【目次】
【「小職」とは?「読み方」と「意味」「語源」】
「ご不明な点がございましたら、小職までお問い合わせください」。こんなメールや案内状を見たことはありませんか? ビジネスレターには「なんとなくわかるけれど…」というワードが潜んでいるもの。今回は、この「小職」という言葉について解説します。まずは正しい読み方や意味をしっかり理解しましょう。
■読み方
「小職」と書いて「しょうしょく」と読みます。アクセントに高低はつけず、食が細い、食べる量が少ない人を意味する「小食(しょうしょく)」と同じ発音、イントネーションです。
■意味
小職とは、低い官職のこと。また、官職についている人が自分のことをへりくだって言う語です。「官職」とは国家公務員に割り当てられる職務上の地位のことですが、現在は一般企業でも役職についている人が自分を「小職は~」と言う場合があるので、ビジネスレターなどで見かけることも少なくありません。
また、「小職」は「こじょく」と読む場合もありますが、こちらは「見習いの弟子」や「娼家で雑用をする女児、禿(かむろ)」など、別の意味になります。こういった意味もあるので、字ずらで見た際に「どういう意味…?」となってしまいがちな言葉といえます。
■語源
「小」という漢字は「小さい」「細かい」などのほかに、「重要さの程度が少ないこと」という意味があります。「小職」の場合は、「部長なんて、そんな大したものではありませんが…」というニュアンスの謙遜した表現になるわけです。とはいえ、下の身分からすると、「謙遜されても…」ですすよね(笑)。
【「うざい」「偉そう」「失礼」と言われる理由】
「小職」は、役職にある人が、自分と同等または下の立場にある人に対して、自分のことをへりくだって用いる語。簡単に言うと、「上位が下位に対してへりくだっていう語」です。そもそも役職についていない一般の社員が使う言葉ではありませんが、どの程度の役職の人なら使えるという決まりはないので、状況に応じて「あえて自分を小さく見せる」必要がある際に使うのが正解です。
そして、上記でも触れた通り、公的な職務に就いている人が謙遜の意味を込めて使用する表現なので、「小職」を使用する人に対して権威主義的な印象を感じ、「偉そう」「うざい」などの違和感をもつ人もいるようです。つまり、「小職」は、謙遜の意味をもつ言葉であるにもかかわらず、実際には自分の地位や立場を強調しているように受け取られてしまうという矛盾が生じてしまうのです。「『私』と言えばいいところを、わざわざ肩書きをもちだして言うなんて、どれだけその肩書にこだわってるの?」と思ってしまうと言うわけです。
また、「小職」に時代錯誤的な印象をもつ人も。そのため、「小職」を使用する人に対して「古い人」「扱いにくい人」と思わせてしまうリスクもあるようです。
【どう使われる?「例文」】
■「このたびの案件に関しまして資料をご送付いたします。ご不明な点などございましたら、担当者、もしくは小職までお気軽にお問い合せください」
■2:「長い間お世話になりました。小職の後任は〇〇が務めますので、近日中にふたりでご挨拶に伺わせていただきたく存じます」
■3:「ご連絡は小職まで頂戴できましたら幸いです」
■4:「本日の小職の予定は下記の通りです。昨日の報告を受けたく、連絡お待ちしています」
■5:「今週一杯、出張で不在です。承認が必要な書類は小職の代わりに〇〇課長が対応します」
【「類語」「言い換え」表現】
「小職」という言葉の意味や使うシーンなどがわかったところで、似た言葉や同じ意味で使える言い方などを紹介しましょう。
■小生(しょうせい)
男性が自分のことをへりくだっていう言い方。女性は使用しません。
■当職(とうしょく)
「当職」には「この職業・職務」、「現在就いている職業」という意味があります。また、弁護士が自分のことを言う言葉としても使われます。
■弊職(へいしょく)
自分が勤める会社のことを謙遜して「弊社」と表現することは多いと思います。この「弊職」も同様の意味なのですが、「弊社」と「小職」からきた造語といわれているので、ビジネスレターなどでは使用を避ける傾向にあります。
■当方(とうほう)
「小職」は自分のことを言う言葉ですが、「当方」は自分が属している会社や部署全体のことを指す際に使う言葉なのでご注意を。あなたは「自分」として使ったつもりでも、相手は「会社全体」として受け取ることもあります。
■私(わたし/わたくし)
「小職」の代わりは「私」がもっとも汎用性が高く安全といえそうです。「私」であれば男女問わず、また上下関係にかかわらずに使えます。
【「使い方」の注意点【まとめ】】
以上のように、「小職」は使える人や使い方が限定された言葉です。注意点をまとめますので、使える立場の人だけでなく、そうでない人もしっかり確認しておいてくださいね。
・役職付きの人が自分を謙遜して言う一人称(役職付きでない人は使わない)
・自分と同等、あるいは下の立場の人に向けて使う(目上の人には使わない)
・役職のついていない一般社員の人は「私」を用いる
・話し言葉ではなく文章で用いる
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今回の「小職」は、会話では使わないので同じ読み・イントネーションの「小食」と間違えることはないと思いますが、書き言葉としてもわかりにくい語です。ビジネスメールでの一人称は、どんな立場の人でもシンプルに「私」でよいのかもしれません。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA) :