『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。前回の「プチリメイク」に続き、今回のテーマは「切るリメイク」。着丈や袖丈、あるいはボリュームを大胆に“切る”ことで調整し、今の自分にもっと似合うアイテムへと変身させるアイデアを伝授していただきます!
素材によってはハサミで切るだけ!短くすることで生まれ変わるリメイク術
トレンドや好みは常に少しずつ変わっていくもの。買ったときには「これがベスト!」と思っていても、翌年あるいは数年着ているうちに飽きてしまったり、コーディネートのバランスが悪いなと感じるようになったという経験はだれでも少なからずあるのではないでしょうか?
その結果、クローゼットの奥に眠ってしまったアイテムを断捨離する前に試してほしいのが、犬走さん流の「切るリメイク」。つまりは着丈や袖丈の長さを変えたり、見えない部分をカットするという方法です。素材によっては、裁ちバサミでザクザク切るだけでもOKだそう!
今回は、そんなリメイクアイテムの実例として、ロングシャツとムートンコートをご紹介します。
■1:羽織るだけになりがちなロングシャツをイブニングコート風にアレンジ!
シルエットの美しさで支持されるイタリアブランド「タリアトーレ」のメンズジャケットに合わせた白いシャツ。前後差の大きいデザインが印象的ですが、もともとはプレーンなロングシャツだったそう。
「2年ほど前に購入した『トーマス メイソン』のものです。ここ数年ロングシャツがトレンドだったので、こういったアイテムをお持ちの方は多いのではないでしょうか? 私の場合、少し着丈が長すぎるなと感じて、あまり出番がなく…。それにロングシャツって羽織る以外のコーディネートが難しいアイテムでもありますよね。特に前が長いともたつきがち。それも気になっていました」(犬走さん)
英国の老舗シャツファブリックメーカーとして広く知られる「トーマス メイソン」のアイテムだけに、生地は上質で仕立ても美しい。それを眠らせているのはもったいないと考えた犬走さんは、そんなデメリットを解決すべく「前身頃を短くしてイブニングコート(燕尾服)風のスタイルに変える」というリメイクをすることに。
「自分で切って縫製することも考えましたが、こちらはお直し屋さんにお願いしました。前だけウエストインにしても、そのまま出して着てもいいくらいの少し短め丈にしたので、コーディネートしやすさもアップ。後ろ身頃の裾が軽やかに翻るようになったのも気に入っています」(犬走さん)
■2:既に2度直し済み!ムートンコートはハサミひとつでリメイクが完了
犬走さんが長年愛用しているムートンコートは、ロングコートから2度のリメイクを経て現在の膝上丈に!
「購入したときには、ふくらはぎくらいまでしっかり長さのあるロングコートでした。でも、気に入ってるだけに何度も着るうちに飽きてしまったんですよね。だから、それなら短くしてしまおうと(笑) ムートンはほつれないので、切りっぱなしで大丈夫。何センチ切るのか決めたら、裾から定規で測って鉛筆で印をつけて、あとは裁ちバサミでざくざくと切っていくだけです」(犬走さん)
いたって簡単なことと朗らかに笑う犬走さんは、今後このムートンコートをさらにリメイクする予定とのこと。
「着丈はポケットの下までは攻められるので、もう少し短くしていいかなと思っています。袖も、今は袖口を折り返して着ていますが、手首が見えるくらいまで切るとまた違った着こなしができそう。楽しみですね」(犬走さん)
このほか、ハサミを使って簡単にできるリメイクとして教えてくれたのが、チュールのレイヤードスカートのボリューム調整。何枚も重なっていてふんわりしすぎていると感じたなら、下から1~2枚をウエスト下から切ってしまえばボリュームダウンできるという、これまた大胆な解決策! そしてもうひとつは防寒肌着の襟問題。これは冬場のモデル撮影でもよく使っているテクニックだそうで…。
「寒くなるこれからの季節、服の首元から肌着がチラ見えするのは絶対に避けたいですよね。ネックラインが広く開いている服に合わせる場合は、肌着の襟元をざっくり切って広げます。また、Vネックに合わせる場合は、肌着の前を縦に切って内側に折り込むだけでOKです」(犬走さん)
これなら多少不器用でも、普通のハサミしかなくても失敗なくできそうですし、手持ちのアイテムで今すぐチャレンジできる初心者向けのアイデア。ぜひみなさんもお試しあれ!
人気スタイリストの犬走比佐乃さんから、大人の女性に必要なファッションについて指南いただく連載。第41回は、切って再生させるリメイク術をご紹介しました。
ファッションを愛しているからこそ、長く使い続けるためにはどうしたらいいのかを考え、楽しみながら実践している犬走さんの実例を、ぜひ参考にしてください。
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- PHOTO :
- 黒石あみ(小学館)
- EDIT&WRITING :
- 谷 花生