世紀を代表する伊達男である英国のエドワード8世は、皇太子時代、夜会服をミッドナイトブルーで仕立てたことで有名だ。その服は夜の光で黒以上に黒く見え、昼の光の中でさえも黒よりもはるかに映えて見えたといわれる。
日本の静寂な夜空に輝く、月光がつくる陰影を表現
カシオ『オシアナス OCW-G1200-1AJF』
ブルーをアイデンティティに掲げるジャパンプレミアムな腕時計『オシアナス』が新作で群青色=ブルーを際立たせるために見せた手法は、エドワード8世とは逆の発想に違いない。文字板をモノトーンに仕上げ、インデックスや時分針、ベゼルサイドに鮮やかなブルーを配することで、陰影の美をつくり出す。それはまるで漆黒の夜に浮かぶ満月のような美しい世界観を表現している。
さらに日本の伝統技法である「紋紗塗」をモチーフにして、文字板を囲むセラミックリングに、特殊なレーザー加工でマットとポリッシュの凹凸を施し、繊細な陰影の美を表現することに成功している。「紋紗塗」は東北の津軽地方に古くから伝わる漆塗りの技法で、殻を炭化させ粉末にして塗膜面に蒔いた漆器が有名だ。黒一色、あるいは黒一色に見えるように色塗りすることを特徴とし、今回の新作に最適な技法といえる。
ブルーの時分針にしても、針のふたつの斜面の仕上げを変えており、針の動きや見る角度によって表情を変え、時の流れを美しく表現するこだわりよう。あるいは立体形状のインデックスも台形の側面にブルーをあしらう。世界最高の技術「ザラツ研摩」を施した美しい平滑面を持つケースと組み合わされ、陰影という静謐な世界を構築する大きなサポート役を果たしている。
精緻な色の表現とともに『オシアナス』の大きな特徴を形成するのは正確無比なムーブメントと高い実用性である。「世界初のGPSハイブリッド電波ソーラー」を搭載したムーブメントはGPS衛星電波と標準電波を受信し、世界中どこにいてもサマータイムまで反映した正しい時刻を常に表示する。メインダイヤルとインダイヤルで2都市の時間を常に表示させることも可能だ。加えて受光効率の高い遮光分散型ソーラーパネルとタフソーラーの搭載により、自然の光で時を刻み続ける革新性をも備えている。
ミッドナイトブルーの夜会服をまとったエドワード8世は、類い稀なアイディアと独特のセンスで紳士のスタイルに数々の革新をもたらした人物だ。進取の気風は現代を生きる紳士にとっても重要な要素といえる。モノトーンとブルーをまとい、美しい陰影を放つ『オシアナス』は、そんな伊達男と同じような気概とスタイルを備えたタイムピースとして、紳士の腕で時を刻んでいくのだ
※価格は税抜です。※2016年冬号掲載時の情報です。
- TEXT :
- 小暮昌弘 エディター
- BY :
- MEN'S Precious2016年冬号 月光に際立つオシアナスの静寂なる美学
- クレジット :
- 撮影/小寺浩之(ノーチラス) スタイリング/石川英治(tablerockstudio)構成・文/小暮昌弘(LOST & FOUND)