2017年に「確定拠出年金法」が改正されたこともあり、今、「確定拠出年金」や「個人型確定拠出年金(iDeCo)」が注目を集めています。しかし、これらには60歳にならないと受け取れないことなどのデメリットがあるようです。

そこで今回は、それらのデメリットをカバーする「新型確定給付年金」を用いて年金形成する方法について、富裕層の資産防衛を行う金融の専門家である株式会社アレース・ファミリーオフィスの江幡吉昭さんに、「新型確定給付年金」による年金形成の方法を教わります。

「新型確定給付年金」による年金形成の方法

■確定拠出年金の2つのデメリット

老後資金の形成というと、確定拠出年金をよく耳にします。まずは確定拠出年金の意味を確認しておきましょう。

確定拠出年金とは

あらかじめ決定された掛金(拠出額)を自分で運用・管理することで、将来受け取る年金や一時金などの給付額が、個人ごとの運用実績に応じて変動する年金制度。企業型と個人型のiDeCoがある。

江幡さんは、この確定拠出年金にはふたつの大きなデメリットがあると言います。

1:60歳にならないと受け取れない

「私自身もそうでしたが、『30代のときに60歳のこと』など考えられません。従来のいわゆる選択型の確定拠出などの制度を使って年金の掛け金を増やせば、社会保険料が節約できたり、節税になったりと自分にとって得なのはわかります。しかし60歳にならないと受け取れないなら、確定拠出年金はやらないという選択になっている方も多いと思います」

2:毎月の掛け金の上限が低く、節税効果が少ない

「確定拠出年金は、個人型(iDeCo)では自営業者なら6万8千円が上限、会社員なら1万2千円~2万3千円、企業型では5万5千円が上限です。月額、数万円程度の掛け金の拠出ですので、節約できる社会保険料や税金も大きくはありません」

■2大デメリットを改善した「新型確定給付年金」とは?

江幡さんによると、この確定拠出年金の2大デメリットを改善した「新型確定給付年金」というものがあるのだそうです。

「新型確定給付年金」とは?

確定給付年金とは

将来受け取る給付額が先に決定されており、その給付額に応じて必要となる掛金を、予定利率や平均余命などを用いた年金数理計算によって算出され、その年金資産を一括して企業が運用・管理を行うもの。

「今回ご紹介する新型確定給付年金というものは、従来型の確定給付年金をベースにしていますが、予定利率を実質0%にし、運用実績をもとに元利合計が給付される仕組みを採用したものです。確定拠出年金にはないメリットがある一方、勤務している会社がこのような年金基金に加入していない場合、個人的に加入することはできません。これを踏まえてお話いたします」

自社で新型確定給付年金に加入している方、今後、加入企業への転職を考えている方などは、ぜひその仕組みやメリットを知っておきましょう。

新型確定給付年金の仕組み

「新型確定給付年金は、確定拠出年金のいわゆる『選択型』の仕組みを利用し、税金や社会保険料の負担を軽減しながら、自助努力の年金積立ができるものです。

例えば毎月2万円を新型の確定給付年金に積み立てたとすると、年間で24万円に対する税金と、約15%の社会保険料の負担が軽減されます。新型の確定給付年金に積み立てる額が大きければ大きいほど、大きな効果が出るのは分かると思います」

■新型確定給付年金のメリット

新型確定給付年金のメリット

江幡さんによると、新型確定給付年金には、次のようなメリットがあるのだそうです。

1:確定給付年金の会社側のリスクを改善

「確定給付年金では、会社が運用のリスクを負うことがあります。過去の確定給付年金は予定利率が3%台と非常に高く、基金にとって運用利回りを達成することが非常に難しいものでした。そのため、実際の運用が1%だった場合、2%の逆ザヤ(*1)が発生します。これを会社が負担しなければなりませんでした。

しかし新型確定給付年金は、予定利率が実質0%なので、実際、含み損(*2)を企業が抱えたとしても、損は年金の支払い時にならないと発生しませんので、従来の年金のデメリットは克服できた新制度なのかなと考えています」

*1 逆ザヤ:売り値が買い値より安いというように、値段の開きが本来あるべき状態と反対になること。(三省堂 大辞林より)
*2 含み損:所有している資産の類の値下がりにより生じる、帳簿に計上されていない損失。(三省堂 大辞林より)

2:掛金に上限がないことで「節税」効果が生まれる

「仮に1,800万円の年収の方がいるとします。そしてこの方が、来年360万円の給与増になるとすると、所得税・住民税が156万8千円増加します。すると、手取りはたったの203万2千円の増加になります。一方、360万円の増加給与を全額、新型確定給付年金に拠出したとすると、税額はゼロ。5年後退職時に、退職金として受け取れば『360万円×5年』で1,800万円になります。退職所得控除がありますが、実際は800万円の所得にしか課税されませんので、かなり大きな節税効果が生まれると思います」

3:退職時、休職時、産休時に受け取れる

「退職時、休職時、産休時にお金が受け取れるというのは、新型確定給付年金の基本的なメリットのひとつです。しかし、休職時、育休時に受け取れるというのは『結果として受け取れる』という言い方のほうが正しいのかもしれません。なぜなら、新型確定給付年金の『選択型』の場合は、休職時や育休時には掛金を中断せざるを得ないからです。よって会社は今まで積み立てた分を従業員に払い出すことになります。そのため『結果として』休職時や育休時に今まで拠出したお金が受け取れるということです。ちなみにこの時の所得は一時所得になり、2分の1が課税対象となります。多くの方は節税になるのではないでしょうか」

個人としては、節税効果が得られたり、老後ではなく退職時や休職時にお金が受け取れたりというメリットがあることが分かりました。しかし新型確定給付年金にも会社側の運用損が出るなどのデメリットはあると江幡さんは指摘します。とはいえ、「リスクは過去20年位前に存在した確定給付年金に比べれば低いものと考えます」とのこと。

気になる方は、一度、勤めている会社が新型確定給付年金に加入しているか確認してみましょう。

 
江幡吉昭さん
アレース・ファミリーオフィス代表取締役、アレースグループ代表
(えばた よしあき)1999年大学卒業後、住友生命保険を経て、英スタンダードチャータード銀行に入行。最年少シニアマネージャーとして活躍後、2009年、資産家の税務・法務・財務・資産運用の問題解決を図る専門家集団を束ねる株式会社アレース・ファミリーオフィスを設立。主に相続・事業承継等の問題を顧客側の視点で解決する。また相続の現場を通して「争族」を多数経験したことで、相続争いを回避するため一般社団法人 相続終活専門士協会を設立。一般社団法人 相続終活専門士協会代表理事。著書に『広い土地を引き継ぐ人のための得する相続』(アスコム刊)
http://sokatsu.jp/
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利