貧困や少子化など、日本が抱える大きな問題を語る際に最近よく使われているワードのひとつが「ベーシックインカム」です。ざっくり言えば「政府が全国民に保障する最低限の所得」なのですが、現段階では日本はまだ議論が始まったばかり…という状況。今回は「ベーシックインカム」の言葉の意味から正しい理解、問題点についてもサクッとご紹介します。

【目次】

「ベーシックインカム」が実現する日はくる?
「ベーシックインカム」が実現する日はくる?

 

「ベーシックインカム」とは?「意味」など基礎知識】

■意味

「ベーシックインカム」とは[basic income]のカタカナ語で、直訳すると「基礎所得」です。

生活に足る一定額を、政府がすべての国民に無条件で支給する社会保障制度をいいます。貧困対策や少子化対策を兼ねるほか、現行の生活保護制度や雇用保険制度などを「ベーシックインカム」に一本化することで、支給の行政コストを抑制できるとされています。

■想定される具体的な内容

(1)定期的な現金給付:現在想定されている金額は、ひとりあたり月間8~15万円程度の一律額(所得や年齢に関係なく同額)と言われています。これはコロナ禍で支給された給付金のような一時的なものではなく、規則的かつ安定的に支給されます。

(2)個人単位:生活保護制度のような世帯単位ではなく、個人に給付されます。また自己申告の必要はありません。

(3)無条件生活保護制度のような資産調査はなく、働くことができるかどうかなどにも関係なく、「ベーシックインカム」は無条件の給付を想定。日本国民であれば誰でも受けられます。

■いつ始まる?

一見夢のような制度ですが課題も多くあり、これを本格的に実施している国はありません。しかし似たような制度を一時的・実験的に導入した例や、「ベーシックインカム」の現実化が垣間見えた事例はあります。例えば国民が憲法改正を発議できるスイスでは、2016年に国民ひとりあたり月額2500スイスフラン(日本円で約30万円相当)のベーシックインカム支給プランが提出されて話題に(否決により実現せず)。また、2022年3月に実施された韓国の大統領選挙で与党候補が、日本では2021年の衆議院選挙で日本維新の会が「ベーシックインカム」を政権公約に掲げました。


【「ベーシックインカム」導入の「メリット」と「デメリット」】

■メリット

「ベーシックインカム」の最大の特徴は、労働せずに最低限の生活ができること。ブラック企業やパワハラなど、劣悪な職場環境でも生活のために我慢して働き続ける…といったような、労働市場に縛られることがなくなるかもしれません。職業選択の自由が高まり、個人の生活スタイルの選択の幅が広がるでしょう。

■デメリット

労働せずに最低限の生活ができる金額が給付されたら、労働意欲が下がって、働かない人が増えるかもしれません。それによって労働力不足に拍車がかかり、社会が成り立たなくなる可能性も指摘されています。また、ひとり月額8万円だとしても年間予算は100兆円以上。これは日本の国家予算を上回る金額です。財政破綻する可能性がある、ということなのです。居住地域によって生活費が大きく異なるため、「最低限の生活ができる金額」をいくらに設定するのかも大きな問題です。さらに、導入と同時に、既存の失業手当や基礎年金といった社会保障制度が縮小または廃止されるため、弱者に対する福祉水準が低下するという懸念もあります。


【「ベーシックインカム」を理解するための「例文」3選

■:1「コロナ禍での生活を支える手段として、ベーシックインカム導入議論が再燃した」

■:2「ベーシックインカムの起源は18世紀とも16世紀ともいわれているが、少なくとも500年以上実現には至っていないということだ」

■:3「ベーシックインカムが導入されたら、生活のためではなく自己実現のための労働に変わっていくという希望がある」


【「ベーシックインカム」はどう言い換える?】

ベーシックインカムは「BI」と略して表記されることもありますが、言い換えると下記のような日本語が当てはまります。

・基本所得制度 ・基礎所得保障 ・基本所得保障 ・最低生活保障 ・国民配当

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財源確保の難しさもあって今のところ現実的とは言い難い「ベーシックインカム」ですが、今回の学びによって労働対価としての賃金や、将来を見据えたマネープランを考えるきっかけになれば幸いです。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『情報・知識imidas』集英社/『プログレッシブ英和中辞典』小学館/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫) :