったく別のカタカナ語です。では、「ロイヤルティ」も別の単語? 今回は「ロイヤリティ」を間違いなく使えるよう、しっかり整理して解説しましょう。
【目次】
【ふたつの「ロイヤリティ」を正しく理解するための基礎知識】
まず把握しておきたいのが、私たちがビジネスシーンで使っている「ロイヤリティ」には、「L」ではじまる単語と「R」ではじまる単語の2種類あるということです。それぞれ個別に見ていきましょう。
■ロイヤリティ1:[loyalty]忠誠心、誠実さ、信頼、満足
マーケティングや広告の分野で頻繁に使用されるのが、「忠誠心」や「信頼」を意味する「ロイヤリティ」です。
「カスタマー・ロイヤリティ(顧客ロイヤリティ)」とは、「企業に対する顧客の満足度」や「顧客の企業への好意」を意味します。「カスタマー・ロイヤリティが高い商品」ほど消費者に必要とされる商品で、また「ロイヤリティが高い顧客」ほど購買頻度が高く単価も高い傾向にあります。
■ロイヤリティ2:[royalty]特許権や著作権などの使用料
特許権や著作権、商標権などの知的財産に対して支払われる使用料をいいます。制作や経理に携わる人ならこちらの意味のほうがなじみがあるかもしれませんね。
こちらの「ロイヤリティ」は「王の」という形容詞を名詞化したもの。使用料はその権利をもつ者の特権(王がもつ特権と重ねています)として支払われるものなので、このような使い方をするカタカナ語としても広まったのでしょう。
■「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」
このふたつに違いはありません。発音を「リ」「ル」のどちらで表すか、というだけです。ビジネスシーンでどちらが多く使われているかという統計もないでしょう。
【「忠誠心や満足」の場合の「ビジネス例文」と「類似語」】
■1:「顧客ロイヤリティを維持するためには現状維持ではなく、常にわくわくする仕掛けや施策が必要だ」
■2:「カスタマー・ロイヤリティの低さは売り上げの低迷に直結します」
■3:「一度失ったブランド・ロイヤリティを回復するのは容易ではない」
■言い換えに使える類似語
・信頼 ・満足 ・愛着 ・愛用
【「使用料」の場合の「ビジネス例文」と「類似語」】
■1:「ロイヤリティの相場などを、事前にチェックしておくべきだ」
■2:「ロイヤリティが高額すぎて使用を断念せざるを得ません」
■3:「加盟店のフランチャイズ・ロイヤリティについて、見直しが必要な時期かもしれない」
■4:「本件のロイヤリティにつきまして、ご相談させていただきたく存じます」
■言い換えに使える類似語
・使用料 ・利用料
【覚えておきたい「ロイヤリティ関連用語」】
■ロイヤリティ収入
特許権や商標権などの使用によって発生する収入のこと。「印税」は著作権使用料の通称です。
■ロイヤリティ契約
権利の保有者が使用者に対して許諾し、その対価を受け取る契約のことをいいます。著作権、特許権、商標権などいずれも許可申請が必要ですが、熊本県の「くまもん」のように、一定の条件を満たせば使用料が発生しない場合もあります。
■ストア(ショップ/ブランド)ロイヤリティ
店舗やブランドに対して顧客がもつ親密さや信頼性を指します。
■従業員ロイヤリティ
組織に属する従業員などの、愛社精神や忠誠心の大きさを表す言葉。「従業員ロイヤリティ」が高いほど仕事に対して積極的で、運営においてよい影響を与えることが期待できます。「従業員ロイヤリティ」と「顧客ロイヤリティ」の高さは比例するといわれます。
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「ロイヤリティ」には、「忠誠心」や「愛着心」と、「知的財産の使用料」という、ふた通りの意味がありました。英単語としては別のものですが、カタカナ語になると同じ「ロイヤリティ」に。どちらを意味するのかわかりにくいシーンでは、言い換えや補助の説明を加えて、相手に正しく伝わるよう心掛けましょう。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『知っているようで知らない ビジネス用語辞典』(水王舎)/『あの新語もわかる カタカナ語 すぐに役立つ辞典』(河出書房新社)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『ビジネス用語図鑑』(WAVE出版) :