雪が積もると、都市の交通網はたちまち破綻する。とくにクルマは生死に関わることもあるので、しっかりと備えておきたい。一番重視すべきは、タイヤだ。最近は性能がよく、長寿命設計のスタッドレスタイヤが増えたので、こまめに買い換える必要がなく、便利だ(ただし溝が残っていてもゴムが硬くなるので見極めは重要)。二番目に重要なのが、己を知ることである。スタッドレスタイヤをはいていても、急ブレーキや急ハンドルで、クルマはいとも簡単に挙動を乱す。そうなったとき、自分が反射的に対応できるかを理解しておかないと、なすすべはない。三番目は、4WD(AWD)車を選ぶこと。2WD車と比べて、雪道での安定性は抜群だ。ラリーで鍛えたアウディの「クワトロ」モデルなら、高度な制御システムのアシストもあり、安心して走ることができる。

ラリー車の概念を変えた乗用フルタイム4WDシステム

初代「クワトロ」(1980年)
初代「クワトロ」(1980年)
「クワトロ」はWRCで抜群の速さを発揮し、ラリー車の概念を一変させた。
「クワトロ」はWRCで抜群の速さを発揮し、ラリー車の概念を一変させた。

 1980年にアウディが発売した「クワトロ」(当時はモデル名)は、常時すべてのタイヤに適切にトルクを配分するフルタイム4WDシステムを装備し、翌年からはWRC(世界ラリー選手権)にも導入され、圧倒的な速さを見せつけた。「クワトロ」システムはやがてアウディの代名詞となり、現在ではほとんどのモデルで選ぶことができる。

 そのシステムはエンジン配置の違いによって種類が分かれるものの、走行状況に応じて瞬時に適切な駆動力を分配することで、挙動の乱れを防ぐ。さらに姿勢制御装置などとの連携で、オーバーステア(クルマの向きが内側になっていく現象)やアンダーステア(クルマの向きが外側にはらんでいく現象)になっても、前へまっすぐ走るように緻密な制御でアシストしてくれる。

 今回、凍結した部分の多いクローズドの特設コースで様々なモデルを試乗したが、安全装備など皆無だった大昔であれば間違いなく雪の壁に突き刺さったりスピンしてしまう状況でも、クワトロシステムの自然な介入で不安なく走ることができた。もちろん、そのためには十分な性能を発揮するスタッドレスタイヤを装着していることが大前提だが。

凍結したクローズドコースでクワトロ体験!

2018年1月下旬、氷の張った特設コースでプレス向けの試乗イベントが開催され、メンズプレシャス編集部も参加。約1kmのコースでは挙動の乱れに対するクワトロシステムの優位性を大いに実感できた。
2018年1月下旬、氷の張った特設コースでプレス向けの試乗イベントが開催され、メンズプレシャス編集部も参加。約1kmのコースでは挙動の乱れに対するクワトロシステムの優位性を大いに実感できた。
ミラーバーン状態でのブレーキング体験。ABSを作動させながら4輪に駆動力を適切に分配することで、姿勢を乱すことなく停止できた。
ミラーバーン状態でのブレーキング体験。ABSを作動させながら4輪に駆動力を適切に分配することで、姿勢を乱すことなく停止できた。
こちらは円形のコースでの走行体験。後輪を滑らせながら向きを円の中心に向けて回る。慎重なアクセル操作と素早いハンドル操作が求められるが、うまくコントロールできると、いわゆるドリフト状態で旋回できる。
こちらは円形のコースでの走行体験。後輪を滑らせながら向きを円の中心に向けて回る。慎重なアクセル操作と素早いハンドル操作が求められるが、うまくコントロールできると、いわゆるドリフト状態で旋回できる。

 現在、アウディではインストラクターの指導の下でクルマの挙動変化に対する対処方法を学び、実践するプログラム「アウディ・ドライビング・エクスペリエンス」を開催している(2018年のスケジュールは今後発表予定)。一部のプログラムを除けばアウディオーナーでなくても参加でき、スキルアップを目指すうえで効果は絶大だ。

 頭ではわかっていても、急な挙動の乱れに、人はなかなか対処できないもの。こればかりは実際に体験して、体に染み込ませるしかない。そのうえでしっかりとしたクルマを選べば、危険回避の可能性は格段に向上する。熟成を極めたクワトロシステムを持つアウディなら、雪に不慣れな都市生活者を優しくフォローしてくれるだろう。

■問い合わせ先
アウディ・ドライビング・エクスペリエンス(2018年のスケジュールは準備中)
https://www.audi.jp/ADE/

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。