「自分に嘘をつきたくない。芸術としての表現を大切に」竹内涼真さん
29歳。内に秘めた表現者としての欲望が、さらなる高みへと導き続ける
静なる熱を帯びた眼差し。カメラ前に立つときも、スタッフと何気ない会話を交わしながらあくまで自然体な竹内さんは、1カットずつ表情も動きもしなやかに工夫してみせる。問いを投げかければ、まっすぐに相手の目を見つめ、自らの心の奥を探るように真摯に言葉を選ぶ姿が印象的だ。
現在公開中の映画『アキラとあきら』では、過酷な運命に翻弄されながらも人を救うバンカーを熱演している。若き頃から信念をもって奮闘する姿は、竹内さん本人と重なるが「僕自身の20代前半は、16年続けたサッカーの道を諦めて人生をもう一度スタートした時期。欠けている部分を必死に取り戻しにいこうと焦ってばかりでしたね」と微笑む。
21歳でデビューし、翌年には念願だったヒーロー役を射止めた。映画にドラマに引く手数多となり、話題作品の人気を牽引する俳優に。端から見れば、順調なキャリア。しかし、人知れずもがいていた。
「右も左もわからず飛び込んでしまったので、勉強不足は否めなくて。ネットニュースやSNSが気になって、エゴサーチしては揺らいでしまうことも。でもあるとき、そんな状態で現場に行くのは一緒に作品をつくり上げているスタッフ・キャストのみなさんに対して無責任だなと気づいたんです。不特定多数の意見ばかり取りこんでいたら、過半数の評価と承認を得ようとするようなお芝居になってしまう。自分に嘘をつくことになるし、”芸術としての表現“とは言えない。それは果たして自分がやりたいことなのか…と。俳優は技術職。感覚や勢いだけでは補えない部分が多々あると感じます。ハリウッドの演劇論にも刺激を受け、26歳頃からあらためて勉強し直しているところです」
正しくあるよりどんな選択をするかに、人は惹かれる
7月から放映中の連続ドラマ『六本木クラス』など、背景は違えど正義感の強い主役が続いているが、竹内さんが演じると、押しつけがましさとは無縁。視聴者の目線にそっと寄り添ってくれる。
「彼らは決して正義のために動いているわけではなく、むしろ自分の欲求に貪欲。ときには理想の実現のために人に優しくしているのではと感じることも。自分勝手じゃないと理想は貫けない。そう考えると、僕らが“ヒーロー”に惹かれるのは正しいからではなく、理想のために果敢な選択をし続けているからなのかも」。
自分の視野は想像以上に狭い。間口を広くして、「聞く」
一方で、現場の座長を担う主演としては、「聞くこと」に比重を置いているという。
「とにかく相手の意見を聞く、質問して深掘りする。お互いの意見が異なる場合はセッションする。僕は自分が引っ張るより、いろいろな方に引っ張られたくて。もちろん自分からも積極的に発信していきたいと思いますが、面白い出会いや発見は今後もどんどん出てくるだろうから、より柔軟な方に寄り添っていきたいです。自分の感覚や視野って思っている以上に狭い。曲げられない部分は残しつつ、柔軟に受け入れていくことがリーダーとしての資質なんじゃないかなと思っています」
現在、29歳。30代への向き合い方は――。
「もっと自由も余裕も生まれて、さらに仕事も好きになるはず。だからこそ、表現にはこだわっていきたい。時に人と衝突することがあっても、意見をもらえなくなると停滞してしまうから、やっぱり間口は広くありたいですね。社会の潮流や制約に苦慮する時代ですが、現場のみんなといい作品をつくりながら自分なりに表現していきたいです」
Precious.jpでは、さらに本誌未公開カット&未公開インタビュー内容を使った、WEBオリジナル記事も公開(9月10日予定)! 引き続きチェックお願いします。
『アキラとあきら』大ヒット公開中!
「半沢直樹」「陸王」など数々のベストセラーを生み出してきた日本を代表する作家・池井戸潤。その映像化作品はどれも大ヒットを記録し、いまや「池井戸ワールド」の勢いはとどまることを知らない。そして、今回、傑作小説として名高い「アキラとあきら」が満を持して映画化!対照的な宿命を背負った二人の若者、〈アキラ〉と〈あきら〉が、【情熱】と【信念】を武器に【現実】に立ち向かう、全世代感動の大逆転エンターテインメント‼
【あらすじ】父親の経営する町工場が倒産し、幼くして過酷な運命に翻弄されてきた山崎瑛〈アキラ〉。大企業の御曹司ながら次期社長の椅子を拒絶し、血縁のしがらみに抗い続ける階堂彬〈あきら〉。運命に導かれるかのごとく、日本有数のメガバンクに同期入社した二人は、お互いの信念の違いから反目し合いながらも、ライバルとしてしのぎを削っていたが、それぞれの前に〈現実〉という壁が立ちはだかる。〈アキラ〉は自分の信念を貫いた結果、左遷され、〈あきら〉も目を背け続けていた階堂家の親族同士の骨肉の争いに巻き込まれていく。
そして持ち上がった階堂グループの倒産の危機を前に、〈アキラ〉と〈あきら〉の運命は再び交差する ‒‒
【原作】池井戸潤『アキラとあきら』(集英社文庫刊)/
【監督】三木孝浩 /【脚本】池田奈津子 /【音楽】大間々昂 /
【出演】竹内涼真 横浜流星
高橋海人(King & Prince) 上白石萌歌 児嶋一哉
奥田瑛二 石丸幹二 ユースケ・サンタマリア
江口洋介 ほか
※高橋海人さんの「高」は「はしごだか」が正式表記。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
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- 竹内裕二
- STYLIST :
- 徳永貴士
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- 吉村 健
- WRITING :
- 佐藤久美子
- EDIT :
- 安村 徹・福本絵里香