鮮やかに甦る! 英国女王のハイジュエリー|ロイヤルファミリーに伝わる歴史的ジュエリーがモダンに意匠化され、現代へ
世界随一といわれる英国王室の宝飾コレクション。そのなかに、英国女王エリザベス2世が特別な思いを寄せ、
人生の大切な場面で身につけてきたブローチがあります。それを1930年代に制作した「ブシュロン」は、女王に捧げるハイジュエリーコレクションを発表。
今回はその作品と共に、華麗なブローチに秘められた物語をご紹介します。
エリザベス2世が生涯愛したブローチに秘められた物語
1937年、エリザベス2世の叔父にあたるケント公爵は、ロンドンの「ブシュロン」ブティックでアールデコ様式のブローチを購入。それを英国王室のロイヤルコレクションに加えました。公爵はアクアマリンとダイヤモンドの清麗な輝きが、これからの王室にふさわしいと考えたのかもしれません。その前年、英国は「王冠を賭けた恋」で知られるエドワード8世の退位によって混乱を極め、王室の権威は失墜。さらにファシズムの台頭で、欧州は不穏なムードに包まれていました。
そして1939年、ついに第二次世界大戦が勃発。エリザベス2世は戦中に18歳の誕生日を迎えることになります。成人となる18歳の誕生日は、英国では特別なものであるため、両親たる国王夫妻はロイヤルコレクションから記念のジュエリーを贈ることに…。そうして選ばれたのがこのブローチだったのです。
エリザベス2世にとって、それは戦争の記憶を呼び起こすものにほかなりません。ただ、忘れてはならないものでもあります。戦時中、国王夫妻はロンドンを離れず、国民の士気を高め続けました。そんな両親を理想とする女王は、重要な外遊や式典の際に思い出のブローチを着用。在位60周年、戦勝記念日など、その回数はおよそ50回にもおよびます。
「ブシュロン」のクリエイティブディレクターであるクレール・ショワンヌは、この歴史的ブローチに魅せられ、デザインを再解釈することで、新たなハイジュエリーコレクションを生み出しました。エリザベス2世に捧げられたコレクションは18作品で構成され、生前の女王のように鮮やかな色彩をまとっています。
『LIKE A QUEEN』アールデコのモダンデザインが進化を遂げ、カラーストーンの鮮麗な色彩をまとって華やかに
エリザベス2世が愛したアールデコのブローチをインスピレーション源にしたハイジュエリーコレクション『LIKE A QUEEN』。
『ローリング レッド』
幾何学的なデザインが透かしの効果で軽やかに。ピジョンブラッドのルビーが揺れ動き、圧倒的な存在感を放つ。
『メガ ピンク』
オリジナルのブローチに最も近いデザイン。中央で分かれて、ふたつのブローチになる。
『グリーン ガーデン』
アールデコ建築のアーチがモチーフ。ペアシェイプのエメラルドは、左右共に約4カラットもの大きさを誇る。
『フロスティ ホワイト』
白い宝石だけでつくられた「ホワイト・アールデコ」。アールデコ期に登場し、人気を博した。
『ヒプノティック ブルー』
透明感に溢れたアクアマリンが、ブルーラッカーとの対比によってグラフィカルな印象に。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
※文中の表記は、PT=プラチナ、WG=ホワイトゴールドを表します。
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- EDIT&WRITING :
- 福田詞子(英国宝石学協会 FGA)
- 画像提供 :
- BOUCHERON