子供の頃、父親の靴を磨いてお小遣いをもらったり、褒められた記憶のある人は多いはず。磨くといっても、黒い靴には黒を、茶色靴には茶色いチューブやケースに入ったクリームかワックスを塗っていただけだった。時は流れ、自分で買った大切な靴を適切なケアで育てるために、必要な道具はひと通り揃えた。そしてある程度磨き方を覚えると、今度はしたたるような輝きで仕上げたくなる。そこで、「鏡面磨き」を広めた達人、「ブリフト アッシュ」の長谷川裕也氏に、その極意を解説してもらった。

靴磨きで大切なのは、つま先とかかとの輝き!

「ブリフト アッシュ」では、つま先とかかとの鏡面磨きに加えて、靴をより美しく立体的に見せる技を手がける。コバに沿ったすぐ上の革の部分も磨き上げ、つま先とかかとの輝きをつなげることで一体感が生まれ、立体的に靴が磨き上げられるのだ。プロの極意がそこに潜む。
「ブリフト アッシュ」では、つま先とかかとの鏡面磨きに加えて、靴をより美しく立体的に見せる技を手がける。コバに沿ったすぐ上の革の部分も磨き上げ、つま先とかかとの輝きをつなげることで一体感が生まれ、立体的に靴が磨き上げられるのだ。プロの極意がそこに潜む。

 まず、注意する点は、靴全体を一様に輝かせないこと。靴をピカピカに磨くと、かえって品が失われる。靴を立体的により美しく見せるには、つま先とかかとを強調して磨くのがポイントである。

「靴の汚れを取り、乳化性のクリームをなじませた後、油性のワックスをつま先とかかとに塗り、光らせます。磨くときは、ワックスをTシャツのようなやわらかいコットンの布に少量つけて、つま先とかかとにのばして、少し水をつけて磨きます」

 磨きの作業は、ひたすら「ワックスを塗る、水を垂らして磨く、再びワックスを少量塗る、水をたらして磨く……」こと。このサイクルを繰り返すことで、つま先とかかとが、まるで鏡のように輝き出すのである。

 鏡のように輝いたつま先とかかとは、ワックスで革の組織を埋めて膜をつくった状態。美しい輝きを放つだけではなく、水を弾き、革を保護する効果もある。

「磨いた靴をはくことは、仕立てたばかりのスーツを着たときの高揚感を、毎回味わうようなものです」

 磨き上げた靴には、新たな力がみなぎる、と長谷川氏は断言する。

■SHOP DATA ブリフト ア ッシュ

2008年、青山骨董通り沿いに店舗をオープンし、一大高級靴磨きブームの先駆者となった長谷川裕也氏。バーをイメージしたカウンターを挟んで、顧客の目の前で靴を磨き上げる。その所作は、実にスピーディである。シューシャイン¥4,000(当日仕上げ)。その他、翌日仕上げや1週間後仕上げもある。
営業時間:12:00~20:00
火曜定休
住所:東京都港区南青山6-3-11 PAN南青山204
TEL:03-3797-0373
http://brift-h.com

この記事の執筆者
TEXT :
矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
BY :
MEN'S Precious春号知るべし! 靴磨きの超絶技巧
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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クレジット :
撮影/戸田嘉昭・唐澤光也(パイルドライバー) 構成・文/矢部克已(UFFIZI MEDIA)
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