雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は、建築士、LEED認定プロフェッショナル コリー・ローゥイラードさんの活動をご紹介します。
歴史あるビルの保存・修復がカギ。大都市のSDGsを建築から考える
コリーさんが勤務するヘンソン建築事務所は、歴史的な建物の保存とサステイナブルデザインの両方に焦点を当てたプロジェクトで数々の賞を受賞している。現在手掛けているのは19世紀初頭に建てられたタウンハウス。既存の素材や形状をなるべく変えることなく、かつ、今後も長期にわたって居住者が快適に使用し続けられるように修復していく。
「実は、世界の炭素排出量(※)の約40%は、ビルから排出されています。『オペレーショナルカーボン』と呼ばれる建物の冷暖房や照明といった操作に関連して排出される炭素と、物資を運んで建物を建て、それを修理したり、最終的に取り壊すことで排出される炭素の2種類があり、N.Y.のような都市では全炭素の70%がビルからの排出だといわれています。既存の建物をできるだけ長く使い続けることは、炭素排出量を抑えることにもつながります」
大学卒業後、20年間、一貫して建築の世界に身をおいてきた。新しいデザインを追求する道ではなく、古い建物に関わる仕事を選んだのには、建築家を目指すきっかけになった、ある光景がある。
「私は小学生でした。N.Y.の郊外で、都市開発のために広大な山の木を無計画に切り倒していたのです。子供心に違和感がありました。大学在学中、インターンとして歴史的建造物の保存に携わったことも今の仕事に通じています」
同僚と共に、社外に向け気候変動問題を啓蒙する活動も推進。専門委員会議長として、講演やシンポジウム、ワークショップなども行う。SDGsに関して建築家がリーダーシップを発揮する機会が増えていることに、コリーさんは大きな手応えを感じている。
【SDGsの現場から】
●素材や建築方法など建物の歴史を研究することも重要
●建築業界内でも交流を重ねて意識を高める
※ビルの炭素排出量とは…N.Y.では各ビルでエネルギー効率が「A」から「D」までグレード分けされて貼り出されるなど、市を挙げての取り組みが進んでいる。
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- PHOTO :
- Hiroshi Abe
- EDIT&WRITING :
- 正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
- 取材 :
- Junko Takaku
- 文 :
- 剣持亜弥(HATSU)