雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「オングリットホールディングス」代表取締役CEO 森川春菜さんの活動をご紹介します。

森川春菜さん
「オングリットホールディングス」代表取締役CEO
(もりかわ はるな)大阪府生まれ。23歳で結婚、医薬品卸の会社を退社して専業主婦に。ゼネコンで働く夫の転勤に伴い’16年から福岡在住。’18年3月オングリット株式会社設立、’21年3月オングリットホールディングス株式会社に。

AIの活用で土木業界の人手不足を解消同時にシングルマザーへの就労支援も

高度経済成長期に整備された橋梁やトンネルなどの公共インフラの老朽化が全国的に深刻な問題になっているなか、AIやロボットを活用して点検調査をするシステムを開発し起業。さらにシングルマザー(※)や障がい者など就労が難しい人たちの雇用も進めているのが、森川さんの会社だ。

「専業主婦時代、シングルマザーの友人から『働けるところがない』と相談を受けました。一方、夫が働くゼネコン業界では人手不足で長時間労働問題があった。ならば双方をマッチングすればいいのでは、というのが始まりです」

専門の点検士が現場で構造物の損傷をチェック、それを手描きでスケッチした図面に転写し、オフィスでCAD図面に起こすという一般的な流れのうち、CAD図面化の部分をAIで処理する独自のツール「マルッと図面化(R)」を3年かけてコツコツ開発。’18年、31歳のとき、現場で点検業務を行っていた20代の男女と3人で起業した。AIが認識しない損傷部は人の手で編集する必要があり、この作業を未経験の女性や障がいのある人に担ってもらうことに。その後、道路照明に特化した点検ロボットを日本で初めて開発するなど事業は拡大。資金調達も行い、100万円でスタートした資本金は2億円になった。

「テクノロジーを活用し世界中の人へ働く機会と豊かさを提供する。それが私たちのミッションです。母子家庭率の高い沖縄を皮切りに、広島、大阪と支店を増やし、今後も年に3〜5拠点のペースで全国へと広げていく計画です。海外からも引き合いが来ています。アウトソーシングも活用しながら、地域ごとの土木と就労に関する課題を解決していければ」

【SDGsの現場から】

●インフラ点検に必要な作業負担を大幅に軽減

インタビュー_1,サステナブル_1
AIを活用したツールを開発。それまで手作業でやっていた図面作成やCADデータ化が簡単に。

●ビジネスコンテストが飛躍のきっかけに

インタビュー_2
「日本アントレプレナー大賞」をはじめ、数々のビジネスコンテストで受賞。人脈も広がった。

※シングルマザーとは…厚生労働省が実施した「母子ひとり親世帯等調査(平成28年度)」によると、母子世帯の平均就労年収は約200万円。非正規雇用も多い。

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PHOTO :
石川浩太郎
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
取材 :
佐々木恵美